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歯科医師は不足している?データから現状・懸念点を解説

「歯科医院の数はコンビニより多い」と耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

今回は、歯科医師をとりまく現状と今後考えられる状況を、データをもとに解説します。
歯科医師をめざしたい人や興味がある人は、ぜひご覧ください。

歯科医師は不足している?人数や歯科診療所数の推移

はじめに、歯科医師数・歯科医院数の推移を、データをもとに解説します。

歯科医師数の推移

歯科医師数 歯科診療所数 歯科医師数/10万人
昭和57年 58,362人 41,616 49.2人
昭和59年 63,145人 43,926 52.5人
平成8年 855,18人 59,357 67.9人
平成22年 101,576人 68,384 80.4人
平成30年 104,908人 68,613 83.0人
令和2年 107,443人 67,874 85.2人

厚生労働省が2年に一度行っている「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、歯科医師の総数は平成30年~令和2年の間に2,535人(2.4%)増加していますが、それに対して、歯科診療所数は近年減少しました。

より長い期間で見ると、歯科医師の総数は昭和57年から令和2年までの38年間で49,081人増加しており、歯科医師数は年々増加し続けていることがわかります。

歯科医師数の増加の主な要因は、歯科大学や歯学部の急増と考えられます。
昭和40年代から50年代にかけて、歯科医師不足による未治療むし歯の増加が大きな問題となりました。
これを受け、また同時期に提唱された「1県1医大構想」も後押しとなり、歯科大学・歯学部が一気に4倍近く新設されたのです。

こうした背景により歯科医師数が急増したことで、今度は逆に歯科医師数の過剰が危惧されるようになったのが現状でしょう。

国が定める歯科医師数の理想

令和2年における歯科医師数は107,443人で、人口10万人あたりでは85.2名となっています。

平成27年、日本歯科医師会はこの現状を歯科医師数の過剰ととらえており、適正歯科医師数は82,000人程度、新規参入歯科医師は1,500人程度が上限であるという見解を示しました。
それが実現すれば、20年後の2045年には人口10万人あたりの歯科医師数が71名になり、理想的であるとしています。

歯科医師の不足が懸念されている理由

歯科医師数が過剰であると考えられている一方で、国家試験の合格率・合格者数の低下や歯科医師数の地域格差などから、歯科医師数が再度不足するリスクが懸念されているのも事実です。

今後歯科医師数が減少するであろうと考えられている要因は、主に以下の5つです。

  • 国家試験の合格率・合格者数の低下
  • 歯科医師数に地域格差が発生
  • 歯科医師平均年齢の上昇
  • 歯科医院の半数以上は後継者難
  • 超高齢社会による歯科診療への需要拡大

順に解説します。

国家試験の合格率・合格者数の低下

歯科医師国家試験の合格率・合格者数は、近年大幅に減少しました。

平成13年の合格者数・合格率が3,125人・90.7%であったのが、平成23年は2,400人・71%と低水準になっています。
今後もこの傾向が続くとなると、歯科医師不足に陥る可能性があるでしょう。

合格率の低下には、国による歯科医師国家試験の合格基準の引き上げが影響していると考えられます。

歯科医師数に地域格差が発生

歯科医師数に地域格差があることも、今後の歯科医師不足に影響をおよぼすとされる要因の一つです。

各都道府県の人口10万人あたりの歯科医師数を見ると、最も多い東京都では約120人、最も少ない福井県では約47人と、大きく異なっています。

実際に、歯科医療過疎地域ではすでに歯科医師数の減少が始まっています。

歯科医師の平均年齢の上昇

歯科医師の平均年齢の上昇も深刻な問題です。

令和2年12月31日における歯科医師の平均年齢は、52.4歳でした。
また、歯科医師数を年齢階級別に見ると、50歳~59歳が全体の22.8%、60歳~69歳が全体の22.2%と、50歳以上の歯科医師が45%を占めています。

今後若手の歯科医師が増加しないと、50歳以上の歯科医師が現役を退いた際に、歯科医師が減少してしまうことが予想されます。

歯科医院の半数以上は後継者難

歯科医院の多くが後継者難であるのも、歯科医師不足が懸念される一因です。
歯科医院の後継ぎがいない場合、廃院によって歯科医院数が減少し、地域住民が歯科医院を受診しづらくなってしまうことも考えられます。

歯科医師の平均年齢が高齢であることは先述のとおりですが、歯科医師数が過剰となっているのも問題です。

超高齢社会による歯科診療への需要拡大

超高齢社会により、今後ますます歯科医院・歯科医師への需要が高まることが予想されます。

要介護状態の高齢者のうち歯科治療が必要な人は64.3%ですが、実際に歯科受診ができているのはわずか2.4%です。

介護度が高いと歯科医院の受診が難しいことも多く、高齢化が進むにつれて歯科訪問診療への需要が高まっていきます。
しかし、実際に訪問診療を行っている歯科医師は高齢者10万人に対して約40施設と、極めて少ないのが現状です。

訪問診療に対応できる歯科医師が増加しない限り、高齢者に対する適切な歯科疾患の予防や治療がなされなくなってしまいます。

特に歯周病やオーラルフレイルは、心臓病やがん、肥満、認知症などの疾患との関連性も指摘されており、歯の健康が保たれないことによる弊害は大きいことでしょう。

また、口腔衛生状態が保持されないことや唾液の減少は、誤嚥性肺炎発症のトリガーともなります。
十分な歯科診療を受けられないと、高齢者が自分の歯・口で食事を楽しめなくなり、QOLの低下をも招く可能性があります。

歯科医師をとりまく現状と今後について常に把握しておこう

今回は、歯科医師をとりまく現状と、今後の懸念点を解説しました。

歯科医院数・歯科医師数は現時点では過剰と考えられているものの、地域格差や高齢の歯科医師のリタイア後のことを考えると、今後不足してしまう可能性があります。

歯科医師に興味がある人は、歯科医師の需要と供給、現在と今後の動向にアンテナを張り、正しく理解していきましょう。

歯科医師の将来性については、以下の記事でより詳しく解説しています。

執筆者について

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