
医療機関において、患者さんからのクレームは避けられないものです。
適切な対応は、医療サービスの質を向上させ、患者さんとの信頼関係を築く重要な機会となります。
本記事では、医療事務スタッフが知っておくべきクレーム対応のポイントと具体例を詳しく解説します。
これらの知識を身につけることで、患者さんの満足度を高め、円滑な医療サービスの提供につながるでしょう。
目次
医療事務のクレーム対応のポイント
医療事務のクレーム対応には、いくつかの重要なポイントがあります。
これらのポイントを押さえることで、患者さんの不満を解消し、より良い医療サービスを提供することが可能です。
以下では、効果的なクレーム対応のための10個のポイントを詳しく説明していきます。
傾聴と共感
クレーム対応の第一歩は、患者さんの声に耳を傾けることです。
相手の話を途中で遮ることなく、最後まで聞くことが重要となります。
その際、相手の立場に立ち、共感的な態度で接しましょう。
例えば、「お待たせして申し訳ございません。お困りの点をお聞かせください」と声をかけ、相手の気持ちを受け止めます。
このような対応により、患者さんは自分の意見が尊重されていると感じ、より冷静になることが期待できます。
事実確認
クレームの内容を正確に把握するためには、適切な事実確認が不可欠です。
患者さんの話をしっかりと聞いたうえで、クレームの内容が正当であるかどうかを確認しましょう。
具体的には、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」といった5W1Hの観点から情報を整理します。
整理した情報を明確に提示し、「先ほどの診察で、〇〇先生から説明が不十分だったということでしょうか?」と確認することで、問題の本質を把握することができます。
事実確認を丁寧に行うことで、適切な対応策を見出すことができるのです。
謝罪
適切な謝罪は、クレーム対応において非常に重要な要素です。
患者さんの不満要素に触れたうえで、相手の気持ちに寄り添った謝罪をすることが大切になります。
ただし、漠然とした謝罪ではなく、何に対して謝罪しているのかを明確にすることが必要です。
例えば、「待ち時間が長くなり、ご不便をおかけして申し訳ございませんでした」のように、具体的に謝罪します。
このような誠実な謝罪は、患者さんの怒りを和らげ、問題解決への第一歩となります。
改善策の提案
クレームに対しては、単に謝罪するだけでなく、具体的な改善策を提案することも重要です。
自分で解決できる問題であれば、すぐに対応策を提示しましょう。
例えば、待ち時間に対するクレームであれば「次回のご予約は、比較的空いている時間帯をご案内させていただきます」といった提案が考えられます。
ただし、他のスタッフや部署に影響が及ぶ場合や、自分で判断が難しい場合は、一度持ち帰って確認する旨を伝えましょう。
「責任者に確認のうえ、明日中に改善策をご連絡させていただきます」といった対応が適切です。
迅速かつ的確な改善策の提案は、患者さんからの信頼回復につながります。
正当性の見極め
すべてのクレームに対して同じように対応するのではなく、その正当性を見極めて対応することが重要です。
不当なクレームには、業務妨害やスタッフへの危害のリスクがあるため、毅然とした態度で臨む必要があります。
例えば、「ご要望には添いかねますが、病院の方針としてこのような対応をさせていただいております」などと説明します。
誠実に対応しても患者さんの怒りが収まらない場合は、上司や専門家に相談することも検討しましょう。
正当性の見極めは、スタッフの安全と医療機関の秩序を守るために欠かせません。
個室で対応
クレーム対応は、可能な限り個室で行うことが望ましいです。
待合室などの公共スペースでクレームが発生すると、他の患者さんに不快な思いをさせてしまう可能性があります。
「お手数ですが、こちらの個室でお話をお聞きしてもよろしいでしょうか」などと丁寧に案内しましょう。
個室での対応により、患者さんのプライバシーを守りつつ、落ち着いた環境での話し合いが可能となります。
その場で即座に対応できない場合は、「お時間をいただき、別室で詳しくお伺いします」と伝え、冷静な対応につなげましょう。
複数人で対応
クレーム対応は、可能な限り複数のスタッフで行うことが推奨されます。
これにより、客観的な立場からの意見を取り入れやすくなり、より適切な対応が可能になるのです。
例えば、「〇〇さん、こちらの件について一緒に対応してもらえますか」などと同僚や上司に協力を求めます。
また、一人でクレームを受けた際の対処法として、「少々お待ちください。責任者を呼んでまいります」と伝えるといったルールを事前に決めておくことも大切です。
複数人での対応は、スタッフの精神的負担を軽減し、より冷静な判断を可能にします。
対応の記録を残す
クレーム対応の際は、詳細な記録を残すことが重要です。
事実と感情が入り混じってこじれることがあるため、両者を明確に区別して記録します。
例えば、以下のような具合です。
患者さんの発言 | 「待ち時間が長すぎる」 |
事実 | 受付から診察までの待ち時間は45分 |
これらの記録は、今後の改善策の検討や、同様のクレームが発生した際の参考資料として活用できます。
また、法的問題に発展した場合の証拠としても重要な役割を果たします。
クレーム内容を共有
クレームの内容とその対応方法は、スタッフ全員で共有することが大切です。
朝礼や定期的なミーティングなどで、「先日このようなクレームがありました。今後の対応としては……」などと情報を共有します。
これにより、同様のクレームが発生した際に、迅速かつ適切な対応が可能になります。
また、クレームの傾向を分析することで、サービス改善のヒントが得られるでしょう。
スタッフ間での情報共有は、医療機関全体のサービス品質向上につながる重要な取り組みです。
特別対応しない
クレームに対して特別な対応をすることは、長期的な問題を引き起こす可能性があります。
一人の患者さんだけを特別扱いすると、他の患者さんからの不満を招く恐れがあるためです。
例えば、待ち時間が長いというクレームを受けて診療順を早める対応をとると、他の患者さんからも同様の対応を求められる可能性があります。
この際、「申し訳ございませんが、公平性を保つため、診療順の変更はお断りしております」といった対応が適切です。
一貫した対応を心がけることで、すべての患者さんに公平なサービスを提供することができます。
医療事務のクレーム対応の例
医療事務のクレーム対応には、さまざまなケースがあります。
ここでは、よくあるクレームの具体例と、その対応方法を紹介します。
これらの例を参考に、適切なクレーム対応のスキルを身につけていきましょう。
待ち時間が長いというクレーム
待ち時間に関するクレームは、医療機関でよく見られるものの一つです。
患者さんの貴重な時間を奪ってしまっている状況があるため、丁寧な対応が求められます。
例えば、まず「大変申し訳ございません。本日は混雑しており、全体的に診療までの待ち時間が長くなっております。事前にご説明できず、申し訳ございませんでした」と謝罪します。
そのうえで、「現在の待ち時間は約〇〇分となっております。もしよろしければ、比較的空いている〇曜日の〇時頃のご予約をお取りしますが、いかがでしょうか」と具体的な代替案を提示しましょう。
このように、謝罪とともに解決策を提案することで、患者さんの満足度を高めることができます。
職員の対応に関するクレーム
職員の対応に関するクレームは、医療サービスの質に直結する重要な問題です。
例えば、「職員が忙しそうで声をかけにくかった」といったクレームに対しては、まず謝罪から始めます。
「ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。スタッフの接遇について、至急改善いたします」と伝えましょう。
そのうえで、「よろしければ、別のスタッフからご説明させていただきますが、いかがでしょうか」と提案します。
また、「今後このようなことがないよう、全スタッフに接遇研修を実施いたします」と具体的な改善策を示すことも効果的です。
職員の対応改善は、医療機関全体のサービス向上につながる重要な課題です。
会計金額に関するクレーム
会計金額に関するクレームは、特に慎重な対応が必要です。
例えば、「前回と同じ診察なのに、今回の支払金額が違う」といったクレームに対しては、まず患者さんの言い分をしっかりと聞きます。
「ご指摘ありがとうございます。たしかに前回と金額が異なっているようですね。大変申し訳ございません」と謝罪したうえで、「再度確認させていただきますので、少々お待ちください」などと伝えましょう。
その後、レセプトや診療内容を丁寧に確認し、金額に間違いがあれば速やかに訂正します。
仮に金額が正しかった場合でも、「前回と今回で〇〇の処置が異なっているため、金額に差が生じております」などと丁寧に説明します。
このように、事実確認と丁寧な説明を心がけることで、患者さんの理解を得ることができるでしょう。
医療事務のクレーム対応のポイントや具体例を知って参考にしよう
医療事務におけるクレーム対応は、患者さんとの信頼関係を築くうえで非常に重要です。
本記事で紹介した10個のポイントと具体例を参考に、適切なクレーム対応のスキルを身につけていきましょう。
傾聴と共感、事実確認、適切な謝罪、改善策の提案など、各ポイントを押さえることで、より効果的な対応が可能になります。
例えば、待ち時間が長いというクレームに対しては、謝罪とともに空いている時間帯の案内を行うなど、具体的な解決策を提示することが大切です。
これらのスキルを磨くことで、患者さんの満足度向上につながり、医療機関全体のサービス品質の向上に貢献できるでしょう。
クレーム対応は難しい場面もありますが、チームで協力し、常に改善を心がけることで、より良い医療サービスの提供が可能となるのです。