
理学療法士は、医療職としては比較的残業が少ない職種です。
しかし、まったく残業がないわけではありません。
理学療法士の残業の原因はさまざまありますが、なかでも、診療記録や関係書類の作成、会議や情報共有、勉強会などが代表的です。
残業を減らすためには、空いた時間を使って記録や書類を書いたり、業務体制を見直したりして、業務効率化を図る必要があります。
目次
理学療法士の平均残業時間は?
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士を含むリハビリ職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士)の平均残業時間は、月5時間程度です。
医師の場合は月18時間程度、薬剤師は月9時間程度ですから、理学療法士の残業時間は短いといえるでしょう。
また、2016年のデータですが、厚生労働省の資料によると、理学療法士一人一回あたりの残業時間は、医療機関で53.7分、介護福祉で53.3分ほどでした。
厚生労働省の別の資料でも、1週間における残業数は「2時間未満」と回答している方が最も多くなっています。
理学療法士が知っておきたい残業代の計算方法
正当な残業代を受け取るためには、残業代の計算方法を知っておく必要があります。
残業代は「週40時間・1日8時間」を超えた部分に対して支払われるもので、残業に対して発生する賃金は、1時間あたりの賃金の25%増となります。
計算式は以下のとおりです。
【残業代の計算式】
1時間あたりの賃金(時給)×1.25(割増率)×残業時間
【時給の計算式】
月給÷所定労働時間÷所定労働日数
また、月の残業時間が60時間を超える場合、割増率は1.5倍になります。
休日出勤の場合は、割増率は1.35倍です。
残業代を正しく受け取るためには、自分の給与明細をしっかりチェックし、残業時間と残業代が正しく計算されているかを確認することが大切です。
もし疑問点があれば、上司や人事部に確認しましょう。
理学療法士が残業する原因は?
理学療法士が残業する主な理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 診療記録・関係書類の作成
- 会議・情報共有
- 勉強会
それぞれ見ていきましょう。
診療記録・関係書類の作成
理学療法士が残業する理由のうち、最も多いのが「診療記録」や「関係書類の作成」です。
理学療法士はリハビリ内容を記録する診療記録の作成はもちろん、リハビリ計画書や退院時のサマリー、カンファレンスなどの会議録など多くの書類を作成します。
例えば、急性期病院では、患者さんの入退院のサイクルが早いため、新規の患者さんの書類作成と退院する患者さんの書類作成が同じ日になる場合もあります。
書類作成の量が多い施設で効率的な作成方法が確立していないと、残業が多くなるのです。
また、施設によっては、1日に取得するリハビリ単位数のノルマが設定されています。ノルマを達成するために、施設が開いている時間帯はリハビリ業務に追われてしまいます。
その結果、記録や書類の作成が後回しになり、残業せざるを得なくなるのです。
会議・情報共有
理学療法士は、会議や他職種への情報共有のために残業することもあります。
リハビリの現場で行われる会議は「カンファレンス」と呼ばれ、普段別の部署にいるスタッフが集まり、患者さんの状況や治療の方向性について話し合います。
しかし、関係するスタッフすべてのスケジュールを合わせるのは簡単ではありません。
その場合、カンファレンスの時間を残業によって捻出することになるでしょう。
また、同僚の理学療法士や医師や看護師などに対してリハビリの状況の共有に時間がかかる場合も、残業が発生しやすくなります。
勉強会
勉強会・研修も、理学療法士が残業する原因の一つとなっています。
理学療法士は資格を取ったあとも勉強を続け、知識をアップデートしなければなりません。
そのため、研修・勉強会には定期的な出席が求められます。
しかし、研修・勉強会は休日や勤務後など、勤務時間外に実施されることが多く、残業をして参加するケースも少なくありません。
また、勉強会は本来であれば勤務時間に含まれるはずですが、なかには「任意参加」という形にすることで、勤務時間として認めないクリニックや施設が存在するのも実状です。
理学療法士の残業を減らすための方法
ここでは、理学療法士の残業を減らすための方法として、以下の3点を紹介します。
- 空いた時間を使って記録・書類を書く
- 業務体制を見直す
- 残業が少ない職場に転職する
順番に見ていきましょう。
空いた時間を使って記録・書類を書く
空いた時間を効果的に利用し、記録・書類の作成を済ませてしまうことで、残業を減らすことができます。
例えば、患者さんが少ないときや、患者さんが電気治療を受けているときなどは、記録や書類を書くチャンスです。
このような空いた時間に雑務を終わらせることができれば、残業時間も減っていくでしょう。
ただし、すきま時間で記録・書類を完成させるのは難しい場合もあります。
そのような場合は、大まかな内容をメモでまとめておくことをおすすめします。
あとから加筆する形にすれば、作成時間の短縮につながるはずです。
業務体制を見直す
働いているクリニックや施設の業務体制に問題があり、残業が多くなっている場合は、上層部に体制の見直しを要求してみましょう。
現場の不満や要望を上司に伝えてみたり、削減できる業務を洗い出したりすることで、業務体制の改善につながるかもしれません。
例えば、IT化を進めて診療記録や関係書類の作成時間を減らせば、残業削減につながります。
また、自分一人では変えられなくても、上司や同僚の賛同を集めることができれば、残業時間の少ない働きやすい職場を作れる可能性があります。
残業が少ない職場に転職する
どれだけ空いた時間を利用しても、上層部に問題点を訴えかけても問題が改善されない場合は、残業が少ない職場に転職するのも一つの方法です。
転職先を選ぶ際には、業務時間内の作業内容やミーティング、勉強会をどのように行っているか、応募前に確認しておきましょう。
このとき、求人情報をチェックすることはもちろんですが、実際に働いている人からの話を聞くことができればより効果的です。
また、転職をする際は、残業の少なさだけではなく、給料ややりがい、将来性など、さまざまな要素を考慮することも重要です。
理学療法士の残業の実態を知って対策法を考えよう
理学療法士の残業は、他の医療職と比較しても少ない水準にあります。
しかし、まったく残業がないわけではありません。
理学療法士が残業をする主な理由は、診療記録・関係書類の作成、会議や情報共有、勉強会などです。
残業を減らすためには、空いた時間を有効活用して記録や書類を書いたり、業務体制を見直したりすることが大切です。
どうしても改善されない場合は、残業が少ない職場に転職することも一つの選択肢といえるでしょう。