薬剤師は30代からでもめざすことができるのでしょうか。
薬剤師になるためには、最短でも6年間の専門教育を受けたうえで、国家資格試験に合格しなければなりません。
本記事では、資格取得までにかかる時間や費用について触れたうえで、30代から薬剤師をめざす人が理解しておくべきことや、準備するべきことなどを解説していきます。
目次
30代からでも薬剤師になれる
薬剤師は国家資格で、受験年齢に制限はありません。
そのため、30代から薬剤師をめざすことは制度上可能です。
では、30代から薬剤師をめざした人が資格を取得後、就職先を見つけることはできるのでしょうか。
厚生労働省の「薬局薬剤師に関する基礎資料」によると、現役の薬剤師の平均年齢が46.4歳でした。
また、31万人を超える薬剤師のうち、半数の約15万人が30代〜40代となっています。
したがって、30代から薬剤師をめざしても、需要はあると考えて良いでしょう。
ただし、公務員薬剤師をめざす場合、自治体によって年齢制限を設けているケースがあるため、採用試験そのものを受けられない可能性があります。
希望する自治体の募集要項をあらかじめ確認しておきましょう。
30代から薬剤師をめざす理由
30代から薬剤師をめざす理由としては、以下のようなものがあります。
- キャリアチェンジの最後のチャンスだから
- 収入を増やしたいから
- 自分に合った職場環境で働きたいから
あくまで一例ですが、それぞれ見ていきましょう。
キャリアチェンジの最後のチャンスだから
一般的に、転職の難易度は年齢が上がるにつれて高くなり、特に未経験の職種に転職する場合はその傾向が顕著です。
採用後のキャリア形成を考慮し、35歳をボーダーラインに設定している求人も多いため、「30代はキャリアチェンジの最後のチャンス」と考える人は少なくありません。
薬剤師の場合は、資格取得まで最短でも6年以上かかるため、30歳からめざして最短で資格を取得した場合でも36歳です。
前述のとおり30~40代でも一定の需要は見込めますが、高齢になるほど不利なことに変わりはないため、未経験・無資格から薬剤師をめざす場合は、できるだけ早い段階から行動したほうが良いでしょう。
収入を増やしたいから
収入UPを期待して、30代から薬剤師をめざす人もいます。
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、令和4年度の正規雇用労働者の平均年収は457.6万円でした。
一方、厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均年収は583.4万円で、日本の平均年収より100万円以上高い水準です。
そのため、現職の収入額に不安や不満を持つ30代の人が、収入アップを目的に、薬剤師をめざすケースもあります。
自分に合った職場環境で働きたいから
職場環境、働きかた、人間関係を変えるため、思い切って薬剤師をめざす人もいます。
薬剤師は、医療機関や調剤薬局・ドラッグストアなど、就職先の選択肢が豊富です。
加えて、時短勤務やパート・アルバイトの求人もあり、自分のライフスタイルに合わせた働き方を選べます。
国家資格が必要な職種であることから、賃金も高めなので、収入・労働環境・ライフスタイルといった面で、希望を満たす求人に出会える可能性は高いでしょう。
30代から薬剤師をめざすときに理解しておくこと
30代から薬剤師をめざすことは可能ですが、簡単ではありません。
それでもめざすのであれば、以下のような点に注意しておく必要があります。
- 最短でも6年かかる
- 働きながら資格を取得するのは難しい
- 事前に費用の確保が必要
- 転職したらキャリアは一からスタートになる
順番に見ていきましょう。
最短でも6年かかる
薬剤師の資格を取得するためには、薬剤師国家試験に合格する必要があります。
そして、薬剤師国家試験を受験するためには、薬科大学もしくは薬学部で、6年間のカリキュラムを修了しなければなりません。
つまり、薬剤師をめざす場合、受験資格取得だけでも最短で6年は必要です。
また、薬剤師の国家試験は年1回しか行われないため、もし合格できなければ次年度の試験を待たなければなりません。
30代で薬剤師をめざす場合、資格取得までの時間をよく考慮しましょう。
独学で薬剤師をめざすケースの情報は、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひご参照ください。
働きながら資格を取得するのは難しい
薬剤師の国家試験は、6年制の薬科大学や薬学部の修了が受験資格です。
薬科大学や薬学部には通信制や夜間制はないため、日中学校に通わなければなりません。
そのため、働きながら資格取得をめざすのは困難といえるでしょう。
仮に職場の理解を得たとしても、毎日の通学や学習・実験・研究といった課題に時間がかかり、仕事と勉強の両立は現実的ではありません。
30代から薬剤師をめざすなら、現在の仕事を辞めたうえで大学に通うなど、大幅なライフスタイルの変更と、周囲の理解が不可欠です。
事前に費用の確保が必要
薬剤師をめざして大学に通う場合、学費・教材費・実習費など、さまざまな費用がかかります。
例えば、国立大学の薬学部であれば、入学費が28万2,000円、1年間の授業料は53万5,800円です。
留年することなく6年で卒業できても、授業料の合計は少なくとも約320万円となります。
修了するためには勉強をおろそかにはできないため、働きながら学費を稼ぐこともできません。
入学前に費用を確保し、入学後は勉強に専念できる環境を整えましょう。
薬剤師をめざす場合の学費の情報は、以下の記事でも詳しく解説しています。
ぜひご参照ください。
転職したらキャリアは一からスタートになる
30代から薬剤師をめざす場合、当然ですが資格を取得した段階では、薬剤師としてのキャリアがありません。
新卒と同じように、一からキャリアを積み重ねていく必要があります。
もし、29歳で薬科大学に入り、最短の6年間で資格取得・就職できたとしても、実際に働き出す年齢は35歳です。
自分より年下の薬剤師が上司になり、新卒と同じ給与額から始めるため、人間関係や収入面に不満を持つ可能性もあります。
30代から薬剤師をめざすときは、年齢=キャリアではないことを意識し、研修や勉強会へ積極的に参加して、薬剤師のスキル・キャリアを積む努力をしましょう。
30代から薬剤師をめざすために準備すべきこと
30代から薬剤師をめざすためには、次の準備が大切です。
- 薬剤師へ転職する理由を明確にする
- ライフプランを見直す
- 自分のスキルや経験をまとめておく
以下で詳しく解説します。
薬剤師へ転職する理由を明確にする
薬剤師をめざす前に、転職する理由を明確にしておきましょう。
転職したい理由が明確なら、資格取得へ向けた勉強にも力が入り、転職後も迷いにくくなります。
例えば「年収を上げたい」といった漠然とした理由だけで転職した場合、せっかく転職しても、やりがいを感じられなかったり、同程度の年収を得られる別の職種に目移りしてしまうかもしれません。
なぜ30代から薬剤師になりたいのか、その理由はそれまで積み重ねてきたキャリアを捨てるに値するものなのか、事前に明確にしておけば、資格取得後の転職活動も有利になり、転職後の後悔もしにくくなるでしょう。
ライフプランを見直す
30代から薬剤師をめざすのなら、キャリアプランだけではなく、ライフプラン全体を見直す必要があります。
30代は、結婚や出産、車や住宅の購入など、私生活における大きなイベントが多い年代です。
30代で薬剤師をめざす場合、これらのイベントにどのような影響を与えるのかも踏まえる必要があるでしょう。
自分のスキルや経験をまとめておく
30代から薬剤師をめざすのなら、それまでのキャリアで積み重ねてきたスキルや経験のうち、薬剤師になってからも活かせるものをまとめておくことが重要です。
過去に身につけたスキルのなかに、薬剤師の職場でも活かせるものがあれば、資格取得後の就職活動を円滑に進められるでしょう。
例えば、接客業を5年勤めていた経験がある人が、28歳で薬科大学へ入学し、最短で薬剤師の資格を取得後、調剤薬局の求人に応募したとします。
薬剤師のスキルはまだありませんが、接客業で身につけた対人スキルを持っているため、窓口業務で役立つ人材とアピールできるでしょう。
30代から薬剤師をめざすためのポイントを押さえよう
30代から薬剤師をめざすことは、可能ですが、簡単ではありません。
資格取得するまでに最短6年かかり、その期間は仕事との両立が困難で、なおかつ学費も用意する必要があります。
結婚や出産などのライフイベントにも、大きな影響を及ぼすかもしれません。
30代から薬剤師へのキャリアチェンジをめざすときは、キャリアプランだけではなくライフプラン全体を見渡し、緻密な計画を立てて資格取得をめざしましょう。