
薬剤師に興味があり資格取得をめざしたいものの、学校に通うのが難しく、できれば独学で取得したい、と考えている方もいるかもしれません。
今回は社会人や主婦が薬剤師になるための具体的な方法を解説します。
あわせて、薬剤師に近い仕事内容を担う職業も紹介するので、医薬品を扱う仕事に興味のある方は参考にしてください。
目次
薬剤師国家資格を独学で取得することはできない
結論から述べると、独学のみで薬剤師国家資格の取得はできません。
薬剤師国家試験の受験資格として、6年制の薬学部卒業が必要だからです。
6年制薬学部卒業が必須なため独学で薬剤師国家資格は取得できない
薬剤師になるためには、薬剤師国家資格を取得しなければなりません。
そのためには国家試験を受験し、合格する必要があります。
薬剤師国家試験を受験するためには大きく2つの要件があり、薬剤師法第15条によって以下のように定められています。
- 大学において、6年制薬学課程を修めて卒業した者
- 外国の薬学校を卒業しており、日本の6年制薬学を修めて卒業したものと同等以上の能力を有すると認定された者
つまり、これまで薬学に関わっていなかった社会人や主婦が薬剤師国家資格を受験するためには、6年制の薬学部に入学し、卒業する必要があります。
独学できるのは6年制薬学部学校に入学するところまで
薬剤師をめざすうえで、独学でできることは、薬学部のある大学への入学試験の突破までとなります。
しかし、薬学部への合格も高難易度です。
国公立の薬学部を受験するためには、大学入試センターによる大学入学共通テストを受ける必要があります。
国公立大学の薬学部に合格するためには偏差値が約60~75の学力が必要とされ、高難易度です。
私立大学では偏差値に大きな幅がありますが、いずれにしても高校時代に学んだ内容を勉強し直す必要があります。
大学受験をするとなると現役の高校生や、同じように社会人経験を経て薬学部に入学を希望する受験生全員がライバルとなります。
勉強に専念しやすい学生と比べて、仕事や家事に忙しい社会人・主婦は、勉強に充てられる時間がどうしても短くなってしまいます。
社会人・主婦が現役の受験生を押し退けて薬学部入学の切符を手にするのは、険しい道のりです。
社会人や主婦が薬剤師になる方法
社会人や主婦が薬剤師になるためには、薬剤師の国家資格を取得する必要があります。
先に解説したとおり、薬剤師国家試験の受験資格を得るためには、6年制の薬学部に入学しなければいけません。
6年制薬学部に入学|薬剤師国家試験の受験資格を得る
社会人・主婦から薬剤師になるためには、高校卒業後に進学する学生と同じように、6年制薬学部に入学する必要があります。
6年制の薬学部に入学し、必要な単位の取得や現場での実習などを通して、初めて国家試験を受ける資格が得られます。
無事薬学部に入学し、6年間に渡る薬学部の課程を修めても気は抜けません。
薬剤師国家試験の合格率は、決して高いものではないからです。
厚生労働省によると令和4年に実施された薬剤師国家試験の合格率は、68.02%でした。
ここ数年の薬剤師国家試験の合格率も、平均して60%台後半で推移しています。
薬学部に入るまでに限らず、入学してからも国家試験合格に向けて日々勉強をする必要があります。
薬学部に夜間大学はない|現在の生活を丸ごと変える必要がある
現在日本には、薬学部を有する大学が77校存在します(2022年9月時点)。
しかし、薬学部には夜間大学はなく、すべて昼間に通学する大学となります。
仕事や日中家事をしながらの通学は現実的には困難です。
そのため、社会人・主婦が薬剤師になるためには現在の生活を大きく変える必要があります。
薬学部は6年制となるため一般的な4年制大学よりも学費がかかります。
実習期間や国家試験への勉強期間などは、アルバイトができないケースも予想されるので、費用の面でも余裕を持って準備しておくことが望ましいです。
大学の勉強に集中するためにも薬剤師をめざす社会人・主婦は周囲からの理解・協力を得られる環境を作ると良いでしょう。
薬剤師に年齢制限はない|環境とやる気次第でなれる
薬剤師国家試験は、一部公務員試験などとは異なり、受験に際して年齢制限はありません。
何歳であっても資格を取ることができ、薬剤師として働きはじめることができます。
しかし、30代を超えて薬剤師をめざす場合は、資格取得時の年齢なども考慮しましょう。
30歳で薬学部に入学すると、スムーズに卒業し、国家試験に一発合格しても36歳です。
薬剤師としてスタートする時期は、どうしても遅くなってしまいます。
社会人経験のある方が薬剤師としてデビューしても、新卒で薬剤師となった方とスタートラインは同じです。
薬学部入学前の社会人時代より、一時的に給与が下がってしまう可能性もあります。
しかし、そのあとの頑張り次第では、給与の増加や安定した収入を得ることも望めます。
非常に困難な道のりですが、たとえ社会人・主婦であっても、費用や時間といった環境を整備し、やる気を持って6年間の勉学を修め、国家試験に合格しさえすれば、薬剤師になることは不可能ではないのです。
薬剤師と近い仕事内容の資格とは
ここまで薬剤師のなり方を説明してきました。
現実的にこれから薬剤師をめざすことが難しいという方に向けて、薬剤師に近い仕事内容で比較的取得しやすい資格を紹介していきます。
登録販売者
登録販売者は、かぜ薬や鎮痛剤などの一般用医薬品(第2類・第3類に限る)の販売を行うために必要な専門資格です。
また、薬剤師の管理・指導のもとであれば第1類の医薬品の販売が可能となります。
そのため、薬剤師がいない職場で医薬品を販売するためには、登録販売者が必要となります。
登録販売者の勤務先は、調剤薬局やドラッグストア、大手スーパーマーケット・ホームセンターなど多岐にわたります。
令和3年における登録販売者試験の合格率は、全国平均で49.3%です。
各都道府県によって合格率にやや差異が認められますが、試験の出題範囲に関しては全国共通です。
全国どこの県で受験をしても有利や不利に働くことはありません。
一般社団法人 日本薬業研修センターなどが主体となって、登録販売者をめざす方に向けての試験対策やセミナーなどを開催しており、eラーニングによるセミナーも用意されています。
社会人や主婦でも、普段の生活と並行して資格取得をめざすことが可能といえるでしょう。
調剤事務管理士
調剤事務管理士は、調剤薬局などで薬剤師をサポートする役割を担います。
具体的には、処方箋の受付や会計、月に1度ある保険請求に関する業務などを行います。
調剤事務管理士の主な活躍の場は、処方箋の取り扱いがある調剤薬局やドラッグストア、病院内の調剤薬局などになります。
調剤事務管理士は民間資格のため、受験に対しての制限は設けられていません。
社会人・主婦も独学での資格取得を目指せます。
試験自体も年に数回行われており、受験勉強を始めやすいことも魅力的です。
また、コロナ禍の影響で現在は自宅で受験できる在宅試験を開催しているため、忙しい方でも安心して受験できます。
独学で薬剤師にはなれないが環境とやる気さえ揃えばめざせる資格
薬剤師になるためには、6年制の薬学部を卒業し、国家試験に合格しなければなりません。
独学のみで薬剤師の資格取得はできません。
独学でできるのは、薬学部へ入学するまでの受験勉強に限られます。
薬学部に入学し、入学後も6年間学び続けるために必要な時間や費用など、環境面を整えることができれば薬剤師をめざすことも不可能ではありません。
茨の道にはなりますが、強い想い・やる気を備えている方は薬剤師をめざしてみましょう。