
薬剤師といえば、日中に調剤薬局で働いている印象をお持ちではないでしょうか?
しかし、医師や看護師と同じように、病院などで働く薬剤師には夜勤があります。
また最近では、深夜の営業を行っているドラッグストアでも、夜勤をする薬剤師が多いです。
この記事では、薬剤師の夜勤について仕事内容や報酬を解説します。
夜勤を乗り切るコツについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
薬剤師の夜勤
薬剤師は、日中に調剤薬局などで働いている印象が強いかもしれません。
しかし、救急医療を行う病院や入院設備のある病院、深夜営業のドラッグストアなど、職場によっては夜間にも働く薬剤師がいます。
薬剤師が夜間に働く代表的なパターンは以下の2とおりです。
- 通常の勤務時間が終了した後に出勤し、夕方以降から深夜あるいは翌朝にかけて、日中と同様の業務を行う
- 朝に出勤して翌日の朝まで、睡眠時間を確保しながら働く
労働基準法により時間外手当や週の労働時間、勤務時の休憩時間の確保などが定められており、夜間の業務でも労働環境は守られます。
夜間の業務は生活パターンが不規則になりがちで対応が難しいという方もいますが、収入増や日中の時間を有効に使えるなどのメリットに、魅力を感じる方もいます。
薬剤師の夜勤と当直の違い
夜間の業務のことは「夜勤」や「当直」など、職場によってさまざまな呼び方がされています。
夜勤や当直という言葉は混同して使用されていますが、正確には労働基準法によって明確に区別されています。
法律上で夜勤と当直の大きく異なる点は、労働時間が法定労働時間に含まれるかどうかです。
夜勤は労働時間が法定労働時間に含まれるのに対し、当直勤務の労働時間は法定労働時間に含まれません。
そのかわり、夜勤には回数の制限がなく、当直勤務には週1回までの制限付きです。
当直では睡眠時間が勤務時間内に確保されており、支給される手当の額は、夜勤と異なり1日平均賃金の1/3を下回らないことと、労働基準法で定められています。
当直は何かあったときの待機としての意味合いもあるため、日によっては仕事がない場合もあります。
薬剤師の夜勤の仕事内容は?
薬剤師で夜勤があるおもな職場は、救急医療に対応している病院や入院設備のある総合病院、24時間もしくは深夜まで営業しているドラッグストアです。
ここでは、薬剤師の当直を含めた夜間勤務を夜勤とし、その業務内容や待遇について解説します。
病院勤務の薬剤師の夜勤内容
病院勤務の薬剤師が夜勤で行うおもな仕事内容は以下の2つです。
- 入院している患者さんが急変した際などに、医師が処方した薬や点滴などを準備
- 夜間救急外来で受診した患者さんへ処方された薬を調剤
どちらも日勤ほどの仕事量にはなりませんが、配属されている人数が少ないため、業務が重なる場合は一時的に忙しくなることもあります。
業務が発生しない時間には交代で長めの休憩時間を確保するなど、仮眠をとりながら働くことも可能です。
ドラッグストアでの薬剤師の夜勤内容
ドラッグストア勤務の薬剤師が夜勤で行うおもな仕事は以下の3つです。
- 医師の処方箋がなくても薬剤師から購入できる医薬品の販売(かぜ薬や頭痛薬など)
- 日用品の販売や棚卸しの業務
- 夜間外来のある病院が近くにある場合、処方薬の調剤
最近は、24時間や深夜まで営業しているドラッグストアも出てきています。
かぜ薬や頭痛薬などの医薬品には、薬剤師や登録販売者がいなければ販売できないものもあります。
そのため、ドラッグストアでも薬剤師の夜勤は需要が増えてきているのです。
薬剤師の夜勤の時給相場は?
夜勤の時給は労働基準法で定められており、当直の場合でも最低賃金という形で決められています。
どちらの賃金も通常勤務の支給額をもとに計算されますので、就業場所により金額はさまざまです。
夜勤と当直の場合それぞれをみてみましょう。
夜勤の時給は通常の25%〜50%割増
夜勤で支払われる賃金は、通常勤務の25%〜50%割り増しされます。
労働基準法第三十七条には、以下の記載があります
通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
出典:労働基準法
時給が2,500円の場合の割増加算例は以下のとおりです。
- 日勤の時給が2,500円の場合
2,500円 × 0.25 = 625円
1時間につき625円の割増加算がつき、時給3,125円となります。
当直の場合は手当がつく
当直の業務時間内には仮眠時間も含まれるため、夜勤のように法定労働時間に含まれません。
そのため、割増賃金も深夜割増という形ではなく、当直手当として支払われます。
当直手当は、1日の平均賃金の3分の1を下回らないことと定められていて、当直中の業務の有無には関わりません。
日によって、調剤業務が発生せず一晩待機で終わったとしても、当直手当は支払われます。
以下に時給が2,500円の場合の、当直手当例を挙げてみます。
- 日中の時給が2,500円で1日の労働時間が7時間の場合
2,500円 × 7時間 × 1/3 = 5,833円
1度の当直につき5,833円を下回らない当直手当がつきます。
薬剤師が夜勤を乗り切るために、最適な仮眠時間は?
夜間の勤務は、生活リズムを崩しやすく、睡眠不足による疲労も蓄積しやすくなってしまいます。
疲労を溜めずに乗り切るための、夜勤による負担をやわらげるコツを紹介します。
夜間勤務を行ううえで、大きな問題は睡眠不足による疲労です。
仮眠を取ることで、勤務中だけでなく勤務後の疲労感も軽減すると言われています。
最適な睡眠は、「眠りに入るまでの時間」から「覚醒に向けた時間」までを1サイクルとした睡眠で、1サイクルの時間はおよそ90~120分です。
90~120分の睡眠をとると、浅い眠りである「レム睡眠」にあたる時間帯に目覚めることができます。
目覚めたときにボーッとしたり、だるかったりする、寝ぼけ状態(睡眠慣性)を避けることができ、医療安全上も望ましいです。
忙しさのあまりどうしても2時間の仮眠が取れない場合は、10分程度の短時間の睡眠だとしても、疲労回復あるいは疲労軽減の効果があるとされていますので、仮眠をとってください。
忙しいときほど、安全を意識して確保する必要がありますので、短時間であっても仮眠の時間をとるよう心がけましょう。
薬剤師の夜勤の特徴を理解して、自分にあった職場を見つけよう
薬剤師の夜間勤務には、夜勤と当直の2種類あります。
労働基準法では両者の働き方や報酬には違いがあるので、求人情報を見るときには注意が必要です。
夜勤がある職場には、救急医療を行っている病院や入院設備のある病院と、深夜まで営業している調剤薬局やドラッグストアなどがあります。
24時間や深夜まで営業しているドラッグストアも多くなっており、薬剤師の夜勤に対する需要は増えてきているといえます。
夜勤や当直の特徴と就業場所ごとの業務内容を理解して、自分の希望にあった職場を見つけましょう。