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リエゾンナースとは|役割・なるための方法のほか活動場所も解説

この記事の監修者
川俣貴子
【資格】
看護師

【プロフィール】
東北福祉大学卒業後、看護師として循環器を含む総合病院で働いています。医療系ライターと看護師を励行中です。

患者さんやご家族の精神的なサポートを担うのが「リエゾンナース」です。
リエゾンナースは、医療チームへのサポートや教育、ケアシステムの構築・変革の促進など、多岐にわたる役割を担っています。

本記事では、リエゾンナースの具体的な役割や活動場所、資格取得方法、注目される理由を詳しく解説します。

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リエゾンナースとは

リエゾンナースとは

リエゾンナースとは、精神疾患をもつ患者さんやそのご家族に対して、精神的サポートを提供する専門看護師や認定看護師のことです。
リエゾンはフランス語で「橋渡し」「連携」「つなげる」という意味があり、リエゾンナースは患者さんと地域社会や医療機関間のコミュニケーションを円滑にする重要な役割を担っていることを示します。

精神看護は、2022年12月時点で存在する14の特定分野の一つです。
この分野は1995年11月に特定され、1996年6月から認定が開始されました。
これは、精神看護の必要性が早くから認識され、専門性を持った看護師の育成が進められていたことを示しています。

リエゾンナースの具体的な役割

リエゾンナースは、患者さんのサポート以外にもさまざまな役割をになっている看護師です。
役割を通じて、リエゾンナースへのさらなる理解を深めましょう。

効果的なケアの提供

リエゾンナースの役割として、効果的なケアを提供することが挙げられます。
効果的なケアとは、決して患者さんだけに向けられたものにとどまりません。

ここでは、精神疾患を抱える患者さんのケアと、そのご家族や介護者へのケアについてそれぞれ解説します。

精神疾患を抱える患者さんのケア

リエゾンナースの主な役割は、精神疾患を持つ患者さんに対する直接的なケアの提供です。
その他に、身体的な疾患を抱えるなかで生じる不安や苦痛によって、精神的な問題が発生した患者さんへの対応も含まれます。
せん妄の予防にも取り組み、患者さんが安全に治療を受けられるよう支援します。

リエゾンナースは、精神的な健康をサポートすることで、患者さんの全体的な治療成果の向上に寄与しているのです。

患者さんのご家族や介護者のケア

リエゾンナースは、精神疾患を持つ患者さんだけでなく、そのご家族や介護者もケアの対象です。
精神疾患のある患者さんのご家族や介護者は、患者さんの状態によって多くの悩みや苦悩を抱えることが多いでしょう。
リエゾンナースは、これらの問題や不安を聞きとり、適切なサポートを提供することが役割です。
また必要に応じて、他の医療チームメンバーとの連携も行います。

リエゾンナースは、患者さんだけでなくその周囲の人々の精神的な健康もケアし、全体的な治療環境を支える重要な役割を担っています。

医療チームへのサポートと教育

リエゾンナースの活躍の場は多岐にわたります。
その役割の一つは、医療チームへのサポートや教育です。
ここでは医療チームに対して、リエゾンナースが具体的にどういったアプローチをしていくのか説明します。

看護師からの相談対応

リエゾンナースは、看護師からの相談にも対応します。
精神疾患を抱える患者さんをもつ看護師たちが感じる不安や悩みに耳を傾け、内容に応じた教育や情報提供を行うことで、看護師のスキル向上のサポートをします。
看護師にとって日々の課題になりやすいのが、「この患者さんはどのようなケアが効果的か」という患者さんへの最適な介入方法です。

このような状況で、専門的な知識と技術をもったリエゾンナースは、病棟で働く看護師たちが直面する困難に対して適切なアドバイスやサポートが提供できるでしょう。
サポートにより、看護師は患者さんに対してより質の高いケアを提供できるようになり、それが患者さんの回復に直接つながることが期待されます。

また、看護師が新たな知識を吸収し日々の実践に活かす機会を、リエゾンナースが提供することで、全体的な医療サービスの質の向上にもつながるでしょう。
リエゾンナースは医療チーム内で知識の橋渡しを行う重要な存在であり、看護の質を高めるために不可欠な役割を担っています。

スタッフの情緒的支援・教育

リエゾンナースは、医療スタッフの情緒的支援や教育が求められます。
医療現場では新人看護師だけでなく、役職者も新しい職場や変動する立場にともなうストレスを感じることが多いでしょう。
そうした疲労から退職に至る事態を防ぐため、看護師が抱える悩みやストレスを適切に管理し、悩みを傾聴する相談窓口としての役割が求められます。

さらに、精神科看護に精通した専門知識や技術を他のスタッフと共有し、看護師個々のスキルやアセスメント能力の向上を支援することも重要です。

ケアシステムの構築・変革の促進

リエゾンナースの大切な役割として、医療現場でのケアシステムの構築・変革の促進をサポートすることも挙げられます。

ここでは、以下の2つに分けて説明します。

  • 新しいシステム導入時のたたき台を作成する
  • 古いシステムから最新のシステムへ変革を促す

新しいシステム導入時のたたき台を作成する

リエゾンナースは、新システムの導入時、精神医療の専門家として率先して基盤づくりに関わります。
例えば病院内で「せん妄ケアフローを作ってほしい」という意見があがった場合、せん妄の予防・対応システムの開発から携わります。

リエゾンナースは、せん妄や抑うつなど精神疾患を抱える患者さんのアセスメント力に長けているため、専門看護の資格を持たない看護師たちも同様のアセスメント力を付けることができるでしょう。
その結果、多くの看護師が質の高い安全な看護を提供しやすくなります。

古いシステムから最新のシステムへ変革を促す

リエゾンナースには、医療現場のシステムを最新のものにアップデートし続ける役割もあります。
日々、医療知識や科学は変化しています。
それにあわせて最新のシステムを構築、運用することで、病院全体の医療サービスの質を向上させる必要があるからです。

そのため、リエゾンナースも学会に参加し、最新医療の知識のアップデートが求められます。
リエゾンナースは最前線で活動しながらも、病院の治療とケアのクオリティを向上させるための中核的存在として機能しています。

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リエゾンナースの活動場所

リエゾンナースの活動場所

リエゾンナースの主な活動場所は以下のとおりです。

  • 病院
  • 訪問看護ステーション

それぞれの場所での活動内容をみていきましょう。

病院

総合病院や大学病院などの医療施設では、精神科専門医師、リエゾンナース、薬剤師などの専門家が一つのチームを形成して活動することがあります。
活動内容としては、精神的問題を抱える患者さんに対して、それぞれのニーズに合わせたケアや適切な関わり方の検討と提案です。
チームでのアプローチにより、患者さん一人ひとりの状態に最適化された治療やサポートが可能になるでしょう。

また、リエゾンナースは、病棟看護師や他のケアスタッフと定期的にカンファレンスを開催し、直面している問題に対して、新しいケアプランの策定や介入方法の提案を行います。
これらのプロセスによって、全体的な医療の質を向上させるだけでなく、患者さんの治療結果の改善にもつながることでしょう。

訪問看護ステーション

精神科訪問看護ステーションも、リエゾンナースの主な活動先です。
精神科に特化した知識を持つリエゾンナースは、訪問看護の現場で患者さんに精神的ケアを提供し、その専門性を生かしています。

病院のように常時医師や薬剤師がいるわけではありませんが、リエゾンナースを含めた看護師が中心となり、精神疾患を抱える利用者さんに適切な看護を検討・提供し、適切なタイミングで往診医や主治医へ相談し連携をとります。
「自宅で自分を大切に過ごしたい」という利用者さんの思いを汲み取りながら、利用者さんと社会をつなげる架け橋として活動します。

リエゾンナースが注目されている理由

厚生労働省の統計によると、令和4年時点で日本国内の精神的な疾患を抱える患者数は、約614.8万人に上り、その数は年々増加しています。
こうした背景からリエゾンナースの需要も高まっており、2023年には436名のリエゾンナースが活動しています。
精神疾患の患者さんは今後も増えることが予想されるため、精神疾患の患者さんを総合的にケアできるリエゾンナースは、今後さらに期待されるでしょう。

リエゾンナースの存在は、他の看護師たちにとっても大きな意味を持っています。
看護師は日々責任を背負い、精神的な負担も大きいため、不調を自覚した看護師から相談を受けることがあります。
そのような環境下でリエゾンナースは、率先して看護師のセルフケアのサポートを実施することで、職場内の精神衛生を保つ助けとなっているのです。
そのため、リエゾンナースの専門性をさらに伸ばし増員することが、今後の医療現場で重要視されていくことは間違いありません。

リエゾンナースになるためには

リエゾンナースになるためには、以下の2種類のどちらかの資格を取得する必要があります。

  • 精神科認定看護師
  • 精神看護専門看護師

それぞれの資格を取るために必要な条件があるため、確認しておくと安心です。

精神科認定看護師

精神看護に関わる資格として、「精神科認定看護師」という資格があります。
精神科認定看護師を取得すると、精神科領域に関する知識や技術が学べ、それを活用し精神疾患を抱える患者さんに対し質の高い看護を提供できるでしょう。

精神科認定看護師になるためには、以下のようなステップを踏む必要があります。

  1. 看護師免許を取得後、医療現場で5年以上の実務経験(このうち3年以上は精神科看護での経験が必要)
  2. 精神科認定看護師教育機関で専門教育を受講
  3. 2を修了後、精神科認定看護師認定試験に合格
  4. 精神科認定看護師として登録

ただし、この資格は5年ごとの更新が必要であり、そのためには継続教育や実務経験を通じて最新の知識と技術を維持し続けることが求められます。

その他の認定看護師も含めて詳しく知りたい方は、下記のページを参照してください。

精神看護専門看護師

「精神看護専門看護師」は、精神分野の専門知識や技術をもった看護師のことです。
医療現場において実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究と6つの役割を果たし、保健医療福祉の発展に貢献し看護学の向上をサポートします。

精神看護専門看護師になるためには、以下のステップを踏みます。

  1. 看護師免許を取得後、看護系大学の修士課程を修了
  2. 日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準に従って、総計26単位または38単位を取得
  3. 医療現場で5年以上実務研修を積み、そのうち3年以上は専門看護分野での経験
  4. 1~3の条件を満たしたあと、書類審査と筆記試験に合格
  5. 専門看護師認定証交付・登録

専門看護師の資格も、5年ごとに更新が必要です。
その際には看護実践の実績、研修実績、研究業績などの書類を提出し、審査を受けなければなりません。

精神科認定看護師よりも取得するために要する期間が長いため、ややハードルが高いように感じますが、これらによって専門看護師が高度な専門知識と技術を持ち続けることで、質の高い医療提供がされています。

リエゾンナースをめざして精神看護分野のエキスパートになろう

リエゾンナースは、精神疾患を持つ患者さんやそのご家族に対して、精神的サポートを提供する看護師のことです。
リエゾンナースになるためには、実務経験に加え、特定分野の専門知識を習得し試験に合格する必要があります。
合格後も、学会に参加したり研究に努めたりして、常に自身の知識を最新情報にアップデートし続けることが必要です。

また精神疾患を抱える患者さんが増加しているなかで、今後リエゾンナースの需要もさらに増加が予想されます。
リエゾンナースには、患者さんだけでなく周りの看護師や医師、地域などと連携しながら総合的なケアをしていくことが期待されるでしょう。

精神看護分野を通じて、全体の医療の質の向上に携われるリエゾンナースを検討してみてはいかがでしょうか。

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執筆者について

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