リハビリテーションの専門職である理学療法士は、身体的な障がいをもつ対象者に、医師の指示のもと運動療法や物理療法を行います。
理学療法士として働くためには、必要な知識と技術を養成校で学び、国家試験に合格することで得られる国家資格が必要です。
理学療法士を養成する学校には、大学や短大、専門学校などいくつかの種類があります。
なかには、通信講座を開講している学校もあります。
社会人として働きながら、理学療法士の資格を取りたいと考え、通信講座を検討している方もいるかもしれません。
理学療法士の資格は通信講座のみで取得することができるのか、詳しく解説します。
目次
通信講座だけでは理学療法士になれない
結論から言うと、通信講座だけで理学療法士になることはできません。
理学療法士になるために、対面の学校に通う必要がある理由を以下で説明します。
理学療法士になるための受験資格
理学療法士になるためには、理学療法士国家試験に合格する必要があります。
しかし、理学療法士国家試験は、誰でも受験できるわけではありません。
必要な条件を満たし受験資格を得る必要があるのです。
その条件として、厚生労働省は養成校で3年以上の教育課程を修了した者でなければならないと定めています。
養成校は文部科学大臣または都道府県知事が指定した学校で、以下の4種類です。
- 大学(4年制)
- 短期大学(3年制)
- 専門学校(3年制・4年制)
- 特別支援学校(視覚障がい者が対象)
これらはすべて、実際に通って対面授業が行われる学校であり、通信講座のある学校は含まれていません。
通信講座だけでは、理学療法士国家試験の受験資格を得ることができず、理学療法士になることができないのです。
通信講座では臨床実習を受けられない
理学療法士として患者さんにリハビリテーションを提供する際には、解剖学や運動学、生理学などを学習してしっかりと知識をインプットしたうえで、実際に患者さんのそばで動作を指導したり、身体を支えたりなどの実技を行う必要があります。
そのため理学療法士の養成校では、机に向かって行う授業学習だけではなく、リハビリの実践方法や現場での業務を学ぶための実技演習や臨床実習がカリキュラムに組み込まれています。
臨床実習では、実際の現場で現役の理学療法士の指導のもと、患者さんへのリハビリ計画の立案・実施なども行います。
通信講座とは学校には通わず、自宅など離れた場所でテキストやインターネットの資料を用いて行われる教育を指しますが、この方法では実技演習や臨床実習を受けることができません。
そのため、通信講座のみでは理学療法士をめざすことはできないのです。
社会人が通信講座以外の方法で理学療法士をめざすには
通信講座のみで理学療法士をめざすことは難しいと知り、諦めるしかないとがっかりした方もいるかもしれませんが、安心してください。
昼間は働きながら、夜の時間を活用するという方法があります。
夜間部のあるスクールを検討する
数は限られますが、全国に夜間部を採用している理学療法士専門学校があります。
昼間のコースでは9時から17時頃までで設定されている授業時間ですが、夜間部のコースでは18時から21時頃までと遅い時間で短く設定されています。
日中は働きながら夜間は学校に通うことになり、体力的には負担の多い生活にはなりますが、社会人でも理学療法士になるための授業・実習を履修し、国家試験の受験資格を取得することが可能です。
夜間部には幅広い年代、さまざまな経歴をもつ人が通うことが多く、年齢や経歴を気にせず学校生活に溶け込みやすい傾向があります。
また、昼間のコースより授業数が少なく、学費が安く済む場合があることも、社会人にとってはうれしいポイントです。
国家試験対策として通信講座を利用する
働きながら国家試験対策の勉強もしなければならない社会人の方の場合、自分で必要な教材を集め、勉強の計画を立て、見直しや再度のインプットを行うための、まとまった時間を確保するのが難しい場合があるかもしれません。
その際に活用したいのが、国家試験対策のための通信講座です。
通信講座のみで国家試験受験資格を得ることはできませんが、国家試験対策のための通信講座は存在します。
参考書、テキスト、問題集などが送られてくることに加え、演習課題や模擬試験を受けられたり、インターネット上で講師に質問ができたりと、手厚いサポートを受けることができます。
通信講座のみでは無理でも社会人が理学療法士になる道はある
リハビリ専門職である理学療法士は、通信講座のみでめざすことはできません。
しかし、社会人で理学療法士をめざしている方には、夜間部のあるスクールという選択肢もあります。
通信講座のみでは難しいからといって理学療法士になることを諦めるのではなく、現職との折り合いをつけつつ、自分にあった道を模索してみましょう。