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作業療法士の仕事は、身体や精神に障害を持つ人が日常生活や社会生活に復帰するために、必要な動作の回復をサポートすることです。
実は、作業療法士は民間の病院や介護施設だけではなく、公務員として病院や保健所などに勤めることができます。
この記事では、作業療法士が公務員として働く場合の仕事内容や給料、メリット・デメリットを紹介します。
また、公務員の作業療法士になる方法にも着目していくので、公務員として働きたい方はぜひ参考にしてください。
目次
公務員の作業療法士の仕事内容
ここでは、作業療法士が公務員として働ける職場のうち、代表的なものを5つ紹介します。
行政機関
公務員ならではの職場が行政機関です。
具体的には、保健所や、市役所や町役場の介護福祉課・障害福祉課などです。
これらの施設は、いずれも地域の公衆衛生や福祉の拠点となります。
行政機関の作業療法士の仕事内容は、大きく分けて以下の3つです。
- 高齢者や障がい者、ご家族からの健康に関する相談
- 障害福祉サービスの手続きなど個人支援や集団支援の業務
- 地域住民のニーズに合わせた事業の立案
相談や行政の手続き支援などの個別支援から、地域住民のための事業立案・集団支援など、その活動は多岐に渡ります。
地域住民と医療施設の間に立ち、地域のパイプ役としての役割を果たすことも多いでしょう。
公立病院
公立病院とは、県立病院や市立病院など、地方自治体が運営する病院を指します。
公立病院で働く作業療法士の主な仕事内容としては、患者さんの日常生活におけるリハビリテーションで、基本的には民間の病院に勤めている場合とあまり変わりません。
ただし公立病院は、民間病院では限界のある高度・先進医療を担っていることがあり、急性、亜急性期分野のリハビリテーションを提供している傾向にあります。
診療科も多く、幅広い分野の疾患に携われる点が魅力であり、多くの経験を積みたい方におすすめの職場です。
また、健康教室やリハビリ教室といった地域の運動普及促進事業に関する取り組みを行うこともあります。
国立病院
国立病院とは、厚生労働省が管轄する独立行政法人国立病院機構によって運営されている病院を指します。
国立病院で勤務する作業療法士は、重要心身障害児病棟、結核病棟など、民間病院では経験しにくいリハビリテーションにも携わります。
また、高度急性期から回復期、慢性期など、さまざまな疾患を持っている患者さんを担当するため、より高いスキルが求められる職場です。
職業訓練施設
公共職業安定所(ハローワーク)や地域障害者職業センターなどの職業訓練施設にも、作業療法士の活躍の場があります。
身体障害や知的障害、高次脳機能障害を持った方に対して、職業指導や求人の紹介をするのが、職業訓練施設で働く作業療法士の役割です。
また、障害を持った従業員の雇用主に対しても就労継続の支援をしていきます。
特別支援学校
公立の特別支援学校も、作業療法士が公務員として働くことのできる職場です。
一人ひとりの障害や個性に応じて、遊びや食事、コミュニケーションなどのサポートが主な仕事になります。
年齢の違う子どもが同じ学級に在籍している場合があり、細やかな配慮が求められます。
そのため、教育施設の作業療法士は、障害を持つ子どもの大きな味方となれる存在です。
作業療法士の仕事内容を詳しく知りたい方は、次の記事を読んでみてください。
作業療法士が公務員として働くメリット・デメリット
ここからは、作業療法士が公務員として働くメリットとデメリットを紹介します。
ぜひ公務員をめざす参考にしてください。
メリット
公務員の作業療法士として働くメリットは以下の4つがあります。
- 雇用・労働環境が安定している
- 福利厚生が手厚い
- キャリアアップしやすい
- 年収が高い
それぞれ説明していきます。
労働環境が安定している
公務員は、民間企業と比べて雇用が安定しています。
雇用の安定性から社会的信用が高く、住宅ローンやクレジットカードなどの審査にも通りやすくなります。
年功序列で給与が上がり、地方公務員の場合であれば他の自治体への異動もないため、家の購入や子育てなど人生設計を立てやすい点が特徴です。
また、休日は基本的にカレンダー通りに取ることができ、休暇制度も利用しやすいため、結婚や出産、子育てなどによってライフステージが変化しても、ワークライフバランスの実現が容易です。
福利厚生が手厚い
福利厚生の手厚さも、公務員になるメリットの一つです。
前述したように、育児休暇をはじめとする各種休暇の取りやすさは、民間企業との大きな違いでしょう。
また、福利厚生の一部である共済組合では、健康保険や年金の管理、レジャー施設や宿泊施設の割引など、さまざまな特典を受けることが可能です。
定年まで働ける
公務員は一度採用されたら基本的に解雇されない待遇になっており、定年まで長期的に働けるのがメリットです。
民間企業は景気の状況や経営悪化による倒産などで、人員削減や解雇の不安にさらされることがあります。
しかし公務員ならばそのようなことは関係なく、安定して働けます。
公務員は、新しい職場に転職してキャリアアップなどをめざすのではなく、長く安定的に働くことを求める人に向いているといえるでしょう。
デメリット
公務員の作業療法士として働くデメリットには、以下の3つがあります。
- 転勤の可能性がある
- 副業はできない
- 想定以上の評価は受けられない
それぞれを説明していきます。
転勤の可能性がある
民間の病院やクリニックで働く場合、拠点が一つの施設であれば基本的に転勤はありません。
しかし、公務員として働く場合は転勤の可能性があります。
都道府県や市町村などには管轄地域内での異動があるため、辞令が出たら異動しなければならず、拒否することはできません。
住んでいる地域から遠い場所に通ったり、ときには引越したりしなければならないケースも考えられます。
副業はできない
公務員の副業は、法律で禁止されています。
公務員は副業でいかなる報酬も受けてはならず、社会福祉サービスである公益的活動のみが許可されているのです。
そのため、収入に満足できないとしても、副業により多く稼ぎを得ることは難しいでしょう。
副業が発覚すると免職や減給になることもあるなど、大きなデメリットといえます。
また、民間では副業が認められている職場もあるため、同じように働いているのに副業ができないことをもどかしく感じられることもあるでしょう。
想定以上の評価は受けられない
公務員は年功序列を採用しており、昇給ペースが決まっているのが特徴です。
そのため、本人に経験やスキルがあったり、資格を取得したりしても、給与にはあまり反映されません。
民間に比べて定年前に退職する人も少ないため、勤務年数が増えるのを待つのが基本です。
また、全員が役職につけるとは限らず、役職で昇給できるかどうかはわかりません。
自分でどんどんスキルアップしてキャリアを積み、実力を評価されたい人にとっては、想定以上の評価が得られないことがデメリットといえるでしょう。
公務員の作業療法士の給料
以下の表は、公務員である作業療法士の給料の詳細です。
区分 | 平均給与月額 | 平均給料月額 | 諸手当月額 |
全地方公共団体平均 | 404,765 | 315,159 | 89,606 |
都道府県 | 407,064 | 319,151 | 87,913 |
指定都市 | 439,873 | 319,668 | 120,205 |
市 | 402,039 | 315,844 | 86,195 |
町村 | 361,255 | 302,172 | 59,083 |
特別区 | 420,681 | 297,057 | 123,624 |
参考:<第8表> 団体区分別平均給与月額(一般行政職・R5)
区分によっても給料に差があることがわかるでしょう。
諸手当月額とは、扶養手当や地域手当、住居手当、特殊勤務手当、時間外勤務手当など、月ごとに支払われるものを指します。
全地方公共団体の平均給与月額に比べると、都道府県や指定年、特別区が高い傾向にあります。
市町村のなかでも特に町村は低い結果になりました。
詳しい内容は、以下のページでご覧ください。
令和5年地方公務員給与実態調査結果等の概要/総務省
作業療法士の公務員になるには?
作業療法士として公務員になるには、どうしたら良いのでしょうか。
ここからは、受験資格や試験内容について解説します。
受験資格
作業療法士が公務員として働くには、公務員試験を受けて合格する必要があります。
ただし、公務員試験は誰でも受けられるものではなく、受験資格としての要件を満たさなければなりません。
要件は以下のとおりです。
- 作業療法士の免許を持っている、または卒業見込み・免許取得見込みである
また、地方公務員の場合は、自治体によっては年齢制限や実務経験、健康状態など、それぞれの条件を掲げていることもあります。
受けたい地域がある場合は、自分が受験資格を持っているのかどうかを把握しておくことが大切です。
試験内容
試験は基本的に一次考査と二次考査が行われます。
一次考査は書類審査と筆記試験です。
具体的には以下のような内容を問われます。
- 識見
- 思考力
- 表現力
- 作業療法士の素養
一次考査に合格すると二次考査になります。
二次考査では面接や口述試験、適性検査が行われるため、面接対策を行っておきましょう。
また、応募人数によってはプレゼンなどの課題が求められることもあります。
地方公務員の場合は事業所ごとに試験の方法が異なり、書類選考と面接のみのところもあれば、小論文や学科試験を行うところもあります。
地方公務員試験をめざす場合は、各事業所のホームページを確認することが大切です。
しっかりと試験内容を把握し、事前準備を念入りに行いましょう。
作業療法士の公務員になるなら求人募集を定期的にチェックしよう
公務員の作業療法士の概要や仕事内容、メリットを紹介してきました。
作業療法士は民間企業だけでなく、行政機関や公立・国立病院などで活躍する方も多くいます。
公務員のメリットは、雇用・労働環境の安定や、福利厚生の充実です。
公務員になるには公務員試験に合格する必要があり簡単な道ではありませんが、作業療法士の就職先を探している方、今後の転職を踏まえて間口を拡大したいと考えている方は、選択肢の一つに加えてみるのも良いでしょう。