看護師の働き方は、正社員やパート・アルバイトといった雇用形態だけでなく、活躍する職場や勤務時間など選択肢はさまざまです。
今後も自分らしく働くために、看護師の働き方の選択肢を知っておくのがおすすめです。
とはいえ「看護師にはどのような働き方がある?」「賢い働き方を知りたい」という方は多いかもしれません。
この記事では、看護師の働き方を雇用形態・勤務形態・職場別に分けて紹介します。
記事の後半では、看護師の働き方改革も解説します。
目次
【雇用形態別】看護師の働き方
看護師の雇用形態は、主に次の4種類があります。
- 正社員
- 契約社員
- パート・アルバイト
- 派遣社員
ここでは、雇用形態から見た看護師の働き方を解説します。
正社員
正社員の場合、社会保険や雇用保険への加入や、手厚い福利厚生があるため、安心感があります。
また、ボーナスや退職金など、収入面での安定感も得られる点がメリットです。
一方で、フルタイム勤務が基本なので、勤務時間の自由度が低いのがデメリットだといえるでしょう。
職場によっては、夜勤や時間外労働などのために勤務時間が長くなるケースがあります。
また、他の雇用形態に比べ、責任が重い場合もあります。
例えば病院勤務の場合、委員会活動やリーダー業務、学生指導、勉強会などによる負担を感じるケースがあるでしょう。
職場によっては、転勤の可能性もあります。
正社員の場合、体力面や精神面・家庭の事情など、自分の状況に合った働き方ができる職場選びが大切です。
契約社員
契約社員の場合、雇用期間が定められており、1回の契約において雇用期間には3年の上限(一部5年の例外あり)があります。
契約満了時、更新か終了かを選択できるため、さまざまな職場を経験する機会が持てるでしょう。
その反面、職場が変わることで収入が安定しなかったり、住宅ローンが通りにくかったりするほか、転職先を新たに探す手間がかかる点がデメリットとしてあります。
ただし、雇用期間が5年を超えた場合は、無期契約への転換を会社に申し込むことが可能です。
パート・アルバイト
パート・アルバイトの場合、フルタイムの勤務に比べると労働時間や日数を限定して働けます。
例えば「4時間勤務を週2日」「6時間勤務を週4日」といった働き方が可能です。
そのため、子育てや介護など、隙間時間を有効に活用できるでしょう。
一方で、労働時間などの条件によっては社会保険に加入できないケースがあります。
また、昇進や昇給の機会が少ない、キャリアアップが難しい点などがデメリットだといえるでしょう。
派遣社員
派遣社員の場合、職場ではなく派遣会社と雇用契約を結びます。
給与や福利厚生も、派遣会社の規定に基づいて対応されます。
派遣会社が職場を紹介してくれるため、就業先を見つけやすい点がメリットです。
条件交渉なども会社が行うため、安心して働けるでしょう。
一方で、派遣社員は3年が上限の有期雇用なので、収入が不安定になりやすい点がデメリットです。
【勤務形態別】看護師の働き方
看護師の勤務形態は、主に以下4つが挙げられます。
- 夜勤あり
- 日勤のみ
- 夜勤専従
- 時短勤務
ここでは、勤務形態から見た看護師の働き方を解説します。
夜勤ありの場合
病棟や救急外来など、24時間対応が必要な職場での看護師の勤務体制は、夜勤を含む交代制です。
夜勤の時間帯は職場によって異なりますが、主なシフトとして2交代制・3交代制があります。
それぞれ解説します。
2交代制
2交代制は、日勤と夜勤の2つのみの勤務を交代して行い、夜勤の勤務時間が長いことが特徴です。
しかし、夜勤のあとは休みになることが多いため、スケジュールが立てやすくなります。
しかし、夜勤の時間が長くなるので、体への負担が大きい点がデメリットです。
忙しい職場では、急変やナースコール対応などで、夜勤の間も十分な仮眠・休憩が取れないこともあるでしょう。
3交代制
3交代制は、2交代制に比べて勤務時間が短いぶん、集中力を保って働けます。
2交代制と比較して、体への負担が軽減できることもメリットでしょう。
3交代制は勤務時間が短いのですが、日勤のあとに夜勤が入ることもあるため、生活リズムが整いにくいというデメリットがあります。
職場や勤務の忙しさによって、出勤や帰宅が深夜になってしまうことがあるでしょう。
日勤のみの場合
常勤かつ日勤のみの勤務の場合は、1日8時間、週休2日制が一般的です。
日中のみの仕事なので、子育て中でも働きやすいのがメリットです。
規則正しい生活が送れるため、体への負担は軽くなるでしょう。
ただし、日勤のみの場合は夜勤手当がないため、収入は低くなるでしょう。
夜勤専従の場合
夜勤専従は、夜勤だけを行う働き方です。
原則、日勤業務は行いません。
勤務時間は長くなりますが、少ない勤務回数で高収入を期待できるでしょう。
また、交代制に比べて、生活リズムを整えやすくなります。
とはいえ、昼夜逆転した状態が長期間続くので、体への負担は大きいといえます。
また、勤務場所によっては夜勤看護師が一人の場合があります。
そのため、専門外でも対応できる幅広い知識と臨機応変さが求められるでしょう。
時短勤務の場合
職場によっては「時短常勤」という働き方があります。
常勤として働いているなかで、育児や介護のために時短勤務の契約を結んでいる人の働き方です。
時短勤務は、自分の生活に合った働き方として選択できるでしょう。
ただし、日勤常勤に比べると、給料や賞与が低くなる傾向にあります。
【職場別】看護師の働き方
看護師の職場は、病院だけではありません。
ここでは、職場別に見た看護師の働き方をご紹介します。
大学病院
大学病院は、高度な医療技術を提供し、専門的な診察を行います。
そのため、最新の医療技術やスキルを習得できるのが最大の特徴です。
大学病院には複数の診療科があるため、特定分野の専門性を高められるでしょう。
その一方で、大学病院では研修医が採血や注射をすることがあり、看護師が行える医療行為が限定されるケースがあります。
一般病院
一般病院には複数の診療科目があり、担当する科によって業務の内容や量が異なります。
小規模な病院では外来と病棟を兼務する場合もあり、幅広い知識や技術を身につけられるでしょう。
また、一般病院の場合は大学病院に比べて看護師が行う医療行為が多くなる傾向があるため、スキルアップも見込めます。
病院以外の看護師の働き方を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
クリニック
クリニックの場合、基本的に日勤のみの働き方になります。
クリニックは日曜祝日休みが多いため、子育てやプライベートと両立しやすいメリットがあります。
その一方で、病院などに比べて扱う症例が限られるため、スキルアップにはつながりにくいでしょう。
また、少人数のスタッフでシフトを回しているため、急な休みは取りにくいといえます。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションの場合、自宅から利用者の居宅へ直行直帰できるケースがあり、時間を有効に使えることがメリットです。
基本的に日勤のみですが、夜間のオンコール対応を行っている事業所もあります。
病院やクリニックと違って、患者さんやご家族とじっくり関われるため、やりがいを感じられるでしょう。
介護保険施設
介護施設の場合、施設によっては日勤だけでなく、夜間オンコールや夜勤があるケースがあります。
医療処置は多くなく、投薬や健康管理がメインなため、ゆっくり働けますが、キャリアアップにはつながりにくいといえるでしょう。
また、病院などに比べて看護師や医師の人数が少ないため、緊急時の対応力が求められます。
保育園
保育園の場合、日勤のみで日曜や祝日は休日となるケースがほとんどなので、生活リズムが整いやすいでしょう。
子どもと関わるため、子育て経験者や子どもが好きな人に向いています。
保育園では、健康管理や緊急対応などの看護業務のほか、保育補助を行うことがあります。
医療処置があまりないため、看護師としてのスキルアップにはつながりにくいでしょう。
保健所・保健センター
保健所や保健センターの場合、地域の人々の健康相談や予防接種など、予防的な看護が中心となります。
保健所や保健センターで働く場合、地方公務員となるため、基本的に日勤のみで日曜や祝日が休日となるケースが多いです。
そのため、生活リズムが整いやすく、プライベートと両立しやすいでしょう。
児童福祉施設
児童福祉施設の場合、基本的には日勤のみで土日祝日は休日のケースが多いため、生活リズムが整いやすいでしょう。
ただし、施設によっては夜勤がある場合もあります。
児童福祉施設では医療的な処置がほとんどないため、スキルアップや知識を広げることは難しいでしょう。
企業
企業で働く看護師を、企業看護師または産業看護師といいます。
企業に常駐する場合、基本的に日勤のみで日曜祝日が休みになるため、生活リズムが整いやすいでしょう。
企業で働く場合、医療処置がほとんどなく、看護師としてのスキルアップや知識の習得は難しい環境です。
看護大学・専門学校
看護師は、教員として看護大学や専門学校で働くこともできます。
看護学生に対して学科や実践などの授業を行うほか、資料作成といった事前準備、進路相談を含む看護学生との面談などの業務があります。
看護大学や専門学校は日勤のみで土日は休みなので、生活リズムが整いやすいでしょう。
看護師としての知識やスキルを活かせ、子育てなどでブランクがある人や、指導が得意な人などに向いています。
コールセンター
看護師の資格を活かして、コールセンターで働くことも選択肢の一つです。
健康相談や医薬品メーカー・医療機器メーカーの問い合わせ対応など、看護師としての知識を活かして働けます。
業務はデスクワーク中心なので、体力の消耗が少ないのが特徴です。
また、コールセンターは受付時間が決まっているため、ほとんど残業がありません。
しかし、場合によっては夜間に対応しなければならないことがあります。
医薬品や医療の知識は多少増えますが、医療行為がないため、スキルアップやキャリアアップにつながらないでしょう。
看護師の働き方改革とは
2019年から働き方改革関連法の施行が始まり、看護職でも働き方改革の推進が行われています。
日本看護協会では、就業継続が可能な看護職の働き方として、以下5つの要因10項目を提案しています。
5つの要因 | 「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」(10項目) |
1.夜勤負担 | 1)勤務間隔は11時間以上あける(勤務間インターバルの確保) 2)勤務拘束時間13時間以内とする 3)仮眠取得の確保と仮眠環境の整備をする 4)頻繁な昼夜遷移が生じない交代制勤務の編成とする |
2.時間外労働 | 1)夜勤・交代制勤務者においては時間外労働をなくす 2)可視化されていない時間外労働[1] (※)を把握し、必要な業務は所定労働時間に取り込む ※業務開始前残業(前残業)や持ち帰り業務、勤務時間外での研修参加等(業務時間外残業) |
3.暴力・ハラスメント | 1)暴力・ハラスメントに対し、実効性のある組織的対策を推進する 2)上司・同僚・外部からのサポート体制を充実させる |
4.仕事のコントロール感 | 1)仕事のコントロール感を持てるようにする |
5.評価と処遇 | 1)仕事・役割・責任等に見合った評価・処遇(賃金)とする |
ここでは、夜勤負担と時間外労働に関して解説します。
夜勤負担の軽減
就業継続が可能な看護職の働き方として提案されているのは、夜勤負担の軽減です。
勤務の間隔を11時間以上あけることで、十分な生活時間や睡眠時間を確保でき、健康保持・仕事と生活の調和を図るために有効としています。
また、長時間労働は心身の健康だけでなく、仕事や生活への満足度にも悪影響をもたらすものです。
そのため、日勤・夜勤とも拘束時間を13時間以内にするよう提案されています。
実働時間8時間を超える夜勤では仮眠時間を連続2時間以上確保するほか、仮眠環境の整備や夜勤人員体制の整備など、夜勤負担の軽減をめざす方策にも触れられています。
時間外労働の上限規制
働き方改革によって、時間外労働の上限は原則、月45時間・年360時間と義務付けられました。
この範囲内で時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を締結しなければなりません。
36協定を結べば、特別な事情がある場合に限り、時間外労働が可能な場合があります。
日本看護協会では、時間外労働に対し、以下2つの提言をしています。
- 夜勤・交代制勤務者においては時間外労働をなくす
- 可視化されていない時間外労働を把握し、必要な業務は所定労働時間に取り組む
時間外労働を行わない職場風土づくりが大切です。
例えば、eラーニングを含む研修や看護研究などは、業務と自己研鑽の区分をあらかじめ明確にすることや、時間外労働を申告できるようなスタッフへの教育・研修の実施、などが提案されています。
看護師は自分の生活に応じて働き方を選択できる
看護師の働き方は、どのような勤務形態で働くか、どのような職場で働くかによって異なります。
看護師の資格を活かせば、自分の生活や状況に応じてさまざまな働き方が選択できるでしょう。