
薬剤師の世界では、より専門的な知識や技能を持つ薬剤師を認定する制度があります。
そのなかでも特に注目されている2つの資格が、「認定薬剤師」と「専門薬剤師」です。
これらの資格は、薬剤師としての能力や専門性を証明するものですが、その違いや特徴についてはあまり知られていません。
本記事では、認定薬剤師と専門薬剤師の違い、それぞれの特徴、そして資格の種類について詳しく解説します。
キャリアアップを考えている薬剤師や、より専門的な薬剤師のケアを受けたい患者さんにとって、有益な情報となるでしょう。
目次
認定薬剤師と専門薬剤師の違いは?
薬剤師の専門性を明らかにする資格として、「認定薬剤師」と「専門薬剤師」という2つがあります。
どちらも薬剤師としての専門性や能力を示すものですが、その内容や取得方法は違います。
ここでは、認定薬剤師と専門薬剤師それぞれの違いと種類を詳しく紹介します。
認定薬剤師とは
認定薬剤師は、薬剤師としての基本的な知識や技能に加えて、より高い専門性を持っていると認定されていることを示す資格です。
真に人と社会に役立つことを目標として設置されており、薬剤師が自己研鑽を続けていることを客観的に示す指標となっています。
認定薬剤師の資格が取得できる制度を認証する組織として、薬剤師認定制度認証機構(CPC)があります。
しかし、日本医療薬学会や日本病院薬剤師会、日本老年薬学会など、多くの学会でも独自の認定薬剤師制度が設けられています。
これらの制度は、それぞれの分野で必要とされる知識や技能を持つ薬剤師を認定し、医療の質を向上させることを目的として設置されています。
専門薬剤師とは
専門薬剤師は、認定薬剤師よりもさらに高度な専門性を持つ薬剤師です。
医療の進歩にともない、薬物療法も細分化され高度化してきました。
そのため、薬剤師にも分野ごとに専門的なアプローチが必要になり、特に「がん」「感染症」「精神疾患」などの領域では、高度な専門知識を持つ薬剤師の需要が高まっています。
専門薬剤師は、これらの特定領域において深い知識と豊富な経験を持ち、より複雑な薬物療法に対応できる能力を有しています。
彼らは、医師や他の医療スタッフと密接に連携しながら、患者さんに最適な薬物療法を提供する重要な役割を要求されます。
専門薬剤師は認定薬剤師の上位資格
専門薬剤師は、一般的に認定薬剤師の上位資格と位置付けられます。
多くの場合、薬剤師のキャリアパスは次のような流れになります。
- 研修認定薬剤師として基礎的な研修を積む
- 特定の分野で認定薬剤師となる
- その分野の専門薬剤師をめざす
専門薬剤師の資格を得るには、厳しい条件が課されることが多く、認定試験の合格が必要になる場合もあります。
これは、専門薬剤師が高度な医療の担い手として期待され、求められる知識や技能のレベルが非常に高いためです。
薬剤師は生涯にわたって自己研鑽を続けることが求められる職業です。
認定薬剤師や専門薬剤師の資格は努力の成果を示す重要な指標であり、高度な医療を支えています。
認定薬剤師と専門薬剤師の認定条件は?
認定薬剤師と専門薬剤師の資格を取得するためには、それぞれ異なる条件を満たす必要があります。
ここでは、各資格の具体的な認定条件や取得プロセスについて詳しく解説します。
薬剤師としてのキャリアアップを考えている方や、資格取得をめざしている方にとって、重要な情報となるでしょう。
認定薬剤師の資格を取るには?
認定薬剤師の資格を取得するための条件は、認定制度によって異なります。
ここでは、最も一般的な「研修認定薬剤師」の資格取得方法を例に挙げてみましょう。
この資格は、現在、薬剤師の約3分の1が取得しており、基本的な認定薬剤師資格として広く認知されています。
研修認定薬剤師になるためには、4年間で40単位の研修受講が必要です。
これらの研修は、薬剤師としての基本的な知識や技能を更新し、最新の医療情報を学ぶ機会となります。
研修の内容は多岐にわたり、薬物療法や疾病の最新知識、医療安全、薬事関連法規などが含まれます。
専門薬剤師の資格を取るには
専門薬剤師の資格を取得するプロセスは、認定薬剤師よりも複雑で時間がかかります。
一般的な流れは以下のとおりです。
まず、薬学部6年制を修了し、薬剤師国家試験に合格することで薬剤師の資格を得ます。
その後、実務経験を積みながら必要な単位を取得して「研修認定薬剤師」になります。日本病院薬剤師会の各専門薬剤師になるには、まず「認定薬剤師」であることが必要です。
次に、めざす専門分野での実務経験を積みながら、その分野に特化した講習を受講します。
定められた条件を満たせば、各分野の認定薬剤師と認められます。
さらに、より専門性の高い実務経験を積み、高度な講習や研修を受講します。専門の認定試験に合格すれば「領域別専門薬剤師」の資格が取得できます。
その後、学会発表や論文作成などの研究活動が認められると、「領域別高度専門(指導)薬剤師」と呼ばれる最も高度な専門資格を取得できます。
このように、専門薬剤師になるまでにも資格を取得してからも、長期的な学習と経験の積み重ねが必要です。
分野別・主な認定薬剤師と専門薬剤師の種類一覧
認定薬剤師と専門薬剤師の資格は、さまざまな分野に分かれています。
ここでは、多くの薬剤師が取得している研修認定薬剤師について説明し、その後、各専門領域の認定薬剤師と専門薬剤師の資格を一覧で示します。
いずれも、薬剤師が自身の専門性を高め、特定の分野でより質の高い医療サービスを提供するために重要な役割を果たしている資格です。
研修認定薬剤師
研修認定薬剤師は、認定薬剤師のなかで最も取得者数が多い資格です。
現在、11万人を超える薬剤師が保有しており、薬剤師全体の約3分の1を占めています。
研修認定薬剤師を養成する制度は、公益社団法人薬剤師認定制度認証機構(CPC)によって認定されており、多くの専門的な薬剤師資格の基礎となっています。
より高度な専門資格をめざす場合、まずはこの研修認定薬剤師の資格を取得することが一般的です。
研修認定薬剤師の資格を取得することで、最新の医療情報や薬学的知識を継続的に学び、自己研鑽に努めている薬剤師であることを示すことができます。
また、患者さんや他の医療従事者からの信頼を得るうえでも重要な指標です。
専門領域別の認定薬剤師と専門薬剤師の資格一覧
専門領域別の認定薬剤師と専門薬剤師の資格は、各分野の専門性を示しています。
以下の表は、日本病院薬剤師会が認定する主な専門領域とそれぞれの資格、認定組織をまとめたものです。
認定領域 | 領域別薬剤師等 | 専門薬剤師 | 認定組織 |
がん | がん薬物療法認定薬剤師 | がん薬物療法専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
感染症 | 感染制御認定薬剤師 | 感染制御専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
精神科 | 精神科薬物療法認定薬剤師 | 精神科専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
妊婦・授乳婦薬物療法 | 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師 | 妊婦・授乳婦専門薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
薬物療法 | - | 薬物療法専門薬剤師 | 日本医療薬学会 |
医療薬学一般 | 日病薬病院薬学認定薬剤師 | 地域薬学ケア専門薬剤師 | 日本医療薬学会/ 日本病院薬剤師会 |
救急 | 救急認定薬剤師 | 救急専門薬剤師 | 日本臨床救急医学会 |
老年薬学 | 老年薬学認定薬剤師 | - | 日本老年薬学会 |
腎臓病薬物療法 | 腎臓病薬物療法認定薬剤師 | 腎臓病薬物療法専門薬剤師 | 日本腎臓病薬物療法学会 |
これらの資格は、それぞれの認定組織によって設けられており、資格ごとに異なる要件や認定プロセスがあります。
具体的な取得条件や認定基準については、各認定組織に直接確認してください。
また、ここに挙げた以外にも、さまざまな専門領域で認定薬剤師や専門薬剤師の資格が設けられています。
自身のキャリアプランや興味のある分野に応じて、適切な資格の取得をめざすことができます。
認定薬剤師と専門薬剤師は自己研鑽を積んだ証明となる資格
認定薬剤師と専門薬剤師の資格は、薬剤師としての継続的な学習と成長を示す重要な指標です。
どちらの資格も、薬剤師が継続的に自己研鑽に励んでいることの証といえるでしょう。
患者さんにとっては、これらの資格を持つ薬剤師から、より信頼性の高い薬学的ケアを受けられるという利点があります。
また、医療チームのなかでも、認定薬剤師や専門薬剤師の存在は、チーム医療の質を高める重要な要素です。
薬剤師の皆さんには、自身のキャリアアップや専門性の向上のために、これらの資格取得を積極的に検討することをおすすめします。
それは、より良い医療サービスの提供につながるだけでなく、薬剤師としての自己実現にも大きく貢献するでしょう。