日本の高齢化や医療の高度化・複雑化により、ますますチーム医療の推進が求められており、看護師としてチーム医療に関わる機会もあるでしょう。
一方で、急にチーム医療の一員となってもどのように活躍をすれば良いのか、チーム内での役割がわからず迷ってしまうこともあるかもしれません。
今回の記事では、チーム医療における看護師の役割や活動内容、必要スキルについて紹介します。
今後チーム医療で活躍したいと考えている場合は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
看護師はチーム医療のキーパーソン
看護師は、チーム医療の中心的な存在です。
チーム医療とは、看護師をはじめ医師や臨床検査技師、管理栄養士など医療に関わる職種がそれぞれの専門性を発揮して他職種と連携し、質の高い医療を提供することです。
現在の日本では、在宅医療のニーズの上昇や医療の複雑化により、チーム医療の必要性が求められています。
看護師は、チーム医療のなかで患者さんにより近い立場であるからこそ、積極的に他職種と連携し、チーム医療を進めていく必要があるでしょう。
チーム医療における看護師の役割
チーム医療における看護師の役割は、以下の2点です。
- 他職種連携をスムーズに行うための仲介役
- 患者さんと医療スタッフの橋渡し役
看護師の役割や仕事内容については、以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。
他職種連携をスムーズに行うための仲介役
看護師は他職種連携をスムーズに行うための仲介役として、チームをまとめていく役割があります。
看護師は、他職種の医療スタッフと関わる機会が多いことから、それぞれの職種の意見を把握して他スタッフと共有したり、カンファレンスを進めていくことが求められます。
また、職種が異なると、患者さんへのサポート方針や考えが異なることもあるでしょう。
そのようなときには、職種ごとの考えを理解し、認識を整理しつつ、チームが同じ認識で患者さんに医療を提供できるように意見をまとめていく必要があります。
患者さんと医療スタッフの橋渡し役
看護師は患者さんにとって身近な存在です。
そのため、患者さんと医療スタッフの橋渡し役を担うこともあります。
患者さんによっては、面識のない医療スタッフに対して、緊張してご自身の希望や思いをうまく伝えられない人もいます。
看護師が医療スタッフと患者さんの間に入ることで、安心して気持ちを伝えられるような環境を作ったり、理解者となって気持ちを代弁したりできるでしょう。
また、医療スタッフによっては、多くの患者さんを相手にするため特定の患者さんに関わる時間が限られており、医療的な視点を踏まえて患者さんの情報を知りたい場合もあります。
看護師は、患者さんの様子や思いなどを医療スタッフに情報を伝えることで、より良い医療の提供に貢献できるのです。
チーム医療の種類と看護師の活動内容
チーム医療の種類は複数あり、代表的なものとして以下のチームがあります。
<チーム医療例>
- 褥瘡対策チーム
- 緩和ケアチーム
- リハビリテーションチーム
- 栄養サポートチーム
- 医療安全管理チーム
※病院によってチーム名称は異なります。
それぞれのチームにおける看護師の活動内容を見ていきましょう。
褥瘡対策チーム
褥瘡対策チームは、患者さんへの適切な褥瘡ケアや褥瘡予防を目的として活動する医療チームです。
<褥瘡対策チーム看護師の主な活動内容>
- 定期的な褥瘡対策カンファレンス
- 褥瘡回診(皮膚状態の観察・褥瘡の早期発見・褥瘡発生リスクのアセスメント)
- 他医療スタッフへの褥瘡対策指導・院内教育
- 患者さんの栄養状態を確認し、必要に応じて栄養士に相談する
- 褥瘡リスクの高い患者さんのスクリーニング・具体的な予防対策の提案
緩和ケアチーム
緩和ケアチームは、患者さんに対して、痛みや症状に対する苦痛、不安などの身体的・精神的苦痛に対してアプローチし、QOL向上を目標にケアを行うチームです。
緩和ケアチームのケア対象は多岐に渡りますが、具体的な事例としてがんの疼痛緩和や終末期の意思決定支援などがあります。
<緩和ケアチーム看護師の主な活動内容>
- 患者さん(ご家族も対象)の精神的・身体的苦痛のアセスメント
- 今後の治療方針や生活方法に対する意思決定支援・療養相談
- 定期的な回診・病棟内カンファレンス
- 患者さんに適切な緩和ケア方法の提案
- スタッフへの緩和ケア方法の教育活動
リハビリテーションチーム
リハビリテーションチームは、病気や事故などの負傷により日常生活が困難な患者さんを対象として、患者さんの目標に適したリハビリを提供し社会復帰を支援するチームです。
<リハビリテーションチーム看護師の主な活動内容>
- 患者さんに適したリハビリの提供
- 患者さんやスタッフに対するリハビリ方法の提案
- 定期的なカンファレンス(病棟内・チーム内)
- リハビリ方法の教育活動
- 退院後の生活環境調整・社会資源サービスの検討
栄養サポートチーム(NST)
栄養サポートチームは、患者さんへの適切な栄養管理を行えるようサポートするチームのことであり、別名でNST(Nutrition Support Team)と呼ばれることもあります。
例えば、病状により経口摂取が困難などの理由により、栄養状態が著しく低下してしまった患者さんに対して、栄養状態を改善する方法を提案します。
<栄養サポートチーム看護師の主な活動内容>
- 患者さんの栄養状態のスクリーニング・アセスメント
- 栄養補給方法の提案(栄養補助食品の提案・食事形態の提案)
- 退院後の食事指導
- NSTカンファレンスの実施・回診の参加
- 院内教育活動
医療安全管理チーム
医療安全管理チームとは、病院内で患者さんに対して安全な医療を提供することを目的として、管理体制の整備やアクシデント発生防止対策を行うチームのことです。
<医療安全管理チーム看護師の主な活動内容>
- インシデント発生件数の調査・分析
- 医療事故防止対策の実施(医療安全マニュアルの作成や改訂)
- 定期的な医療安全カンファレンスの実施
- アクシデント・インシデント事例検討会の実施
- 病棟ラウンド(医療事故リスクやマニュアル遵守状況の確認)
- 医療安全対策の院内教育活動
チーム医療に関わる看護師に必要なスキル
チーム医療のメンバーになると、看護師の視点から患者さんをアセスメントするとともに、看護師の意見や考えを他職種から求められることがあります。
チーム医療に関わる看護師に必要なスキルを見ていきましょう。
看護師のアセスメントスキル
チーム医療では、定期的に患者さんのケア方法を相談するために、カンファレンスが行われます。
カンファレンスでは、看護師の専門性を発揮して、自ら情報共有を行ったり、他職種に向けて看護師としての意見や考えを述べる必要があります。
普段の看護師業務から、適切な情報収集やアセスメントを行えるスキルが必要です。
関わるチームによって求められる専門的なスキルや知識は異なります。
特定の分野において専門性の高い認定看護師や専門看護師などが、チーム医療で活躍することが多いです。
他職種とのコミュニケーション能力
他職種の意見や考えを理解して尊重したり、適切な情報共有が行えるようなコミュニケーション能力も重要です。
職種ごとに役割や考え方は異なるため、時にはチーム内で意見が食い違ってしまうこともあるかもしれません。
自分自身の意見を伝えることも重要ですが、お互いの考えを認め合い柔軟に対応できるように、密にコミュニケーションを取っていくことが求められます。
また、他職種とスムーズに連携するためには、事前にその職種について理解しておくと良いでしょう。
チーム医療の推進により看護師の活躍が求められている
看護系大学出身の看護師の増加や大学院の設立などによる教育水準の高まり、そして在宅医療ニーズ上昇を背景に、チーム医療における看護師の活躍はますます求められています。
より質の高いチーム医療の推進のために、看護師は「特定行為」などを通して、自ら実施できる医療行為を拡大するなどの施策が検討され実施されている現状があります。
<特定行為の一例>
- 気管カニューレの交換
- 胸腔ドレーンの抜去
- 中心静脈カテーテルの抜去
- インスリン投与量の調整
看護師としてチーム医療に貢献しよう
看護師は、チーム医療に欠かせない存在でありチームの一員として役割を果たすことで、患者さんにより良い医療が提供できます。
看護師のみでは解決できない患者さんへのケア方法も、他の職種と相談することで解決策の糸口を見つけられます。
看護師としてチーム医療に貢献できるように、チーム医療の理解を深めておきましょう。