
かつては「資格があれば一生困らない」ともいわれた薬剤師ですが、最近では薬剤師を取り巻く状況が大きく変化してきています。
そこで今回は、薬剤師の現時点での需要と供給、そして今後の見通しについて解説します。
薬剤師として働いている人、これから薬剤師をめざす人はぜひ最後までお読みください。
目次
薬剤師の需要・供給
出典:薬剤師の需給調査
厚生労働省の薬剤師の需給調査では、2043年までの薬剤師の需給動向を予測しています。
その結果、今後数年間は需要と供給が均衡した状態が続くものの、長期的にみると供給が需要を上回ることが見込まれると結論づけられました。
また、薬剤師総数の観点では、今後現在の水準以上に薬剤師養成が必要となる状況は考えにくいという点も指摘されました。
つまり、近い将来、薬剤師数が供給過多になる可能性が高いということです。
薬剤師として働いている人にとっては、将来性について強い不安を抱く調査結果となりました。
薬剤師の需要が減少するといわれる理由は?
薬剤師の需要が減少すると考えられているのには、どのような理由があるのでしょうか。
薬剤師の過剰供給
2022年時点における医師・薬剤師等の有効求人倍率は2.76倍であり、まだ需要が高いとわかります。
しかし、有効求人倍率は年々低下しており、以前と比較すると少しずつ需要が減少しているのも事実です。
この傾向が続けば、今後有効求人倍率はますます低下していくことが予測されます。
対物業務のAIによる代替
薬剤師の需要が減少するといわれるのは、対物業務のAIによる代替も大きく影響していると考えられます。
薬歴の音声入力やデータベース化など、薬剤師業務におけるAI化は日々進化しています。
今後、分包化や一包化などの高度な技術も、機械によって行われるようになると考えられており、薬剤師の業務そのものが減少してしまう可能性が高いでしょう。
医療費削減
日本では今後さらに高齢化が進み、それにともなって医療費も増大していくことが予測されます。
このような状況を受け、政府は医療費削減を目的とした、なにかしらの政策を行うことでしょう。
医療費削減のためには、人件費削減や診療報酬・調剤報酬などの改定が必要となるため、調剤薬局などの収入減が予想され、薬剤師の雇用が減少するリスクがあります。
薬剤師の今後の需要や取り巻く環境について
ここからは、薬剤師の今後の需要や取り巻く環境について、もう少し詳しく解説します。
現時点ではまだまだ需要の高い職種
現時点では、薬剤師はまだまだ需要の高い職種であることは先述のとおりです。
すぐに不安になる必要はありません。
将来的には供給過剰になる可能性もある
薬剤師は、数年以内という期間ではないものの、長い目でみると将来的に供給過剰になる可能性があります。
しかし、将来的にAIが担うことのできる業務内容や各種制度の変化など、薬剤師を取り巻く環境の変化は不確定な部分も多いため、一概に「需要がなくなる」とは言い切れません。
調剤報酬改定により求められる薬剤師像が変化する
薬剤師は、調剤報酬改定などにより、求められる薬剤師像が変化していくことについて理解しておくことが必要です。
国は地域包括ケアシステムの構築を推進しており、薬剤師にはそのシステムのなかでの地域医療への貢献が求められています。
AIや非薬剤師が代替できる業務が増加したとしても、薬剤の専門知識に基づく患者さんとのコミュニケーションやマネジメント業務など、薬剤師にしか行えない業務もあるでしょう。
実際に調剤報酬において、服薬指導や在宅医療への貢献に対しては高い報酬が設定されていることからも、薬剤師には対人業務への注力が求められていることがうかがえます。
薬剤師の需要が今後減少する可能性があると今から理解しておこう
今回は、薬剤師の現時点における需要と供給、またその将来性について解説しました。
薬剤師は、現時点では需要がある職種であることに変わりありませんが、将来的には需給バランスが供給に傾く可能性があります。
ニュースなどを見ながら、その都度薬剤師を取り巻く環境や各種医療制度などの変化を把握しつつ、今後ますます重要視される在宅医療に強い薬剤師をめざすなど、今からできる準備をすすめましょう。