
理学療法士は、身体に障がいがある方や運動機能が低下している方に対し、リハビリを実施することで自立した生活を送れるよう支援する仕事です。
基本動作をはじめ、屋外での歩行訓練などリハビリの内容は多岐にわたりますが、ピラティスを取り入れたエクササイズもその一つに数えられます。
そこで、理学療法士として働きながらピラティスの資格を取得したいと考える方もいるかもしれません。
理学療法士がピラティスの資格を取得した場合、スキルが身につくだけでなく、働き方の選択肢が増えるなど、さまざまなメリットが期待できるでしょう。
本記事では、理学療法士がピラティスに関する資格を取得するメリットと、資格の取得方法を解説します。
目次
理学療法士がピラティスの資格を取得するメリット
理学療法士がピラティスの資格を取得した場合、次のようなメリットが得られます。
- スキルアップにつながる
- 働き方の幅が広がる
- 転職に有利になりやすい
- 給料アップが期待できる
- 自分自身の体を整えることができる
順に詳しく見てみましょう。

スキルアップにつながる
理学療法士がピラティスの考え方を治療に取り入れることで、より質の高いリハビリを提供できるようになります。
ピラティスは単なる運動療法ではなく、心身の改善をめざす総合的な治療法であり、患者さんが抱えている痛みに対して、より根本的なアプローチが可能です。
また、ピラティスを学ぶことで、理学療法士として提案できるリハビリのパターンが増え、患者さんに合わせたプログラムを作成する知識もつきます。
ピラティスの資格取得は、理学療法士としてのスキルアップに直結するといえるでしょう。
働き方の幅が広がる
理学療法士は主に病院や介護施設で働きますが、ピラティスの資格を取得すれば、その枠を超えた働き方がしやすくなります。
フィットネススタジオでの仕事や、ピラティスインストラクターとしての独立開業など、キャリアの選択肢が広がるでしょう。
また、業務委託やアルバイト、オンラインレッスンなどで副業を始めることも可能です。
転職に有利になりやすい
ピラティスの資格を持っている理学療法士は、病院や介護施設で高く評価してもらえる可能性があります。
なぜなら、ピラティスは高齢者にとっても安全で負担の少ないリハビリとして活用でき、インナーマッスルやバランス機能の強化が期待できるためです。
さらにスポーツジムやフィットネスジムなど、より多くの職場が転職先として考えられるでしょう。
このように転職活動がしやすくなる点も、ピラティス資格を取得するメリットの一つです。
給料アップが期待できる
ピラティスの資格を評価されることで、給料アップにつながる可能性があります。
特に、ピラティスインストラクターとして働く場合、理学療法士の資格があることで優遇されるケースも珍しくありません。
理学療法士とピラティス資格のダブルライセンスは、収入面でもプラスに働くでしょう。
自分自身の体を整えることができる
ピラティスを学ぶことは、自分自身の体を変化させる良い機会にもなります。
患者さんへの指導や自己学習を通して、ピラティスの効果を自分の体で感じられるでしょう。
ピラティスの資格取得は、理学療法士としてのスキルアップだけでなく、自身の健康増進にもつながります。
理学療法士がピラティスの資格を取得する方法
理学療法士がピラティスの資格を取得するには、必要な教育を受けて試験に合格しなければなりません。
国家資格である理学療法士とは異なり、ピラティスは民間資格です。
まずは自分に合った資格を選択し、取得要件を満たしていきましょう。
取得する資格を決める
ピラティスの資格は、マットピラティスとマシンピラティスの大きく2種類です。
マットピラティス | マシンピラティス |
・器具が必要なく、ピラティスの基本を学べる ・導入費用が抑えられる |
・専用の器具を使用して、効果的なエクササイズを実施できる ・導入費用がかかる |
ピラティスの資格を認定している団体は多く存在しますが、国際的な水準を満たした主な団体(PMA加盟団体)には、次のようなところが挙げられます。
- BASI
- FTP Pilates
- PHI Pilates など
受講内容や日程、受講方法、費用などを考慮して、自分に合った資格を選びましょう。
資格取得に必要な講座を受講して試験に合格する
資格取得には、各団体が設定する講座の受講が必要です。
講座のなかには、通学形式だけでなくオンラインで受講できるものもあります。
講座を修了後、認定試験に合格することで資格取得となるため、試験に向けて計画的に受講していきましょう。
ここでは国際的な基準を満たしている団体として、先述したBASIピラティス、FTP Pilates 、PHI Pilatesの試験の概要を紹介します。
BASIピラティス
BASIピラティスには「マット認定資格」と、マット・マシン両方の資格を取得できる「コンプリヘンシブ認定資格」があります。
どちらにも共通する資格取得要件は、次の3つです。
- 決められた日程の授業にすべて出席
- 課題を提出
- 認定試験に合格
マット認定資格とコンプリヘンシブ(マット&マシン)認定資格の詳細は、下表をご参照ください。
マット認定資格 | |
授業 | 合計10時間の動画学習、6日間の授業受講(通学またはオンライン) |
課題 | 自己実践 100時間 BASIのレッスンを見学 20時間 指導練習 30時間 |
認定試験 | 筆記試験 実技試験 (ムーブメント試験およびティーチング試験) |
コンプリヘンシブ認定資格 | |
授業 | 12日間の授業受講 |
課題 | 自己実践 200時間 BASIのレッスン見学 100時間 指導練習 200時間 |
認定試験 | 筆記試験 実技試験(ムーブメント試験およびティーチング試験) |
FTP Pilates
FTP Pilatesの資格試験は、筆記と実技の2構成で行われます。
試験内容や合格基準は非公開となっているため、各コースの授業でしっかりと学びましょう。
FTP Pilatesの場合、マシンピラティスの資格はありません。
FTP Pilatesは以下3つのコースがあります。
FTPベーシックマットピラティス | FTPベーシックマットピラティスプラス | FTPマタニティピラティス | |
受験要件 | なし | FTPベーシックマットピラティスの資格保有 | FTPに限定せず、マットピラティスインストラクターの資格保有 |
習得内容 | 初心者向けピラティスの基本技術と指導方法 | ベーシックよりさらにレベルの高い知識と技術 | 妊娠中・出産後の方に向けたピラティス指導 |
コースの詳細 | ● ピラティスの歴史 ● ピラティスの法則 ● ピラティスムーブメントコンセプト ● ベーシックマットピラティスエクササイズ ● 指導者としての成長・クラスデザイン など |
● ピラティス動作のコンセプト 身体力学 ● リラクゼーションとリリースエクササイズ ● ベーシックマットピラティスプラスのエクササイズ ● ピラティスの歴史的記述 ● クラスデザインについて |
● ピラティス動作の理念と妊娠 ● エクササイズ選択時の考慮事項 ● 出産後の考慮事項 ● 帝王切開後のエクササイズ手順 ● 妊娠中におけるピラティスエクササイズ |
PHI Pilates
PHI Pilatesには、マットⅠとマットⅡのコースがあります。
試験では、受講者同士でパートナーを組み、試験官の前で実技指導を行うほか、エクササイズの効果や姿勢、修正方法、機能解剖学などに関する口頭試問も実施されるのが特徴です。
なお、PHI Pilatesインストラクターの資格は、2年で更新が必要になります。
必要な継続教育単位(CEU)を取得し、忘れずに資格を更新しましょう。
理学療法士がピラティスの資格を取得すれば働き方の可能性が広がる
理学療法士がピラティスの資格を取得する場合、スキルアップや給料アップにつながるとともに、キャリアの選択肢が広がります。
働ける場所が増えることで、転職を考えた際も有利になるかもしれません。
ピラティスの資格には多くの種類があるため、まずは自分に合った資格を見つけることから始めてみてください。
講座受講のあとは認定試験への合格が必要ですが、晴れて資格を取得できれば、理学療法士とのダブルライセンスでキャリアの可能性がぐっと広がるでしょう。