
理学療法士としてキャリアアップをめざす場合、「臨床実習指導者講習会」を受けるという選択肢があります。
講習会を修了すると、職場で実習生の受け入れが可能となり、適切な指導を行えるでしょう。
この記事では、理学療法士をめざす学生のみなさんや転職を考えている方に向けて、臨床実習指導者講習会の概要を解説します。
また、講習会を受講するメリット・デメリットもわかりやすく紹介しています。
目次
理学療法士の臨床実習指導者講習会とは
2018年に「理学療法士および作業療法士の養成施設に関する指定規則」が見直され、実習指導の質を向上させるために、臨床実習で指導にあたる理学療法士には以下の条件を満たす必要があると定められました。
- 免許取得後5年以上業務に従事している
- 指定された臨床実習指導者講習会を受講している
以下より、臨床実習指導者講習会の受講要件、開催要項、注意点をそれぞれ解説します。
受講要件
臨床実習指導者講習会の受講要件は以下の2つです。
- 理学療法士としての実務経験が満4年以上あること
- 講習会の講義・演習をすべて受講可能であること
「日本理学療法士協会の会員であるか否か」は、受講要件に定められていません。
よって、非会員の方でも講習会への参加は可能です。
開催要項
臨床実習指導者講習会の開催日時は、各都道府県によって異なりますが、基本的には2日間にわたって開催されます。
合計16時間の受講が必要とされ、長丁場になるでしょう。
あらかじめ日程調整を行い、講習会に専念できる環境を整えておきましょう。
講習会の受講費用はその講習によって異なりますが、協会の加入者は無料としているところもあります。
新型コロナウイルスの影響を受けて、一時はWeb開催が主流となりましたが、最近では対面式と並行して実施している都道府県もあります。
例えば、令和6年度の東京都の講習会は、Web開催と対面開催のどちらかを選択可能です。
注意点
臨床実習指導者講習会に参加する際には、「実務経験申告書」を提出しましょう。
実務経験の日数を記載し、職場で内容の証明を受ける必要があります。
また、途中退席や遅刻は原則として認められません。
一日だけの受講や一部分のみの受講では、修了要件を満たさないためです。
Web受講の場合は、通信環境の不具合によって受講できない可能性もあるため、前もって環境の準備や調整をしておきましょう。
演習はグループワーク形式で行います。
Web受講では演習の都合上、スマートフォンやタブレットでの参加は不可となる可能性があるので、事前に確認しましょう。
理学療法士が臨床実習指導者講習会を受講するメリット
理学療法士が臨床実習指導者講習会を受講するメリットは、以下の3つです。
- 臨床実習の受け入れができる
- キャリアアップにつながる
- 指導方法を学べる
それぞれのメリットについて詳しく説明します。
臨床実習の受け入れができる
臨床実習指導者講習会を受講すると、臨床実習の受け入れが可能になります。
実習生を受け入れることで新卒者を採用しやすくなるうえに、自身の知識や技術を整理し、再確認する機会にもなるでしょう。
キャリアアップにつながる
臨床実習指導者講習会を修了すると、理学療法士としてキャリアアップを図れるでしょう。
講習会を修了すると「臨床実習指導者」として国に登録されるからです。
また、実習生の指導を経験することで、指導者としてのスキルが向上し、上司や同僚からの評価も高まります。
したがって、昇進や職場内での立場を強化するうえで、臨床実習指導者講習会の受講は有効といえるでしょう。
指導方法を学べる
臨床実習指導者講習会では、指導方法や評価方法、ハラスメント防止など、実習指導に必要な知識やスキルを学べます。
講習会で学んだ知識は実習生だけでなく、新人職員の指導にも応用可能です。
講習会で学んだ原理や手法を職場で活用すると、より効果的な指導が行えるようになり、職員全体のスキルアップにもつながるでしょう。
理学療法士が臨床実習指導者講習会を受講するデメリット
理学療法士が臨床実習指導者講習会を受講するデメリットは、以下の2つです。
- 休日や就業時間外での受講が必要
- 実習生を指導する負担が増える
臨床実習指導者講習会を受講すると、今まで以上に時間やタスクの管理が求められるでしょう。
詳しくは以下で解説します。
休日や就業時間外での受講が必要
臨床実習指導者講習会は土日に開催されることが多く、9時前後に開始して19時頃に終了する場合もあります。
そのため、休日を利用したり、通常の業務時間よりも長い時間を受講に費やしたりする必要が出てくるでしょう。
ただし、職場によっては講習を業務の一環として扱ってもらえる場合があるため、事前に職場に確認してみましょう。
実習生を指導する負担が増える
臨床実習指導者講習会を受講したあとは、実習生の指導を任されます。
実習期間は長い場合で2ヵ月程度におよび、通常の業務に加えて実習生の指導を行うため業務負担が増加します。
実習生の受け入れは、指導者1名に対して2名が推奨されており、複数の実習生を受け持つ点も負担が増す一因です。
必須の要件ではないので、業務と実習指導の負担を考慮して受け入れ人数を調整しましょう。
また、臨床実習では、実習生一人ひとりに合わせた指導を行うため、学生の特性や学習進度によっては、指導の負担が大きくなる場合もあるでしょう。
理学療法士としてキャリアアップをめざすなら臨床実習指導者講習会の受講は大切
理学療法士としてのキャリアアップをめざす方には、臨床実習指導者講習会の受講をおすすめします。
臨床実習指導者になるには「実務経験が4年以上あり、講習会の全講義・演習を受講すること」が必須条件です。
臨床実習指導者講習会を受講すると、実習生の受け入れが可能になり、新卒者の採用につながるでしょう。
また、自身のキャリアアップや職場の新人教育にも役立ちます。
理学療法士としてのステップアップをお考えの方は、ぜひこの講習会を受講し、専門性を高めましょう。