
看護師をめざしている人やすでに看護師として活躍している人のなかには、救急科の看護師として活躍してみたいと考えている人もいるのではないでしょうか。
救急科のなかでも初療室は、救急搬送された患者さんが最初に運び込まれて治療を行う最前線の医療現場であり、看護師として命を助けられるやりがいを強く感じることができるでしょう。
今回は、初療室に興味がある看護師に対して、初療室で働く看護師の役割や必要な能力、向いている人について紹介します。
今回の記事を参考にしながら、初療室で働くご自身の姿をイメージしてみましょう。
目次
初療室で働く救急看護師の役割は?
初療室とは、救急搬送された患者さんが最初に運び込まれ、治療を受ける場所のことです。
初療室には、患者さんに適した治療を早急に実施できるよう、手術器具をはじめ、呼吸・循環管理に必要な医療器具が備えられています。
なお、初療室は、病院によっては、ER(Emergency Room)とも呼ばれています。
初療室で働く看護師の役割は、主に以下の4点です。
- トリアージの実施
- 初期治療の実施
- 医師の診療の補助
- 家族対応
それぞれ見ていきましょう。
トリアージの実施
事故や災害などで多くの患者さんが救急搬送されてきた場合、初療室では「トリアージ」を行います。
「トリアージ」とは、患者さんの状態を判別して、緊急度・重症度から治療の優先順位を決めていくことです。
トリアージでは、患者さんの治療の優先度を色で判別できるようにしていくため、「トリアージタグ」という標識をつけていきます。
トリアージタグは4種類あり、それぞれの意味は以下のとおりです。
治療の優先度 | タグの色 | 患者さんの状態 |
1(最優先) | 赤 | 命の危険があり、すぐに治療が必要な患者さん |
2 | 黄 | 多少治療が遅れても命の危険はない患者さん |
3 | 緑 | 軽症の患者さん |
4 | 黒 | すでに死亡している、あるいは蘇生の可能性がない患者さん |
トリアージを実施する看護師には、患者さんの状態を適切に判断する能力が求められます。
初期治療の実施
初療室では、救急搬送された患者さんの意識状態や呼吸状態、バイタルサインを確認し、必要な初期治療を実施します。
初期治療における看護師の具体的な業務は、採血・ルート確保・酸素投与・点滴投与・蘇生処置などです。
患者さんの状態によって、必要な処置は異なるため、眼の前の状況に対応できる柔軟性や、幅広い知識とスキルが求められます。
医師の診療の補助
初療室で働く看護師は、通常の看護師と同じく、医師の診療の補助も行います。
ただし、初療室での診療は命に関わる場面も多いため、正確でスピーディな対応が求められます。
患者さんの状態を見ながら、次に実施する処置をあらかじめ予測して準備しておく必要があります。
例えば、動脈血採血を実施する可能性があれば、すぐに採血ができるよう採血管やアルコール綿などの物品を準備しておきます。
医師の指示を受けてから動くのではなく前もって用意しておくことで、必要以上に慌てることなく、最適な医療を提供できるでしょう。
家族対応
ご家族への対応も看護師の役割です。
救急外来に駆けつけたご家族は、大きなショックを受け、精神的に不安定な状態の方も少なくありません。
初療室の看護師は、ご家族の気持ちに寄り添いつつ、患者さんの状態や今後の流れを説明する必要があります。
また、手術などの治療を行う場合はご家族からの同意を得たり、既往歴や内服薬などの必要な情報を収集したりすることも必要です。
ご家族に安心感を与えつつ、治療がスムーズに進められるよう、丁寧なコミュニケーションを取っていかなければなりません。
初療室の看護師に求められる能力
初療室で働く看護師には、以下のような能力が求められます。
- 救急看護の知識・技術
- 冷静な判断力
- コミュニケーション能力
いずれの能力も、一刻を争う場面で適切な対応をするために欠かせないものです。
それぞれ見ていきましょう。
救急看護の知識・技術
初療室の看護師には、救急看護の知識と技術が求められます。
一分一秒を争う場面では、分からないことを調べ直していたり、業務用のメモを見返している時間はありません。
素早く正確な処置を行えるよう、確かなスキルを身に着けておきましょう。
具体的には、バイタルサインやフィジカルアセスメント、採血などの基本的な看護スキルに加えて、酸素療法、呼吸管理、心肺蘇生、トリアージといった、救急分野のスキルが必要です。
冷静な判断力
初療室の看護師には、冷静な判断力が求められます。
例えば、トリアージを実施する場面では、多くの患者さんに対して、基本的には1人で患者さんの状態をアセスメントしなければなりません。
判断を誤ってしまうと、患者さんの命に関わるため、プレッシャーを感じることもあるでしょう。
そういった緊迫した状況のなかでも、パニックにならず、冷静に判断して対応できる能力が必要です。
コミュニケーション能力
初療室で働く看護師は、高いコミュニケーション能力が求められます。
緊迫した現場のなかで一刻も早く治療を行えるようにするためには、それぞれの医療スタッフと適切にコミュニケーションを取ることが重要です。
加えて、看護師は、患者さんのご家族とも短い時間のなかで信頼関係を構築してコミュニケーションを取らなければなりません。
相手の立場や状況に応じて柔軟な対応ができる高いコミュニケーション能力が求められます。
初療室の看護師に向いている人
初療室の看護師に向いている人の特徴を紹介します。
これから初療室で働きたいと考えている人は、自身に合う特徴があるかどうか確認してみてください。
体力に自信がある
初療室は、体力に自信がある看護師に向いています。
初療室には、常に重症度や緊急度の高い患者さんが運ばれてきます。
一般病棟であれば、夜間など、比較的落ち着いている時間帯もありますが、初療室の忙しさは昼夜を問いません。
ときには、救急患者さんの搬送が絶えない時間が続き、休憩を十分に取れないこともあるでしょう。
多忙さのなかでも、素早く正確に仕事をしていくためには、ある程度の体力が不可欠といえます。
精神的に安定している
初療室では患者さんの命に直結する場面も多く、強いプレッシャーがのしかかります。
緊急の処置が必要な状態が不安定な患者さんに対応する機会も多いからこそ、一つひとつの看護行為が患者さんに及ぼす影響が大きく、ミスが許されないと感じることもあるでしょう。
加えて、最善の治療を行っても救えない状況を目の当たりにする機会もあるかもしれません。
看護師として、患者さんを救えなかった無念さや悲しみを味わう可能性もあります。
どのような状況であっても精神的な安定を保ち、冷静な判断ができる看護師であれば、初療室での勤務に向いているでしょう。
向上心がある
「より看護師としてのスキルアップをしたい」「多くの業務に対応できるようになりたい」といった向上心のある人は、初療室の看護師に向いています。
初療室では、診療科に関わらずさまざまな疾患の患者さんに幅広く対応するため、どのような状況下でも対応できるよう幅広い知識・看護技術が求められます。
常に看護スキルの向上を目指し、勉強し続けることが必要です。
チームワークを発揮したい
初療室の看護師は、「チームワークを大切にしたい」「チームワークを意識して患者さんを助けたい」と考えている人にも向いています。
初療室では、1人の患者さんに対し、看護師以外にも医師や臨床検査技師など多くのスタッフがチームを組んで対応しています。
患者さんへ最適な医療を提供するためには、チーム内でお互いを尊重しあい、協力しながらそれぞれの役割を適切に発揮することが重要です。
初療室看護師の役割を知って働く姿をイメージしよう
初療室の看護師は、「トリアージの実施」「初期治療の実施」「医師の診療の補助」「家族対応」の4つの役割を担います。
緊急度・重症度が高い患者さんに対しても最適な治療を一刻も早く提供できるよう、幅広い知識とスキルが求められるでしょう。
他の医療職とチームを組んで密にコミュニケーションを取りながら、患者さんを最前線で守る看護師になりたいと考えている方は、ぜひ挑戦してみましょう。