
保健師は地域住民の健康を支える重要な役割を担うだけではなく、企業や学校など活躍の場も拡がっている専門職です。
その資格を取得するためには、保健師国家試験に合格する必要があります。
しかし、この試験を受験するにはいくつかの条件があり、条件について疑問を抱いている人もいるでしょう。
本記事では、保健師国家試験の受験資格について詳しく解説します。
取得条件やよくある質問にも触れながら、保健師をめざす方々に役立つ情報をお届けします。
目次
保健師国家試験の受験資格をとるためには
出典:保健師 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
保健師国家試験の受験資格を取得するには、いくつかの条件を満たす必要があります。
看護師資格との関連性や、必要な教育課程について詳しく見ていきましょう。
保健師をめざす方は、これらの条件をしっかりと理解し、計画的に資格取得への準備を進めることが重要です。
保健師になるには保健師国家資格と看護師国家資格の両方が必須
保健師として活躍するためには、保健師国家資格の取得だけでなく、看護師国家資格を持っていることが前提になります。
そのため、保健師国家試験を受験するには、まず看護師国家試験に合格しているか、同時に受験する必要があります。
これは、保健師の業務が看護師の知識や技術を基盤としているためです。
しかし、同時受験で保健師国家試験のみ合格した場合でも、翌年に看護師国家試験に合格すれば保健師資格を得ることができます。
このように、両方の資格を取得することが、保健師として働くための必須条件となっているのです。
保健師課程を選択できる大学か専門学校に通う
保健師になるための第一歩は、適切な教育機関で学ぶことです。
保健師課程を選択できる大学や看護専門学校に通うことが、受験資格取得への近道です。
看護系大学の場合、保健師課程を選択することで、4年間で看護師と保健師の受験資格を取得することができます。
一方、看護専門学校では、まず看護師免許を取得したあと、さらに追加の教育を受ける必要があります。
具体的には、看護系大学院で2年間、または看護大学専攻科・別科、看護短期大学専攻科、保健師養成所のいずれかで1年間の専門教育を受けることで、受験資格を得ることが可能です。
これらの選択肢について、以下でより詳しく解説していきます。
自分に合った進路を見つけるために、各選択肢のメリットやデメリットをよく検討しましょう。
看護系の学校に進学した場合
看護系の学校に進学する場合、保健師国家試験の受験資格を取得するためのいくつかの道筋があります。
それぞれの道筋には特徴があり、自分の状況や目標に合わせて最適な選択をすることが大切です。
ここでは、主な3つの方法について詳しく見ていきましょう。
保健師課程のある大学に4年間通う
保健師課程が設置されている大学に入学すると、看護師資格をめざす学生と同じ4年間で保健師課程も修了することができます。
この方法は、最も効率的に両方の資格取得をめざせる選択肢の一つです。
ただし、注意すべき点もあります。
大学によっては、保健師課程に入れる人数が限られていたり、成績順でコース選択を許される場合もあります。
そのため、入学前に各大学の方針をしっかりと調べておくことが重要です。
自分の目標に合った大学を選ぶことで、スムーズに保健師への道を進むことができるでしょう。
看護師資格を取得後に、看護大学や保健師養成学校に1年間通う
すでに看護師資格を持っている方は、看護大学専攻科・別科、看護短期大学専攻科、保健師養成学校に1年間通うことで保健師国家試験の受験資格を取得可能です。
この方法は、看護師として働きながら資格取得をめざす方にも適していますが、入学するためには受験勉強をし入試に合格する必要があります。
4年制大学で同時に取得しようとすると、看護師資格の勉強と並行して広範囲の学習が必要となり、負担が大きくなるかもしれません。
それに比べ、この方法では保健師資格取得に特化した学習の時間を確保でき、比較的集中して受験資格を取得できます。
短期間で効率的に学びたい方や、すでに看護師として経験を積んでいる方にとっては魅力的な選択肢となるでしょう。
看護師資格を取得後に、看護系大学院に2年間通う
看護師資格を取得後に、看護系大学院で2年間学ぶ方法もあります。
大学院で、2年間かけてじっくり保健師課程を学ぶことができます。
保健師についての勉強だけでなく、大学院で学んだ看護の知識から、さらに発展した内容を学び研究することもできるでしょう。
ただし、大学4年間と大学院2年間に通うことになるので、卒業するまでに時間がかかるというデメリットもあります。
いち早く資格をとって働きたいと考えている人は、他の選択肢を検討すると良いでしょう。
看護師資格を取得後に、保健師コースのある4年制大学に編入する
看護師資格を取得したあと、保健師コースがある大学の3年次に編入するという選択肢もあります。
この方法で受験資格を得るには、大学で2年間学ぶことが必要です。
しかし、この選択肢を選ぶ人は近年減少傾向にあります。
その理由として、多くの学生が最初から保健師コースのある大学に入学し、看護師と保健師の資格を同時に取得しようとする傾向が強まっていることが挙げられます。
編入学の枠が限られている場合もあるため、この方法を選択する際は、希望する大学の編入学制度や募集状況をよく確認することが大切です。
外国で保健師学校を卒業、または保健師免許を取得した場合
グローバル化が進むなか、外国で保健師の教育を受けたり、資格を取得した方もいるかもしれません。
しかし、日本で保健師として働くためには、厚生労働省の認可が必要となります。
外国で保健師学校を卒業したり、保健師免許を取得した場合、直接日本の保健師国家試験を受験することはできません。
ただし、以下の7つの要件を満たしている場合は、保健師国家試験受験資格認定を受けることができます。
外国保健師学校養成所の修業年限等 ①~③のいずれかに該当すること |
①以下の要件を満たすこと ・外国保健師学校養成所の入学資格が高等学校卒業以上(修業年限12年以上)、または同等と認められる者 ・外国保健師学校養成所の修業年限が1年以上、または同等と認められる者 ・看護師学校養成所(修業年限が3年以上。外国看護師学校養成所を含む)を卒業していること。 ②保健師と看護師の統合カリキュラムにあっては、以下の要件を満たすこと ③当該国において免許制度がない場合にあっては、①および②関わらず、該当する教育内容と履修単位数が日本と同等以上であること |
教育科目の単位数 | 外国保健師学校養成所の修業年限が1年以上の場合は、履修単位数の合計が31単位以上で、保健師助産師看護師学校養成所指定規則(昭和26年文部省・厚生省令第1号)等に規定する教育内容をおおむね満たすこと
(保健師と看護師の統合カリキュラムの場合) |
教育環境 | 日本の保健師学校養成所と同等以上と認められること |
当該国の判断 | 当該国または州政府等によって正式に認められた外国保健師学校養成所であること |
外国保健師学校養成所卒業後、当該国の保健師免許取得の有無 | 原則として取得していること |
当該国の保健師免許を取得する場合の国家試験制度 | 国家試験またはこれと同等の制度が確立されていること |
日本語能力 | 日本の中学校および高等学校を卒業していない者については、日本語能力試験N1(平成21年12月までの認定区分である日本語能力試験1級を含む)の認定を受けていること |
認定を受けるプロセスには時間がかかる場合もあるため、早めに手続きを始めることをおすすめします。
また、日本の保健医療システムや法律に関する知識も必要です。
これらの学習も並行して進めると良いでしょう。
保健師国家試験受験資格のよくある質問
保健師国家試験の受験資格に関しては、さまざまな疑問が寄せられています。
ここでは、特によく聞かれる質問とその回答をまとめました。
これらの情報を参考にして、自分の状況に合わせた最適な資格取得の道筋を見つけてください。
保健師の受験資格に有効期限はある?
多くの方が気にされるのが、受験資格の有効期限についてです。
結論からいえば、保健師の受験資格に有効期限はありません。
つまり、看護師国家試験に合格したあと、すぐに翌年保健師試験を受験しなければならないという制約はないのです。
これは、じっくりと準備をして臨みたい方にとって朗報といえるでしょう。
自分のペースで勉強を進め、十分な準備ができたと感じたタイミングで受験することができます。
ただし、あまり時間を置きすぎると、学んだ内容を忘れてしまう可能性もあるので、計画的に準備を進めることをおすすめします。
保健師試験には合格したが看護師試験に落ちた場合はどうなる?
同時受験(W受験)で保健師試験には合格したものの、看護師試験に落ちてしまった場合について説明します。
この場合、翌年にあらためて保健師試験を受験する必要はありません。
しかし、重要なのは看護師資格の取得です。
保健師資格を完全に取得し、実際に保健師として働くためには、看護師国家試験に合格することが必須条件となります。
そのため、看護師試験に落ちた場合は、次回の試験に向けて再度準備を整え、必ず合格をめざす必要があります。
看護師資格と保健師資格の両方を持つことで、初めて保健師としてのキャリアをスタートさせることができるのです。
看護師として働いている場合に必要な試験は?
すでに看護師として働いている方が保健師をめざす場合、必要な試験は保健師国家試験のみです。
看護師資格をすでに持っているため、あらためて看護師国家試験を受験する必要はありません。
保健師国家試験に合格することで、晴れて保健師資格を取得できます。
これは、現役の看護師にとって大きなアドバンテージといえるでしょう。
ただし、注意すべき点があります。
保健師国家試験を受験するためには、保健師課程を修了している必要があります。
つまり、看護師として働きながら、保健師養成学校などで必要な教育を受ける必要があるのです。
勤務先の理解を得ながら、学業と仕事の両立を図ることが重要となるでしょう。
保健師の受験資格を手に入れて資格取得をしよう
保健師国家試験の受験資格取得には、いくつかの道筋があることがわかりました。
看護系大学で4年間学ぶ方法、看護師資格取得後に保健師養成学校で学ぶ方法、そして大学編入による方法など、自分に合った選択肢を選ぶことが大切です。
また、外国で資格を取得した場合は、厚生労働省の認定が必要となります。
受験資格に有効期限はないものの、看護師資格の取得が保健師として働くための必須条件であることを忘れないでください。
自分のキャリアプランや生活状況に合わせて、最適な方法を選択し、計画的に準備を進めることで、保健師という素晴らしい職業への道を切り開くことができるでしょう。
地域の健康を支える重要な役割を担う保健師をめざし、着実に歩みを進めていきましょう。