
一般企業でのテレワークはあたり前になってきましたが、薬剤師のテレワークは容認されていませんでした。
薬剤師のテレワークを全面的に認める方針のもと、2022年3月に厚生労働省が省令を改正し、薬剤師もテレワークができるようにしました。
この記事では、テレワークを利用したオンライン薬局の仕事について解説します。
また、資格を活かした在宅での仕事にも触れているので、子育て中など家から出て働くことが難しい薬剤師の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
薬剤師もテレワークができるようになった
厚生労働省は2022年3月に、「オンライン服薬指導」でできることの範囲を広げる省令改正をしました。
具体的な変更点は、以下の3つです。
- 薬剤師の責任・判断により、初回からオンライン服薬指導が実施可能
- オンライン診療・訪問診療にて交付された処方箋以外の処方箋においても、オンライン服薬指導が実施可能
- 「服薬指導計画」という書面の作成義務がなくなった
また2022年9月から、調剤薬局外にいる薬剤師もオンライン服薬指導ができるようになりました。
これにより、薬剤師も自宅でテレワークできるようになります。
ただし、対象となるのは、調剤業務を手がける調剤薬局に所属する薬剤師です。
薬剤師の6割強が女性のため、出産や育児などで働いていない潜在的な薬剤師が多くいると推計されています。
テレワークが可能になると、育児などと薬剤師の仕事を両立させる環境が整い、職場復帰の可能性が高まります。
オンラインの服薬指導とは
オンライン服薬指導とは、パソコンやスマートフォンを用いて、患者さんの状態を確認しながら行う服薬指導のことです。
2020年4月には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対応するため、特例的な措置として、映像のない電話での服薬指導を可能にしていました。
しかし薬機法施行規則の改正により、オンライン服薬指導も見直されました。
オンライン服薬指導の概要と、それを実施するのに必要な知識を解説します。
オンライン服薬指導の概要
オンライン服薬指導は2020年9月に取り入れられた制度です。
段階的に変更が加えられて、2024年3月現在の制度になっています。
以前の制度 | 新型コロナウイルス対応時 | 2022年3月〜 | |
---|---|---|---|
実施方法 | ・初回は対面(オンライン服薬指導は不可) ・継続して処方する場合はオンラインと対面を組み合わせて実施 |
初回から、薬剤師の判断により電話・オンライン服薬指導できる | 初回から、薬剤師の判断により電話・オンライン服薬指導できる |
通信方法 | 映像および音声による対応(音声のみ不可) | 電話(音声のみ)でも可 | 映像および音声による対応(音声のみ不可) |
処方箋 | オンライン診療または訪問診療を行った際に交付された処方箋 | どの診療の処方箋でも可 | どの診療の処方箋でも可 |
薬剤の種類 | これまで処方されていた薬剤またはこれに準じる薬剤(後発品への切り替え等を含む) | 原則、すべての薬剤に対応(手技が必要な薬剤については、薬剤師が適切と判断した場合に限る) | 原則、すべての薬剤に対応(手技が必要な薬剤については、薬剤師が適切と判断した場合に限る) |
調剤の取扱い | 処方箋原本に基づく調剤 | 医療機関からFAXなどで送付された処方箋情報で調剤できる | 医療機関からFAXなどで送付された処方箋情報で調剤できる |
参考:日本薬剤師学会「オンライン服薬指導について オンライン服薬指導と0410対応の違い(R4)」
薬学の知識だけでなく情報関連の知識も必要
オンライン服薬指導を実施する際には、薬学の知識だけではなく、情報通信機器の操作やセキュリティの知識も必要です。
日本薬剤師会は、公式サイトにオンライン服薬指導についての研修スライドを公開しており、オンライン服薬指導の普及に意欲的だと考えられます。
公式サイト上で、オンライン服薬指導についての研修スライドを公開しています。
オンライン薬局の仕事|在宅で薬剤師の資格を活かす
テレワークができれば、患者さんや同僚と接しないため感染リスクが少なくなります。
また、通勤がないので時間を有効活用でき、育児や介護など家庭の事情があっても働きやすくなるため、労働環境は向上するでしょう。
最近では、オンラインで完結する新しい形の調剤薬局も誕生しています。
オンライン薬局の仕事内容とメリットをそれぞれ解説します。
仕事内容
オンラインでのミーティングやチャットを利用して、患者さんとやり取りするのが主な仕事です。
仕事内容は以下の4つに分類できます。
- 服薬指導
- 市販薬の販売(セルフメディケーションのアドバイス)
- ヘルスケアに関する情報発信
- 薬にまつわる相談や、健康や心身の悩み相談
調剤薬局のように次々と調剤業務をこなすような仕事ではなく、時間をかけて患者さんとやり取りできるので、患者さんからの相談により丁寧に対応できることが特徴です。
オンライン薬局で働くメリット
オンライン薬局で働くことには、2つのメリットがあります。
- どこでも仕事ができる
- 時間の融通が利きやすい
それぞれ解説します。
どこでも仕事ができる
オンライン薬局で働くメリットの一つは、どこでも仕事ができることです。
自宅で働いていれば、子供の急な体調不良で出勤を必要とする仕事を休む回数は減るでしょう。
家族の都合などで引っ越すことになっても、社内の部署を異動したり転職したりする必要はありません。
また、在宅で仕事をするときは患者さんや同僚に会わないため、感染リスクへの配慮は不要です。
時間の融通が利きやすい
オンライン薬局で働くと、時間の融通が利きやすくなることも一つのメリットです。
自宅で仕事をすると、外に働きに出ることが難しい方でも自分のペースで仕事ができるようになります。
薬剤師の資格を活かしながら、家事や育児との両立がしやすくなるでしょう。
薬剤師の資格を活かしたその他のテレワーク
調剤薬局に勤務するほかにも、薬剤師の資格を活かせるテレワークがあります。
次の3つの仕事です。
- メディカルライター
- 研究論文や薬剤資料の翻訳業務
- 治験の書類作成補佐
それぞれ解説します。
メディカルライター
メディカルライターは正社員だけでなく、フリーランスでも業務委託で仕事ができます。
そのため、出社せずに自宅で働くことが可能です。
仕事は、製薬会社に勤務する場合とメディアなどのクライアントワークにわかれます。
製薬会社に勤務する場合は、薬事申請や研究発表などで使用する専門文書を作成することになるでしょう。
雑誌や本、インターネットなどのメディアでは、医療従事者向けに医薬品の情報や最新のトピックスを紹介する仕事、一般読者向けに難しい医薬品の情報をわかりやすく解説する仕事があります。
どちらも、薬剤師としての薬学の知識が重宝される仕事です。
研究論文や薬剤資料の翻訳業務
英語力に自信がある薬剤師にとっては、医薬翻訳業も選択肢の一つです。
業務委託で仕事をする場合は、在宅勤務が基本になります。
以下の2つが主な仕事内容です。
- 製薬会社など企業内の翻訳業務
- 翻訳専門企業における医薬向けに特化した翻訳業務
翻訳業務の仕事をするには、勉強や関連情報の収集が欠かせません。
翻訳者としてのスキルをはかる検定試験や、スキルアップのためのセミナーなどを利用すると良いでしょう。
治験の書類作成補佐
治験を実施する際には、手順書や契約書、報告書などの書類作成が必要です。
そのため、治験の書類作成を補佐する仕事があり、薬剤師がテレワークをするときの選択肢の一つになるでしょう。
業務中は、医師や医療従事者とコミュニケーションを取ることもあるため、薬剤師としての知識や経験があることは、アドバンテージとなります。
薬剤師がオンラインでも仕事ができることを理解して、自分にあった働き方を探そう
医薬品医療機器等法の改正により、薬剤師もテレワークができるようになりました。
オンラインで薬剤師の仕事が完結すれば、場所や時間に縛られない働き方ができます。
このことは、出産や育児のため家から出て働くことが難しい薬剤師の職場復帰に大きな後押しとなります。
調剤薬局以外のテレワークもあるので、自分の状況に合わせた働き方を考え、自分に合った仕事を探してみましょう。