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在宅訪問薬剤管理指導とは?居宅療養管理指導との違いや給料をチェック

この記事の監修者
桜会ふみ子
【資格】
薬剤師

【プロフィール】
薬局を営む家庭に育ち1990年薬剤師資格取得。以降、医薬品メーカーで市販薬の製造・品質管理にたずさわる。2020年から薬剤師ライターに転身。福山大学出身。

在宅訪問薬剤管理指導は、高齢化社会における地域医療の一翼を担う大切な業務です。
薬剤師が患者さんの自宅を訪問し、適切な服薬指導や管理を行い、患者さんのQOL向上に貢献しています。

この記事では、在宅訪問薬剤管理指導の概要や対象患者、実施頻度、居宅療養管理指導との違いなどについて詳しく解説します。

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在宅訪問薬剤管理指導とは?

在宅訪問薬剤管理指導とは?

在宅訪問薬剤管理指導は、薬剤師が患者さんの自宅を訪問して行う服薬指導・管理サービスです。
2024年に診療報酬が改定され、今後も制度の見直しが予定されています。
これから高齢者が増加すると予想される日本において、ますます重要度を増している制度です。

対象となる患者は?

在宅訪問薬剤管理指導の主な対象は、通院が困難な患者さんです。
具体的には、寝たきりの高齢者や重度の障害を持つ方などが該当します。
また、認知症のおそれがあり服薬忘れのリスクのある方や、高齢の単身生活者で服薬の見守り者がいない場合にも対象となることがあります。

このサービスの目的は、患者さんの健康維持と安全な薬物療法の実施です。
薬剤師が定期的に訪問して、服薬状況の確認や副作用のチェック、薬の相互作用の管理など、きめ細やかなケアを提供します。

オンラインでの指導も可能

在宅訪問薬剤管理指導は、原則として薬局から16km以内に居住する患者さんが対象です。
しかし、最近ではオンラインでの服薬指導も可能になりました。
いくつかの条件を満たす必要がありますが、オンラインでは遠方に住む患者さんや、感染症が心配される場合でも、薬剤管理指導を実施できます。

高齢者向け施設によっては認定されない場合もある

在宅訪問薬剤管理指導の算定には、施設の種類によって制限があります。
医師や薬剤師を配置する必要のある施設においては、原則として算定できません。
これは、すでに専門的な医療・薬学的管理が行われているためです。

ただし、特別養護老人ホームでは、末期の悪性腫瘍の患者さんには算定が可能になります。

以下、施設ごとの算定可否についてのまとめです。

  • 介護老人保健施設養護老人ホーム:原則算定不可
  • 特別養護老人ホーム:原則算定不可(ただし、末期の悪性腫瘍患者は算定可能)
  • 養護老人ホーム:原則算定不可
  • ケアハウス:算定可能
  • 有料老人ホーム:算定可能
  • 適合高齢者専用賃貸住宅:算定可能
  • グループホーム:算定不可(ただし、居宅療養管理指導費(介護保険)で算定可能)

なおこれらは原則であり、各施設の特性や入居者の状況に応じて在宅訪問薬剤管理指導の必要性が判断されます。

実施頻度の上限は?

在宅訪問薬剤管理指導の実施頻度には上限が設けられており、原則、月4回までです。

また、より綿密な薬学的管理が必要とされる状況では、より頻繁な訪問が認められる場合もあります。
具体的には、末期の悪性腫瘍の患者さん、注射による麻薬の投与が必要な患者さん、中心静脈栄養法の対象患者さんについては、週2回かつ月8回まで訪問が可能です。

薬剤師は、医師や他の医療専門職と連携しながら、最適な訪問頻度を決定します。

居宅療養管理指導との違いは?

在宅訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導は、どちらも薬剤師が患者さんの自宅を訪問して行うサービスですが、適用される保険制度や対象者が異なります。
これらの違いを理解し適切にサービスを提供しましょう。

在宅訪問薬剤管理指導は医療保険

薬剤師の在宅訪問の際に適用可能な制度には、在宅訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導の2種類があります。
最大の違いは、適用される保険制度です。
在宅訪問薬剤管理指導は医療保険、居宅療養管理指導は介護保険で取り扱われます。

また、在宅訪問薬剤管理指導は、主に医療的ケアが必要な患者さんを対象としています。
一方、居宅療養管理指導は介護認定を受けた方が対象となり、薬剤師以外の専門職も実施可能です。

近年の算定回数をみると「在宅患者訪問薬剤管理指導料」はほぼ横ばいですが、「居宅療養管理指導」は年々増加しています。
これは、高齢化社会の進展にともない、介護サービスが増えてきていることが影響しているでしょう。

在宅訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導のどちらを適用するのかは介護認定の有無、必要とするケアの内容などによって決まります。

在宅訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導を比較

在宅訪問薬剤管理指導と居宅療養管理指導の主な違いを表にまとめると、以下のようになります。

項目 在宅訪問薬剤管理指導 居宅療養管理指導
適用保険 医療保険 介護保険
対象者 通院困難な患者さん 介護認定を受けた方
実施者 薬剤師のみ 薬剤師、医師、歯科医師、管理栄養士など
算定回数 月4回まで(特定条件下では月8回まで) 月4回まで
主な目的 服薬指導 介護予防、生活支援

なお、在宅訪問薬剤管理指導を実施する薬剤師と居宅療養管理指導を実施する薬剤師は、ともに「訪問薬剤師」と呼ばれることもあります。

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在宅訪問薬剤管理指導の仕事

在宅訪問薬剤管理指導には、患者さんの生活の質を向上させる重要な役割があります。
薬剤師は単に薬を届けるだけでなく、患者さんの生活環境や健康状態を総合的に評価し、最適な薬物療法をサポートしなければなりません。
以下では、在宅訪問薬剤管理指導の主な業務内容について、説明します。

計画の作成

在宅訪問薬剤管理指導の最初のステップは、計画の作成です。
薬剤師は、医師からの訪問指示を受けたあと、患者さんの状態や生活環境、服薬状況などを考慮して個別の計画を立てます。

この計画には、訪問の頻度や具体的な指導内容、モニタリングすべき項目などが含まれます。
これは、患者さんの治療目標や希望も考慮に入れ、より効果的な薬物療法を実現するための戦略です。
医師や他の医療専門職とも密接に連携し、多角的な視点から患者さんのニーズを考える必要があります。
適切な計画は、その後の訪問指導をより効果的なものとします。

在宅訪問・服薬状況のチェック・指導

作成した計画に基づいて、薬剤師は患者さんの自宅を訪問します。
訪問の主な目的は、服薬状況の管理と有害事象の発生チェックです。
薬剤師は、患者さんが処方された薬を正しく服用しているか確認し、必要に応じて服薬指導を行います。

また、薬の副作用や相互作用の発現についても細かいチェックが必要です。
患者さんの様子や話の内容から、薬剤療法が適切に行われているかどうかを確認します。

薬剤師は、場合によっては、訪問診療に同行することもあります。
医師の診察に立ち会えば、患者さんの状態についてより詳細な情報を得られ、今後の薬物療法に活かすことができるでしょう。

フィードバック・連携

訪問後の内容を医師や他の医療専門職にフィードバックします。
薬剤師は、在宅訪問で得た服薬状況や副作用の有無、患者さんの生活状況の変化など、薬物療法の実施状況についてチーム医療のメンバーに情報提供し、状況によっては処方の見直しを提案する必要もあります。

在宅訪問薬剤管理指導において、薬剤師は多職種と連携し、薬剤管理指導のすべての領域に関わる立場となります。

看護師と服薬管理の方法について相談したり、ケアマネジャーと薬物療法を検討して医師に提案するなど、多職種との連携は、包括的なケアを可能にするために欠かせません。

在宅訪問薬剤管理指導を行うために必要なこと

在宅訪問薬剤管理指導を行うために必要なこと

在宅訪問薬剤管理指導を実施するには、いくつかの準備と手続きが必要です。

以下では、在宅訪問薬剤管理指導を始める手順について説明します。

申請を実施し掲示を行う

在宅訪問薬剤管理指導を行うためには、まず地方厚生局に届け出る必要があります。
これは、薬局が在宅訪問薬剤管理指導を実施する資格があることを証明するものです。

申請に必要な書類は、各地方厚生局のホームページで確認できます。
在宅患者訪問薬剤管理指導に係る届出書や、薬剤師の資格証明書のコピーなどが必要です。

申請が受理されたら、薬局内に在宅訪問薬剤管理指導を実施している旨の掲示を行い、薬局利用者に在宅訪問薬剤管理指導を提供できることを知らせます。

掲示には、サービスの概要や料金、対象となる患者さんの条件などを明記しましょう。

利用者と契約を取り交わす

在宅訪問薬剤管理指導の開始前には、利用者(患者さんまたはそのご家族)と契約を取り交わします。
この契約は、サービスの内容や条件を明確にし、双方の権利と義務を定めるものです。

具体的には、訪問薬剤管理指導に係る説明書を作成し、利用者に説明します。
説明書には、サービスの目的、訪問頻度、料金、個人情報の取り扱いなどの記載が必要です。

契約書は2部作成し、薬局側と利用者で1通ずつ保管します。

医師より情報の提供を受ける

在宅訪問薬剤管理指導を適切に行うにあたり、患者さんの医療情報を正確に把握するために医師から診療情報提供書の発行を受けます。

診療情報提供書に記載されているのは、患者さんの病状、処方内容、注意すべき点などです。
この情報をもとに、薬剤師は適切な薬学的管理計画を立てます。

なお、診療情報提供書の書式は特に定められていませんが、都道府県の薬剤師会から、一般的な様式が提供されていることもあります。
必要な情報が記載されていれば、他の書式でも問題ありません。

薬学的管理指導計画の作成

医師からの情報提供をもとに患者さんの状態や生活環境、服薬状況などを考慮して薬学的管理指導計画を作成します。

計画に含まれるのは、以下の内容です。

  1. 患者さんの基本情報
  2. 服薬上の問題点
  3. 薬学的管理の目標
  4. 具体的な指導内容
  5. モニタリング項目

この計画は、月に1回の見直しを必要とします。
また、患者さんの状態変化や新たな問題点があった場合には、適宜修正を実施します。

薬物療法の地域連携

薬物療法は、外来・入院・在宅と、患者さんの状態に応じて切れ目なく提供される必要があります。
そのためには、薬剤師が他の医療従事者と緊密な情報共有をし、連携することが不可欠です。

提供する情報には、患者さんの服薬状況、副作用の有無、生活環境の変化などが含まれます。
また、処方に関する提案や、薬物療法の効果についての評価なども重要な情報です。

広く活用されている情報共有ツールであるお薬手帳に加えて、地域連携パスや電子版お薬手帳など、多様なツールを使用しながらより効果的な情報共有をめざします。

在宅訪問薬剤管理指導の給料は?

在宅訪問薬剤管理指導に携わる薬剤師の給料は、一般的な薬剤師の平均給与と大きく変わりませんが、やや高い傾向にあるようです。
これは、在宅訪問には特別なスキルや経験が必要とされることと関係があるでしょう。

具体的な給与額は、経験年数や勤務地域、勤務形態などによって異なります。
また、訪問件数や実績によっても変動します。
一般的に、年収で500万円から700万円程度と言われていますが、これはあくまで目安です。

在宅訪問薬剤管理指導は、今後の薬局経営における重要な軸になると予想されています。
高齢化社会の進展にともない、在宅医療のニーズはますます高まっていくでしょう。
そのため、この分野は、将来的な収入増加も見込めます。

また、給与だけでなく、患者さんの生活に直接貢献できるやりがいも、この仕事の大きな魅力です。

在宅訪問薬剤管理指導は地域医療を支える重要な仕事

在宅訪問薬剤管理指導は、今後高齢化社会における地域医療に貢献する重要な業務です。
薬剤師が患者さんの自宅を訪問し、きめ細やかな服薬指導と管理を行えば患者さんのQOL向上に大きく貢献するでしょう。

給与面では現在は一般の薬剤師とあまり変わりませんが、今後の需要増加を考えると、キャリアの選択肢としては魅力的な分野です。
何より患者さんの生活の質向上に直接貢献できる喜びは、この仕事の大きな魅力でしょう。

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