
保健センターや企業など、さまざまな場所で保健師のサポートを受けた経験がある人もいるでしょう。
この記事では保健師をめざしたい人のために、保健師の基本的な情報を解説します。
保健師の仕事内容や種類、勤務先、さらには公務員試験も見ていきます。
「保健師とは公務員なのか」「採用方法は?」「公務員としての募集はどのくらいあるの?」など、さまざまな疑問を持っている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
公務員の保健師とは?
保健師とは、保健や医療、福祉、介護などの分野で病気予防や健康維持のために必要な保健指導を行うスペシャリストです。
保健師の勤務先には以下のようなものがあります。
- 保健所や自治体の機関
- 病院やクリニック
- 居宅介護支援事業所
- 訪問介護ステーション
- 企業
- 保健師養成校
保健師には医療や保健の専門的知識はもちろん、保健指導や面談などにおいて相手を正しく理解するために、カウンセリングの知識や技術も欠かせません。
ハローワーク求人統計データによると、保健師の有効求人倍率は1.01倍になっており、就業希望者一人につき1件程度の求人があると見受けられます。
公務員の保健師になるには、保健師国家試験に合格するだけではなく、公務員試験にも合格する必要があります。
公務員の保健師は、一般企業ではなく、自治体の役所や行政運営の保健機関などで活躍する保健師です。
主に保健所や保健センターなどに勤務しており、乳幼児から高齢者までのすべての住民に指導を行います。
保健師が病気予防の保健サービスを提供するのに比べ、看護師は基本的に病気になった人の治療に関わるのが仕事です。
保健師の仕事の対象者は健康な人を含めて地域や所属組織の人すべてですが、看護師の仕事の対象者は基本的に傷病者になります。
地方公務員の保健師
地方公務員の保健師とは、保健所・保健センターなど、都道府県や市区町村などの機関で働く保健師を指します。
厚生労働省の令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、保健師の就業場所で最も多いのは、市区町村の54.8%でした。
次に保健所が15.3%となっており、都道府県の2.6%と合わせて70%以上が公務員として働いていることがわかります。
ここでは、地方公務員の保健師を行政保健師と学校保健師、病院保健師の3つに分けて解説します。
行政保健師
行政保健師とは、保健所や保健センターといった都道府県や市区町村の機関に勤務する保健師です。
前述したように、都道府県、市区町村、保健所で働く保健師は全体の70%以上を占めており、保健師の多くが行政保健師として働いていることがわかります。
行政保健師は住民の病気予防や健康維持をサポートするのが役割です。そのため、地域住民と関わる機会も自然と多くなります。
学校保健師
保健師のなかで、行政保健師は地方公務員の代表といえます。
しかし、行政保健師以外にも公務員の保健師は存在しています。
例えば、学校で働く学校保健師のなかで、公立学校に勤務する保健師は公務員です。
学校保健師は生徒や教職員の健康管理に携わり、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐ役割を担います。
体調不良や怪我の対応も行い、学校内での疾病予防にも取り組みます。
公立の小学校、中学校、高校の保健室の先生は、養護教諭の免許を取得している必要があります。
保健師の免許だけで学校保健師になる場合は、私立の小中高等学校や短大、大学、専門学校などで働くことになるでしょう。
病院保健師
病院で働く保健師は病院保健師と呼ばれており、公立病院で働く保健師は公務員になります。
病院での保健師の仕事内容は、健康診断や健康指導などの患者指導がメインです。
また、患者さんだけではなく、病院のスタッフの健康指導と管理も病院保健師の仕事の一つです。
保健師は看護師資格も持っているため、病院で働く保健師は看護師の仕事を兼務するケースもあります。
保健師として働きながら、せっかく取得した看護師資格も活用したいという人には、最適な勤務先といえるでしょう。
保健師になりたくてもなれなかった場合は、看護師として働きながら保健師枠の空きを待つのも一つの方法です。
国家公務員の保健師
前述したように、行政保健師は市区町村で働く地方公務員が一般的です。
地方公務員とは都道府県や市町村で働く公務員で、募集も採用選考も地方自治体が行います。
では、保健師に国家公務員はいないのかというと、そんなことはありません。
少ないながらも国家公務員の保健師として働いている人は存在しています。
厚生労働省の看護系技官採用情報|令和4年度の採用情報では、看護系技官として、看護師資格と保健師資格または助産師資格のいずれかを併せ持つ人材の募集が若干名あります。
主な職務内容は、法律に基づいて看護行政などの業務を行うことです。
対象者には細かい制限があるため、誰もが選考を受けられるわけではありません。
例えば、看護に関する7年以上の業務経験も応募資格とされています。
採用後の人事は、本省や地方厚生局などに配属とされており、活躍できるフィールドは以下のとおりです。
- 大臣官房
- 医政局
- 健康局
- 労働基準局安全衛生部
- 子ども家庭局
- 社会・援護局
- 社会・援護局 障害保健福祉部
- 老健局
- 保険局
- 高齢者医療課
なお、希望の職場に配属されるかどうかは確定していません。
公務員の保健師の給料
総務省の令和3年地方公務員給与の実態によると、看護師・保健師の平均月収は345,172円。
地方公務員は勤務先によって給料が大きく異なることはありません。
しかし、地域による物価の差によって地域手当は異なり、その影響で給料に違いが出てきます。
また、地方公務員の場合は毎月共済年金が引かれます。
共済年金はその他の年金に比べて手厚く設定されているため、引かれる金額も多い傾向です。
公務員の保健師になるには?
どこで働くにしても、保健師になるには国家試験に合格する必要があります。
公務員の保健師になるには、さらに国や地方自治体が行う職員採用試験に合格しなければなりません。
職員採用試験は公務員試験とも呼ばれており、学科試験と面接を受けるのが一般的です。
保健師国家試験だけではなく公務員試験を受けなければならないため、公務員の保健師になるにはしっかりと勉強をする必要があります。
保健師になるための公務員試験について
保健師になるための公務員試験について、倍率や難易度、年齢制限などを見ていきましょう。
倍率や難易度
保健師になるための公務員試験の難易度は、行政機関によって大きく異なります。
上級公務員試験では大卒程度、中級公務員試験は短大卒程度、初級公務員試験は高卒程度となっていますが、おおむね難易度は高いといえます。
難易度は、志望先の求人でしっかりと確認するようにしましょう。
求人倍率は行政機関によってさまざまですが、なかには10倍を超えるケースもあります。
公務員試験の合格率自体が低く合格が難しいため、しっかりと勉強をする必要があるでしょう。
年齢制限
保健師になるには看護師と保健師の両方の資格が必要になり、資格を取得できるのは最短でも22歳です。
そのため、22歳より若くして保健師になることはできませんが、それ以降なら年齢制限はなく何歳でも保健師になることができます。
2007年からどのような職業においても雇用の際に年齢制限を行ってはならないことが雇用対策法で定められたため、法律で年齢を制限することはできないのです。
ただし、公務員の保健師だけは例外の場合もあります。
実は公務員は例外的に年齢制限が容認されているケースもあるのです。
そうしたケースでは採用試験の受験資格に年齢が記載されているので、公務員の保健師として働きたい場合は、年齢制限の確認を忘れないようにしましょう。
公務員試験なしでも保健師になれる?
公務員試験に受からないと保健師になれないのかといえば、そうではありません。
保健師の就業先は、市区町村が54.8%・保健所が15.3%・都道府県が2.6%を占めます。
ただし、医療法人が経営する病院で働く病院保健師や、一般企業で働く産業保健師のように、公務員でなくても就業できる保健師の仕事もあります。
産業保健師は、企業で従業員の健康管理などに携わります。
主な業務は以下のとおりです。
- 定期健診のデータ管理
- メタボリックシンドロームや生活習慣病予防の情報提供
- 健康に関する情報提供
- 体調不良やメンタルヘルスの相談対応
- ストレスチェックの実施
- 病院の紹介
- 休職や復職の面談およびサポート
また公務員試験なしでも、私立の小中高等学校や大学、短大、専門学校の学校保健師として働くことは可能です。
公務員の保健師をめざすなら、万全の準備をすることが大切
この記事では、保健師のほとんどが公務員として働いていることをお伝えしました。
公務員の保健師と一言でいっても、勤務先は複数存在しており、仕事内容も変わってきます。
公務員の保健師になるには公務員試験を受けなければならず、しっかりと勉強をする必要があります。
倍率や難易度、年齢制限などをしっかりと念頭に置いて、万全の準備をして保健師をめざしましょう。