
看護師になるには、学生の間に看護実習を受ける必要があります。
看護師に実習があることは知っていたとしても、内容やスケジュールまでは把握していない人もいるでしょう。
この記事では、看護実習の目的や内容、スケジュールを解説します。
また、看護実習の何が辛いのか、どうやって乗り越えれば良いのかも紹介します。
看護師になりたい方や看護実習を控えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
看護師の実習とは
そもそも看護実習とはどのようなものなのでしょうか。
ここではまず、看護師の実習を知るために、以下の3つを解説します。
- 目的
- 内容
- スケジュール
目的
文部科学省は、看護実習の目的をガイドラインで示しています。
看護実習は、看護学校で得た知識と技術を臨床現場で活かして、実践できる能力を得ることが目的です。
また、コミュニケーション能力や課題対応能力、管理能力など、さまざまな面での育成も目的とされています。
学校で学び、頭で理解していたとしても、実際に行動できるとは限りません。
そのため、働きはじめたときにスムーズに仕事ができるようにするため、看護実習が用意されているのだと考えられます。
内容
看護実習は、以下の3つの内容で成り立っています。
- 基礎実習
- 領域実習
- 統合実習
それぞれについて見ていきましょう。
基礎実習
基礎実習は、学校で学んだ知識や技術を、現場で活かされる基礎的な能力にむすびつけて培う実習であり、基礎Ⅰ実習と基礎Ⅱ実習に分かれています。
基礎Ⅰ実習では、医療施設での看護の現場見学がメインです。
実際の看護師をシャドーイングしながら、コミュニケーションや日常生活について学び、看護の機能や役割の理解を深めます。
基礎Ⅱ実習では、一人の患者さんを継続的に受け持ち、看護計画を立案したり、看護ケアを提供します。
患者さんとの関わりに加え、看護チームのメンバーとして、問題点や方向性などについて考えることも求められるでしょう。
領域実習
領域実習では以下の6分野について学びます。
- 成人看護学実習
- 老年看護学実習
- 小児看護学実習
- 母性看護学実習
- 精神看護学実習
- 在宅看護学実習
さまざまな状況、状態の患者さんと関わる実習を経験することで、看護師としての幅広い能力を身につけます。
患者さんや地域の人のニーズ、医療従事者などの役割を理解するにも有効な実習です。
統合実習
統合実習とは、看護学校で学んだすべての内容を集結させ、実践力の向上をめざすものです。
統合実習は、実際の看護現場で適切に動ける人材を育成することを目的としています。
通常の看護師と同じ業務を臨床で行うため、現場に近い実習ともいえるでしょう。
スケジュール
看護実習のスケジュールは学校によって異なります。
ここでは大まかな例を挙げます。
【3年制】
学年 | 実習内容 | 開始時期 | 期間 |
1年生 | 基礎Ⅰ実習 基礎Ⅱ実習 |
9月頃〜 2月頃〜 |
1週間程度 2週間程度 |
2年生 | 領域実習 | 10月〜2月頃 | 8週間程度 |
3年生 | 領域実習 統合実習 |
5月〜11月頃 11月頃〜 |
10週間程度 2週間程度 |
【4年制】
学年 | 実習内容 | 開始時期 | 期間 |
1年生 | 基礎Ⅰ実習 | 9月〜2月頃 | 1週間程度 |
2年生 | 基礎Ⅱ実習 | 5月〜2月頃 | 2週間程度 |
3年生 | 領域実習 | 9〜3月頃 | 2・3週間程度を6回 |
4年生 | 統合実習 | 9月頃 | 2週間程度 |
次に、1日のスケジュール例を紹介します。
8:00 | 実習開始、病棟看護師へ挨拶、情報収集 |
8:30 | 申し送り、実習生担当看護師へ1日の行動計画を発表する |
9:00 | バイタル測定、清潔ケアを含む看護ケア |
11:30 | 配膳・食事介助 |
12:00 | 休憩 |
13:30 | 看護ケア |
15:00 | 学生カンファレンス・報告、明日の確認 |
16:30 | 実習先病棟へ挨拶後実習修了、学校へ |
17:00 | 記録して帰宅 |
看護師の実習が辛いといわれる理由と対処法
ここでは、看護実習が辛いといわれる理由と対処法として、以下の5つを紹介します。
- 指導者が厳しい
- 患者さんとのコミュニケーションが大変
- 記録をとるのに時間がかかる
- 事前学習が大変
- 睡眠時間の確保がむずかしい
指導者が厳しい
看護師の仕事は、患者さんの命を扱う仕事です。
たとえ実習といえども担当するのは患者さんであり、ちょっとしたミスが重大事故につながる可能性もないとはいえません。
そのため、優しく指導するのではなく、厳しい指導を行わざるを得ない場合もあるのです。
学生ではなく患者さんを中心に考えて指導されることで、指導者をこわいと感じる人もいるでしょう。
また、忙しくて質問などの時間が取りづらいケースも考えられます。
質問する際などは、簡潔に質問・相談することを心がけ、指導者の時間を無駄に奪わないようにしましょう。
とはいえ、理不尽な要求や怒りをぶつけられた場合は、気にする必要はありません。
理不尽に怒られたのか、患者さんに不利益が被らないように指導を受けたのか、判断するようにしましょう。
患者さんとのコミュニケーションが大変
患者さんにはさまざまな病気の人がおり、性格も一人ひとり異なります。
そのため、応対に慣れていない学生は、患者さんとのコミュニケーションで悩むことも多いです。
患者さんからしたら、学生も看護師も同じようなもの。
学生だからといって、優しくしてくれるとは限りません。
そのようなときはただ悩むのではなく、他の看護師がどのような話題を提供し、対応しているかを観察すると良いでしょう。
また、実習に慣れることで少しずつ改善されることもあります。
記録をとるのに時間がかかる
1日の看護実習が終わったあとに取る記録に、時間がかかりすぎて辛いという声もあります。
記録を作成するには情報収集をしなければならず、もちろん誤字や脱字にも注意しなければなりません。
記録の書き方に慣れることが時間短縮につながるかもしれませんが、それまでの間は担当教員に相談すると良いでしょう。
また、受け持ち患者さんの病態を調べ、その疾患の主な症状を理解し、「該当する症状があるか」など、必要な情報を選択できるよう意識することも一つです。
事前学習が大変
担当する患者さんの症状によっても異なりますが、事前学習はどのような場合でも行うのが基本です。
実習期間中は、患者さんの疾患について学び、看護手順の確認などを行わなければなりません。
何もしないで対応すると、適切な処置ができないためです。
事前に完全に調べられなかった場合は、教科書や参考書を持参しましょう。
負担が大きいと感じてしまう場合には、将来の看護師像を考えたり、看護師試験の合格を想像したりすることで、モチベーションをアップさせて乗り切るのもおすすめです。
睡眠時間の確保がむずかしい
実習中は昼間の実習以外にも、記録をとる、事前学習をする、レポートを書くなど、忙しい生活になります。
プライベートの時間がないだけではなく、場合によっては睡眠時間を削らないといけない人もいるでしょう。
とはいえ、睡眠時間が足りないことで集中力が切れ、注意が散漫になるとミスが発生する可能性もあります。
心身の消耗を少なくするためにも、できる限り睡眠時間を確保するように努めましょう。
いろいろと工夫をしても睡眠時間が確保できない場合は、指導教員へ相談し対策を考えましょう。
看護師の実習の内容を把握して実習を乗り越えよう
今回は看護師の実習の内容やスケジュールを紹介しました。
看護実習というと、厳しい、辛いという声が聞こえるかもしれません。
しかし、今回紹介した対処法を意識するだけでも、辛い気持ちが軽減し対応できる可能性があります。
看護師をめざしたい方、めざしている方は実習について正しく把握しておき、スムーズに乗り越えられるようにしましょう。