保育所保育指針が2008年に全面改正され、2018年より適用されました。
そのなかで、保育士は自己評価を定期的に行うことが努力義務とされています。
自己評価には、項目ごとのチェックや、自分が立てた目標に対する反省などを記入する場合があります。
どのように目標の設定をしたら良いか悩んでいる人へ向けて、目標設定の例文やポイントを紹介いたします。
経験年数別にもまとめていますので、ぜひご参照ください。
目次
保育士の目標設定のポイントは?
目標設定するうえで悩んでいる方が参考にできるポイントは、以下の5つです。
- 今の自分の状況を分析する
- 高すぎる目標は設定しない
- 数値の使用・期限の設定など具体的な目標にする
- 保育園全体の目標や方針に対する、自分の役割を意識する
- キャリアアップ研修の受講を目標にするのもあり
それぞれ解説していきます。
今の自分の状況を分析する
目標設定する前に大事なことは、現在の自分の状況や求められている役割・課題を確認することです。
自分自身を振り返り、分析することからはじめましょう。
できること、できないことを自己分析することで、今後の目標がはっきりします。
しかし自己評価だけでは注意が必要で、個人の性格によりますが過少・過大評価になる場合があります。
同僚や上司などの第三者からの評価も参考にすることも大事です。
他人目線が入ることで、自分では見えなかった部分や新しい長所・短所を知ることができるかもしれません。
また先輩や上司から目標設定のアドバイスをもらえる場合もあります。
高すぎる目標は設定しない
目標は手の届くレベルのものから立てていきましょう。
達成するのが難しい目標を設定すると、達成に向けてプレッシャーを感じたり、できなかったときには自信を失ったりしかねません。
少し背伸びをすれば達成できるくらいの目安で設定するのがベストです。
将来思い描いている高い目標がある場合でも、まずは小さな目標からはじめてみてください。
小さな成功体験を感じながらコツコツと積み上げていけるペースが理想です。
実現可能な目標を立てることでモチベーションを高め、積極的に取り組めるようにしましょう。
数値の使用・期限の設定など具体的な目標にする
目標には、数字を用いるのがおすすめです。
数値や期限を設定することで、目標がより具体性をもってきます。
「○個以上実行する」「○週間継続する」「○ヵ月でできるようになる」など数字を用いることで、目標の達成度を確認できるようになります。
達成度をわかりやすくすることで、目標へ向けて行動しやすくなるはずです。
また、過去を振り返った際に、自分自身の成長を感じる目安となります。
保育園全体の目標や方針に対する、自分の役割を意識する
目標設定に慣れてきたら、自分自身だけでなく保育園全体へ目を向けた目標を立ててみましょう。
個人の目標と保育園全体の方針が同じ方向を向くことにより、保育園全体が一つになりまとまりやすくなります。
労働環境も向上し、保育園全体の雰囲気も良くなります。
また、双方のめざす方向性にズレが生まれませんし、保育園に対してできる自分の役割を見つけやすくもなるなど、メリットも多いものです。
保育園に貢献しているようにも見え、管理者や経営者からの印象も良くなります。
キャリアアップ研修の受講を目標にするのもあり
キャリアアップ研修とは、保育士の専門性の向上と処遇の改善を図る目的で、2017年に厚生労働省が制定しました。
2023年度より「処遇改善等加算II」を受給するのに、研修受講が必須となります。
キャリアアップ研修を受講することで、職位により給与アップが見込まれるほか、キャリアパスを描きやすくなりました。
これをきっかけに、より上位の職位をめざすのも良いかもしれません。
受講のタイミングや、研修の内容は保育園側とも相談しましょう。
職位やそれぞれの処遇については、以下の図を参照してください。
出典:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ
保育経験年数ごとの具体的な目標例
保育士としての経験が増えるにしたがい、できることが増えていきます。
1年目の保育士と5年〜10年働いている保育士では、同じ目標にはなりません。
ここでは、経験年数ごとに目標をどのように立てたら良いか、具体的な例を紹介します。
1年目の新人保育士の目標の例文
働きはじめの1年目は、仕事を覚えることと慣れることを優先させましょう。
また、社会人の基礎として、報連相の徹底やマナーの習得、積極的に質問する姿勢を目標にするのもありです。
仕事に慣れる・覚えることを目標にした例文 |
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一年以内に毎日の日常業務を一人でできるようにする |
今年中に子どもとその保護者の顔と名前をすべて覚える |
積極的に子どもに声をかけられるようになるために、毎日クラスの子ども全員に声をかけるようにする |
笑顔で明るい雰囲気で仕事に取り組み、子どもが遠慮なく自分に関われるようにする |
社会人の基礎を習得することを目標とした例文 |
報告、連絡、相談を徹底し、先輩保育士との連携を密にする |
わからないことがあれば積極的に質問し、わからないままにしない |
社会人のマナーの基本を覚え、正しい言葉遣いができるようにする |
2年目の保育士の目標の例文
2年目になると仕事も慣れ始め、1年目に比べて子どもの関心も汲み取れるようになっていきます。
子どもの発達の知識を深めて、いろいろな活動を取り入れていくなど、スキルアップをめざしましょう。
1年目の経験を生かして、子どもの発達をふまえた保育と年間行事を進めることや、覚えた業務を積極的に進めることも大切です。
保護者との関係を築くことに焦点を当てた目標も良いでしょう。
スキルアップを目標にした例文 |
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最低でも週に一つ新しい遊びを覚え、子どもと一緒にやってみる |
仕草や表情を注意深く見守り、子どもの気持ちを読み取る |
先輩の子どもへの接し方を見て研究し、良いと思ったことを自分の業務にも取り入れる |
1年目の経験をもとにした例文 |
昨年の流れをもとに、スケジュールを組み立てながら毎日の保育を行う |
先輩からの指示を待たず、自分から進んで行動する |
保護者とのコミュニケーションを目標にした例文 |
保護者の方とのコミュニケーションにおいても、笑顔を絶やさず信頼してもらえるような関係を築く |
毎日一人以上の保護者と、今日あったことを話す |
3~6年目の中堅保育士の目標の例文
3〜6年目になると、後輩保育士との関わり方に焦点を当てた目標を立てることもできます。
スキルアップに関しては、職務分野別リーダーをめざしたキャリアアップ研修の受講を目標としたり、子どもの発達についてより深く学んだりするなど、保育の質を高めることを目標としても良いでしょう。
日々の業務がより良いものになるよう、改善点を見つけて提案することや計画的に遂行できるような目標を立てるのも良いかもしれません。
スキルアップを目標にした例文 |
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職務分野別リーダーをめざし、食育・アレルギー対応研修を受講する |
子どもの発達について学び、発達に合わせたより質の高い指導や遊びを提供できるようになる |
担当クラス外の業務も対応できるようにする |
後輩の育成を目標にした例文 |
後輩にOJTとして業務や保育内容を丁寧に伝え、相談しやすい環境づくりをする |
クラスの保育士との面談時間を週に1回設け、後輩とのコミュニケーションの時間を取る |
業務の計画的な遂行を目標とした例文 |
仕事の優先順位を立てて、計画的に行うことで遅延なく業務を遂行する |
行動の準備計画を立ち上げ、計画的に遂行できるよう、園全体をリードしていく |
日常業務の改善を目標とした例文 |
年に6個の日常業務における課題や問題点を見つけ、改善に向けた提案を行う |
7~10年目のベテラン保育士・リーダーの目標の例文
7〜10年目は副主任や専門リーダーをめざして、キャリアアップ研修やマネジメント研修の受講を目標としましょう。
職場でも中心人物として、職員全体をまとめることを目標にするのも良いかもしれません。
園全体の安全や衛生環境、保育士の労働環境の改善など、全体を見渡すことができる目標を立てると良いでしょう。
スキルアップを目標にした例文 |
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主任へのキャリアアップをめざし、年間で3件以上キャリアアップ研修を受講する |
マネジメントの研修に参加し、人事評価方法を身につける |
マネジメントに関する書籍を毎月1冊以上読む |
職場をまとめることを目標にした例文 |
毎日職員とコミュニケーションをとり、悩みや困りごとを汲み取る |
クラス間の連携を深めるために、週に1回情報共有の場を設ける |
職場の環境管理を目標とした例文 |
施設の衛生管理や安全管理に目を向け、提案・改善に努める |
全体の残業時間を減らせるように、業務改善や効率化を月に1件実施する |
そもそも保育士はなぜ目標が必要なのか
保育士にとって目標設定が必要なのはなぜでしょうか。
目標設定の意味や重要性としては以下の3つが考えられます。
- スキルアップやキャリアアップにつながる
- 人事評価・自己評価を行う際のポイントになる
- 保育園としての目標を達成するため
それぞれを解説していきます。
スキルアップやキャリアアップにつながる
保育の仕事は対象が人のため、販売業などのように結果が明確な数値としてあらわれません。
そこで具体的な目標を立てることで、自身の行動を客観視する助けとなるでしょう。
やりたいことや、伸ばしたい部分を見つけやすくなります。
また、目標の設定は仕事への意欲を高めてくれ、やりがいや達成感を得られます。
一つひとつ目標を達成することで、スキルアップやキャリアアップにつながっていくでしょう。
人事評価・自己評価を行う際のポイントになる
目標設定をすると、めざす働き方が明確になります。
目標の達成度を比較して、客観的な自己評価を行えるようになるのがポイントです。
厚生労働省の保育所保育指針にも、自己評価をして自分自身の仕事内容を振り返ることの必要性が示されています。
また保育の仕事は、営業成績のようなわかりやすい成果があらわれません。
自分の働きが適正に評価されない場合もあります。
目標設定があることで達成度などを評価できるため、人事評価のアピールにつながることもポイントです。
保育園としての目標を達成するため
個人が目標を設定して行動することは、回りまわって保育園全体の目標達成にもつながります。
一人のやる気や向上心が周囲に波及して、保育園全体の士気も上がるでしょう。
これにより、職場の環境や雰囲気もよくなります。
今は役職や経験の浅い保育士であっても、目標に向かって日々研鑽することで、自分だけでなく、保育園全体のために良い結果をもたらすでしょう。
目標管理シートで定期的に自己評価を行うことも大切
目標を設定できたら、定期的に自己評価をしましょう。
自己評価を行うことで、ステップアップが実感できたり、目標に対してのズレや遅れを確認できたりします。
自己評価の際は、目標管理シートを作成するのが良いでしょう。
各保育園で用意されている場合もありますし、インターネット上からテンプレートをダウンロードすることもできます。
目標設定管理シートを使用することで、一貫性が出てわかりやすく評価ができます。
シートには、先輩や同僚からフィードバックをもらえる項目を入れると良いでしょう。
主観的な意見だけでなく、客観的にも評価をもらうことで、新しい気付きが得られます。
偏った目標や間違った認識をしていないか確認することにもつながります。
アドバイスをもらえれば、更なる成長が見込まれるでしょう。
保育士としての目標を明確にし、モチベーションを高めよう
この記事では保育士の目標設定について解説してきました。
2023年度よりキャリアアップ研修も本格的に始まり、保育士のスキルアップについて明確に評価されるようになります。
職場の環境や処遇も見直され、働きやすくなるかもしれません。
成長の実感を客観的に確認できるように、まずは自分の手の届くところから目標を設定しましょう。
目標の達成はモチベーションが高まり、保育士として有意義に働くことができます。