
不自由になった身体機能を改善するため、あらゆる療法を駆使してリハビリテーションを行う理学療法士。
理学療法士はPTとも呼ばれ、リハビリテーションのスペシャリストとして、さまざまな施設で活躍しています。
しかし、理学療法士の情報を調べていくと、作業療法士・言語聴覚士や、PT・OT・STなどの表記もよく目にするため、混乱してしまう人もいることでしょう。
今回は、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の違いを、くわしく解説します。
目次
PT(Physical Therapist)とは理学療法士の略語
理学療法士を表すPTとは、「Physical Therapist」の略語です。
英語でphysicalは「物理的・身体の」、therapistは「治療者・療法士」という意味があり、患者さんの身体に直接働きかけるような療法を行い、治療する人のことを「Physical Therapist」、つまり理学療法士と呼んでいます。
理学療法士が行うのは、立つ・座る・歩くなど、人間の基本動作をするための機能回復や、将来的に悪化させないための予防的リハビリテーションです。
健康なときにはあまり意識することがありませんが、人間は毎日さまざまな動作を組み合わせて生活しています。
しかし、怪我や病気などで身体機能が低下してしまうと、今まで普通にできていた動作ができません。
理学療法士は、温熱療法や電気療法などを駆使して身体機能を回復させたり、それ以上衰えないように予防したりする、理学療法のスペシャリストです。
理学療法士の仕事内容や資格については、以下でわかりやすく解説しています。是非ご参照ください。

作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)との違い
理学療法士の情報を調べていると、作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)の情報もよく見かけるのではないでしょうか。
両方とも、理学療法士と同じくリハビリテーションの現場で活躍する職業ですが、専門とする分野などが違います。
比較項目 | 理学療法士(PT) [P]Physical [T]Therapist直訳:物理的・身体の治療者・療法士 |
作業療法士(OT) [O]Occupational [T]Therapist直訳:職業の・職業的な治療者・療法士 |
言語聴覚士(ST) [S]Speech [T]Therapist直訳:話すこと・言語能力の治療者・療法士 |
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リハビリを行う対象 | 運動機能が低下した方(病気やケガ、高齢など、原因は問わない)[5] | 日常生活に支援を必要とする方(病気やケガ、高齢など、原因は問わない) | 先天性・後天性に関わらず、言語機能・聴覚機能・咀嚼嚥下機能に問題がある方 |
リハビリの分野 | 運動機能回復、悪化させないための予防 | 生活作業に必要な動作 | 言語障害・音声障害・嚥下障害 |
就職先 | ・病院、診療所 ・リハビリテーションセンター ・老人福祉施設 ・児童福祉施設・身体障害者福祉施設 ・地域支援包括センター など |
・病院 ・介護施設 ・作業療法士養成校 ・児童福祉施設 など |
・病院、診療所 ・高齢者施設 ・放課後デイサービス ・児童発達支援施設 ・医療機器メーカー など |
必要な資格 | 理学療法士免許(国家資格) | 作業療法士免許(国家資格) | 言語聴覚士免許(国家資格) |
それぞれの違いについて、詳しく解説していきます。
リハビリを行う対象
理学療法士と作業療法士、言語聴覚士ではリハビリを行う対象が異なります。
それぞれの対象者は以下のとおりです。
【理学療法士】
- 原因問わず、病気やケガ、高齢や手術で運動能力が低下した人
【作業療法士】
- 病気やケガ、生まれながらの障害があり、日常生活に支援を必要とするすべての人
【言語聴覚士】
- 言語機能・聴覚機能・咀嚼嚥下機能に問題がある人
このように、リハビリを行う仕事であっても対象者が違うことを理解しておきましょう。
リハビリの分野
では、次にリハビリの分野の違いを見ていきましょう。
【理学療法士】
- 立つ・座る・歩くなど、人間の基本動作をするための機能回復や、将来的に悪化させないための予防
【作業療法士】
- 患者さんが生活上必要とする動作をサポート
【言語聴覚士】
- コミュニケーションや食事がスムーズになる手助け
このように、理学療法士は運動機能を全体的にサポートします。
一方で、作業療法士は患者さんにとって生活に必要な動作を支援します。
言語聴覚士との違いは、理学療法士が運動機能回復のリハビリを行うのに対し、言語聴覚士は言語障害や音声障害、嚥下障害のリハビリを行う点です。
就職先
ここでは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士の就職先を紹介します。
ただし、それらには大きな違いはありません。
【理学療法士】
病院や診療所などの医療機関
- リハビリテーションセンター
- 介護施設
- スポーツ分野
- 教育機関
【作業療法士】
- 病院や診療所などの医療機関
- 介護施設
- 作業療法士養成学校
- 児童福祉施設
【言語聴覚士】
- 病院や診療所などの医療機関
- 介護老人保健施設、居宅サービス事業所などの高齢者施設
病院で働く理学療法士は、整形外科や心臓外科、脳神経外科に携わることが多い傾向です。
作業療法士は急性期から回復期まで、幅広い患者さんを担当するのが特徴です。
言語聴覚士は、リハビリテーション科や形成外科などで活躍します。
必要な資格
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士それぞれに必要な資格は以下のとおりです。
【理学療法士】
理学療法士免許
【作業療法士】
作業療法士免許
【言語聴覚士】
言語聴覚士免許
いずれも国家資格であり、免許を交付されないと働くことができません。
また、試験を受けるには受験要件を満たす必要があります。
理学療法士の受験要件は、養成学校で3年以上学ぶことです。
作業療法士と言語聴覚士の資格については、以下のページで詳しく紹介しています。
ぜひ参考にしてください。
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の選び方
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)は、いずれもリハビリテーションのスペシャリストです。
3つとも医療・福祉に関連する仕事なので、就職先となる職場も主に医療機関や福祉施設などになり、大きな違いは見られません。
しかし、同じような職場でも、どの職業を選ぶかによって仕事内容は変わってきます。
理学療法士は、人間の日常生活に必要な運動機能をケアするのが仕事です。
立つ・座る・歩くなどの基本動作のリハビリテーション、と考えるとわかりやすいでしょう。
作業療法士は、患者さんの生活に必要な動作や社会復帰をめざしたリハビリテーションを行うのが仕事です。
理学療法士と似ていますが、より患者さんの生活動作に寄り添ったリハビリテーションを行う、と考えてください。
言語聴覚士は、聴く・話す・食べるという動作を重点的に支援するのが仕事です。
物理的なリハビリテーションはもちろんですが、コミュニケーションがスムーズになるよう周囲の人に指導したり、思考や認知など脳の働きをケアしたりすることもあります。
それぞれの仕事の内容の違いを理解して、具体的な業務内容をイメージしながら、より興味のある仕事を選びましょう。
理学療法士になる方法をくわしく知りたい方は、以下のページもご参照ください。
自分に合ったリハビリテーション資格を取ろう
リハビリテーションの現場で活躍している理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)は、それぞれに専門分野があり仕事内容や就業先などが異なります。
3つの違いを理解し、どのように働いているのか具体的なイメージを持てれば、より自分に合った職業が選べることでしょう。
3つの職業の特徴をよく確認し、自分に合ったリハビリテーション資格を取得してください。