医療系の仕事とはそれまで縁のなかった主婦や社会人であっても、看護師資格を取得することで看護師として活躍することができます。
とはいえ、看護師資格取得には、一定の学習期間、そして授業料などの費用が必要になってきます。
看護師資格は国家資格であるため、学校に通いながら必要なカリキュラムを履修し、国家試験に合格しなければならないのです。
今回の記事では、主婦や社会人が看護師になる際の方法や必要な費用、注意点などを紹介していきます。
目次
主婦・社会人でも正看護師になれる?
主婦の方を含めた社会人経験者の看護養成所への入学割合は約4人に一人となって おり、主婦や社会人から、あらためて看護師をめざす方は珍しくありません。
厚生労働省では、「看護師養成所における社会人経験者の受け入れ準備・支援のための 指針」というガイドラインを作成しており、さまざまな生活背景を持った主婦・社会人が十分な教育を受け、より良い看護師になることを支援しています。
正看護師資格取得方法
正看護師資格の取得方法は、最終学歴が中学校卒業か高等学校卒業かで変わります。
最終学歴が中学校の方の場合は、5年一貫看護師養成課程校に通うか、一度2年制の学校に通って准看護師資格を取得し、3年の実務を経験してから、あらためて看護師養成校への通学が必要です。
一方、最終学歴が高等学校卒業の方の場合は、4年制の看護系大学か3年制の専門学校または看護短期大学に通います。
それぞれの学校で看護師になるための必要な学習を終えたのち、毎年2月に行われる看護師国家試験を受験し、合格する必要があります。
【主婦が最短で看護師になるには】専門学校がおすすめ
専門学校は、最短で看護師資格を取得したいと考えている方に最適です。
普段から家事や育児をしなければならなかったり、学費を自分自身で用意する必要があったりと、主婦が看護師をめざすうえでは一般的な学生とは異なる苦労も多いでしょう。
卒業後、本当に看護師として働くことができるのか不安な方もいるかもしれません。
専門学校では3年間という最短期間で看護師資格が取得でき、費用も他の学校と比較して安価な傾向があります。
また、実習の機会が多く看護師としての基本的な技術を身につけることができるため、卒業後にスムーズに看護師として活躍することができるのです。
加えて、学校数も多いため、自宅から通いやすい学校を見つけることができるでしょう。
卒業までに必要な期間は3年間
専門学校の卒業には3年 必要です。
この3年間で、看護師になるために必要なカリキュラムを履修していきます。
カリキュラムは学校によって異なりますが、1年次には、解剖学や生理学、疾病治療論など看護を実践するうえで欠かせない基礎的な内容や医学知識を学習するとともに、基礎的な看護技術も身につけなければなりません。
2年次には、1年次の学習内容をもとに基礎的な看護を学びながら、病院での実習も少しずつ開始していきます。
3年次では、臨地実習の頻度が高くなり、実際の患者さんを受け持って、現場の看護師の協力を得ながら必要な看護を提供しながらスキルを学び、身につけていきます。
3年間の学びを通して、基礎的知識に基づき、患者さんに対して計画的な看護を根拠を持って行う力を身につけることができるでしょう。
学費は約250万〜300万程度
学校によって異なりますが、専門学校の学費は、3年間で250万〜300万程度 となっています。
看護学校は、入学金や授業料の他に、実習代やナース服、聴診器、場合によっては国試対策の費用がかかってきますので、費用は余裕を持って準備しておくと良いでしょう。
入学時点で学費の準備が難しい方も、奨学金を利用することで学費を賄うことができます。
一般的な日本学生機構の奨学金もありますが、働きたい病院がすでに決まっている場合は、病院の奨学金制度を利用することも可能です。
病院奨学金制度では、看護学校卒業後一定期間その病院で看護師として働くことで、奨学金の返済が減額、または免除になります。
看護学生の1日のスケジュール
主婦が日中に看護学校に通う場合、朝や夜の時間に家事などをこなす必要があります。
また、通常授業の日と実習の日では、スケジュールが少し異なってきます。
ここでは、3歳ぐらいの子どもが一人いると仮定して、主婦兼看護学生の1日のスケジュールをイメージしてみましょう。
【通常授業の日】
- 6:00 起床、朝食準備・洗濯・学校の準備
- 7:00 子どもと一緒に朝ご飯
- 7:30 子どもを保育園へ送迎し、出発
- 8:00~12:00 午前授業
- 12:00 昼休み
- 13:00~16:00 午後授業
- 16:00 子どもの迎え、買い物、帰宅
- 18:00 夕食、入浴、家事
- 21:00 授業の復習、明日の準備
- 22:30 就寝
【実習の日】
- 5:30 起床、朝食準備・洗濯・学校の準備
- 6:30 子どもと一緒に朝ご飯
- 7:00 子どもを保育園へ送迎し、出発
- 8:20 午前実習
- 12:00 昼休み
- 13:00 午後実習
- 17:00 子どもの迎え、買い物、帰宅
- 18:30 夕食、入浴、家事
- 21:00 実習レポート、明日の準備
- 22:30 就寝
イメージしたスケジュールのとおり、育児や家事を行いながら学校に通い学習するためには、朝から夜までタイトなスケジュールをこなさなくてはなりません。
また、通常授業の日と比較して実習の日は、朝の集合時間が早くなったり、実習病院が自宅から遠く、移動にいつもより時間がかかったりする場合もあります。
家事は休日にまとめて行う、家事・育児を手伝ってもらえる環境をつくるなどの工夫が必要かもしれません。
看護学校の受験方法
看護学校の入学試験は、学校によって試験科目や受験枠に違いがあるので確認をしてください。
また、受験枠には、大きく分けて一般枠と社会人枠があり、それぞれ試験内容が異なります。
一般枠の受験科目は、数学や英語、国語などとなっており、これらの試験科目に、小論文や面接が追加されることもあります。
社会人枠の受験科目は、面接と小論文が中心です。
社会人枠では募集人数を限定している場合もあり、一般枠と比較して倍率が高くなる傾向です。
いずれにせよ、受験する学校によって受験科目は異なるため、早めに進学したい学校を決めて、必要な科目の受験対策をするのが良いでしょう。
主婦が専門学校以外で看護を学ぶには?
先述したとおり、看護師になるためには、専門学校以外に看護短期大学と4年制大学に進学する方法 があります。
ここでは、それぞれの学校の特徴を紹介していきます。
また、現在准看護師の資格を持ち、実務経験が7年以上の方は、通信で看護師の資格を取得することも可能です。
【大学への編入を考えているなら】看護短期大学
看護短期大学は、専門学校と同様に3年で看護師国家試験の受験が可能であり、卒業すると「準学士」の称号が得られることが特徴です。
また、取得した単位を保持したまま、併設している他の4年生大学や学部に進学することもできます 。
そのため、大学への編入に迷っている方におすすめの学校となっています。
学費は、私立か公立かで大きく異なりますが、3年間で私立の場合は約400万円、公立の場合は約250万円 が目安です。
【看護以外の教育も受けたいなら】4年制大学
4年制大学では、専門学校や短期大学と比較して、看護師資格取得に時間がかかってしまいます。
一方で、看護系の授業だけではなく、一般教養も学ぶ機会があることが メリットです。
また、2020年度の病院看護実態調査で新卒1年目の3年課程卒と大卒の看護師の給料を比較したところ、3年課程卒の平均月給は202,289円、大卒は208,918円となり、大卒の看護師の方がやや給料が高い傾向 にあります。
主婦が看護師になるメリット
主婦が看護師として働くことで、今まで以上に自分に合った働き方を選択できたり、収入を安定させられるなどのメリットがあります。
自分に合った働き方を選択できる
看護師の就業先は、病院以外にもクリニックや高齢者施設、訪問看護ステーション、保育所、企業などさまざまな施設があります。
就業先によって、日勤と夜勤を含んだシフト制の勤務や日勤のみの勤務など、勤務形態も異なります。
自分の生活やライフスタイルに合った働き方を選択して、働くことができるでしょう。
また、家庭の事情で転勤が必要な場合でも、どの地域にも医療機関は存在しているため、比較的容易に転職が可能です。
収入が安定する
厚生労働省の調査では、2021年の看護師の平均年収は約498万円 とされています。
国税庁によると女性の平均給与は280万円ほどとなっており、 看護師の平均年収は、他職種の平均年収よりも高い傾向であることがわかります。
主婦が看護師となって働くことで、より安定した収入を得ることができるといえるでしょう。
看護師になる前に確認すべきポイント
主婦が看護師になるためには、今までの家事や育児などに加えて、一定の学習時間を確保しなければならず、日々の生活のなかで調整が必要です。
また、生活費だけではなく学費を用意することも求められ、余裕を持って準備することが大切です。
主婦から看護師をめざす前に、確認しておくべきポイントを紹介します。
ご家族のサポートを受けられるか?
看護師資格取得には、3年間の学生期間を通して3,000時間もの学習や臨地実習 をこなさなくてはいけません。
これに加えて、学校から出た課題やテストの準備で精一杯になってしまうこともあるでしょう。
家事や育児などの家庭との両立が困難になってしまう ことも考えられます。
そのようなときのために、身近な親戚や夫などご家族のサポートを受けることができるのか、確認しておく必要があります。
学費の準備はできるか?
看護学校では、基本的に授業や実習は昼間に1日かけて行われるため、在学中に正社員として働くことは困難です。
現在、正社員として働いている方であっても、一度仕事を辞める必要があるでしょう。
看護学校入学前に生活費も含めた一定の貯蓄があることを確認し、必要な学費は確実に準備しておくようにしましょう。
また、現時点で学費の用意が難しい場合は、奨学金制度 を調べ、自身が対象となるかどうかを確認しておきましょう。
看護師として働く覚悟があるか?
看護師は患者さんと向き合いその命を預かるため、ミスが許されない仕事であり相応の責任がともないます。
また、勤務先によっては夜勤が発生したり、勤務が不規則になったり、残業が発生してしまう場合もあります。
特に夜勤は2交代制と3交代制がありますが、日中よりも少ない看護師で業務を行う病院もあり、業務過多に陥ったり、睡眠不足になってしまう方もいるのです。
看護師資格をめざす前には、取得後に看護師として働き続けることができるのか、自身が看護師に向いているのか、今一度考えてみましょう。
自分が看護師に向いているかわからない場合は、こちらの記事を参考にしてください。
主婦・社会人も看護師になる方法があるのでめざしてみよう
医療業界で働いた経験のない社会人や主婦であっても、看護学校に通い、看護師国家試験を突破することで、看護師として活躍することが可能です。
看護師として新しい1歩を踏み出すことで、就職先の選択肢が広がったり、安定した収入が得られたり、目の前の患者さんを助けることでやりがいを感じることができるなど、メリットがたくさんあります。
もちろん、家事・育児との両立や学費の準備、仕事にともなう責任など、困難もあります。
しかし、さまざまな人のサポートや理解を得られれば、決して乗り越えられないものではないでしょう。
ぜひ看護師として働くことをめざしてみましょう。