AIの発達によりさまざまな分野の仕事が取って代わられるという話を、最近はよく聞きます。
「作業療法士の仕事もAIの台頭でなくなってしまうんじゃないか?」
このような不安を持っている方のために、作業療法士の将来性についてお話していきます。
将来、作業療法士として働くうえで意識するポイントも解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
作業療法士は将来性のある仕事
作業療法士は、高齢化の進む日本において、需要の高まる職種の一つです。
理由は作業療法士の仕事内容にあります。
作業療法士はリハビリテーション医療において、社会に復帰するための日常動作の訓練や精神・心理面の回復を支援します。
作業療法士の働く場所は、病院や高齢者施設、障がい者福祉施設、児童養護施設など幅広く、特に高齢化の流れによって高齢者施設でのニーズが高まっています。
そのため、求人件数も多く、将来性も高い職業です。
作業療法士に将来性が望める理由は以下の3つです。
- 高齢者の増加
- 作業療法士は人手不足
- 機械で代行できない業務が多い
順番に説明していきます。
高齢者人口の増加
総務省統計局によると、総人口に占める高齢者の割合は年々増えており、2021年は29.1%となっています。
4人に1人以上が65歳以上の高齢者です。
加齢により日常生活動作に問題を抱える高齢者が増え、自宅での生活が困難となる方も出てきます。
そのため、介護施設やリハビリテーションセンター、訪問リハビリテーション分野において作業療法士の求人が増えると予想されます。
作業療法士として、高齢者の生活評価と回復支援のニーズが高まっているといえるのです。
作業療法士は人手不足
2019年度の日本作業療法士協会会員統計資料によると、作業療法士が働いている施設ごとの人数と割合は以下のとおりです。
施設名称 | 人数(人) | 割合(%) |
医療施設 | 36,693 | 73.2 |
介護保険施設 | 6,147 | 12.3 |
老人福祉施設 | 2,274 | 4.5 |
児童福祉施設 | 1,241 | 2.5 |
障がい者支援施設 | 551 | 1.1 |
上表を見ると、医療施設に人数が偏っているのがわかります。
児童福祉施設や障がい者支援施設で働く作業療法士は少なく、まだまだ人手不足なのが現状です。
超高齢化を考えれば、介護保険施設や老人福祉施設での需要が高まることも考えられます。
今後も作業療法士が働き口に困ることはないでしょう。
機械で代行できない業務が多い
作業療法士の仕事は、対象者が社会復帰するための日常生活動作の回復や精神・心理面での回復支援です。
日常動作に必要な機能がどの程度不足しているのか、精神・心理面がどのくらいダメージを受けているのかといった判断は機械にはできません。
訓練メニューの提案や事務作業、訓練結果からのデータ分析は機械にもできるかもしれません。
しかし、訓練の補助や患者さんとのやりとり、精神面のケアは機械には難しいため、作業療法士の業務がAIやロボットに取られることはなく、今後も需要があり続けるといえます。
作業療法士の仕事内容を詳しく知りたい方は、次の記事を読んでみてください。
これからも作業療法士として活躍するために大切なこと
今後も作業療法士の需要があるとわかっていただけたと思います。
しかし、作業療法士は毎年4,500人以上の合格者が出ており、年々増えています。
そのため、自分が就きたい職場で働くためには、作業療法士としてスキルアップしなければなりません。
重宝される作業療法士になるためには、以下の3点に気を付けましょう。
- コミュニケーションスキルを高める
- 勉強会やセミナーに参加する
- スキルアップにつながる資格を取る
順番に説明していきます。
コミュニケーションスキルを高める
作業療法士の仕事は常に人と関わります。
高齢となり訓練が必要になった方や、手術でリハビリが必要になった方などです。
高齢者や患者さんはリハビリを毎日のように行う必要があり、ときにはリハビリを嫌がったり、気持ちが沈んでいることもあるでしょう。
そんなとき、作業療法士として上手に患者さんをリハビリへと促すことが大事です。
コミュニケーションスキルが高ければ、患者さんに合わせた言い回しができるため、うまくリハビリに導けます。
しかし、コミュニケーションスキルはすぐに簡単に鍛えることはできません。
普段の生活や今までの人生で、どれだけ人と会話してきたかで変わるものです。
これから作業療法士をめざす方は、コミュニケーションスキルを鍛えるため、積極的に会話できる場に身を置くと良いでしょう。
勉強会やセミナーに参加する
勉強会やセミナーに参加することで、日々進歩する医学の知識をアップデートできます。
医学の常識は常に変化しており、それはリハビリの分野においても同じです。
勉強会やセミナーに参加し、自分の中の情報を新しく入れ替えることで、勉強していない作業療法士と差をつけることができます。
スキルアップにつながる資格を取る
作業療法士としての専門性を証明するためには、資格を取ることも有効です。
資格試験を受けて合格することで、一定の知識と技術が身についていると認められるからです。
作業療法士が取得できる資格は複数あり、どの資格を受験するかは自分のキャリアに合わせて選択できます。
認定作業療法士
認定作業療法士は、日本作業療法士協会が臨床実践・教育・研究および管理運営に関して、一定水準以上の能力があると認めた作業療法士に与えられる資格です。
認定作業療法士を取得するには、特定の講座や研修を受講し、事例報告を行う必要があります。
また、更新についても5年毎に4つの条件を満たさなければなりません。
認定作業療法士の資格を持っていることで、作業療法士として一定の実力があることを証明できます。
専門作業療法士
専門作業療法士は認定作業療法士の上位資格です。
4実践と呼ばれる研修実践・臨床実践・研究実践・教育の分野で単位を取得し、試験に合格することで認められます。
2022年9月1日時点で専門作業療法士は全国に117名しかおらず、難易度の高い資格だとわかります。
専門作業療法士の資格を持っていれば、自分のめざすキャリアに大きく近づけるでしょう。
呼吸療法認定士
呼吸療法認定士の正式名称は3学会合同呼吸療法認定士で、呼吸療法について一定の知識を有していることを証明する資格です。
作業療法士は、酸素投与中の高齢者や呼吸器装着中の患者さんのリハビリも行います。
高齢化にともない、呼吸状態にリスクのある高齢者が増えることも予想されるため、取得する価値の高い資格です。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士は、日本認知症ケア学会が主催している民間資格です。
介護士向けの資格と思われるかもしれませんが、作業療法士は認知症を患っている高齢者のリハビリを行う機会も多くあります。
そのため、認知症について知っておくことは無駄ではなく、作業療法士としての実力向上に役立ちます。
心臓リハビリテーション指導士
心筋梗塞や心臓手術後のリハビリ、再発予防として行うのが心臓リハビリテーションです。
作業療法士が心疾患後の日常生活動作の訓練や生活指導を行う機会も多く、心臓リハビリテーション指導士は取得しておくと有利な資格です。
心臓リハビリテーション指導士試験の合格率は低く、直近の第20回では48.4%と半分以下になっています。
合格するためには十分な勉強時間が必要ですが、その分他の作業療法士との差別化に役立ちます。
栄養サポートチーム(NST)専門療法士
作業療法士は、日常生活動作回復の一環で食事の支援も行います。
その際、栄養療法についての知識があれば、食べることの大切さを具体的に説明でき、説得力ある内容が話せます。
そうした知識と技術を持つことを証明する資格が、栄養サポートチーム(NST)専門療法士です。
食事介助に携わる機会の多い作業療法士におすすめです。
福祉住環境コーディネーター
福祉住環境コーディネーターは、高齢者や障がい者が快適に暮らせるよう、住環境の改善や福祉用具の活用を提案します。
作業療法士は担当している方の生活動作レベルを詳細に把握しており、アドバイザーとして適任です。
福祉住環境コーディネターの資格を取得することで、作業療法士として仕事の幅を広げられます。
作業療法士は今後も将来性が期待できる仕事
作業療法士は、今後超高齢化が予想される日本において、需要が高まる仕事です。
現状、医療施設においては人手が充足していますが、以下の施設では人手不足の傾向があります。
- 介護保険施設
- 老人福祉施設
- 児童福祉施設
- 障がい者支援施設
今後も高齢化が進む見通しですので、作業療法士の将来は明るいといえます。
作業療法士として働き始めた後も自己研鑽を怠らず、自分の価値を高めていきましょう。