
理学療法士は、医療・福祉業界で働く専門職です。
退職金制度は働く人にとって重要な関心事ですが、理学療法士の退職金はどのようになっているのでしょうか。
本記事では、理学療法士の退職金制度や勤続年数別の相場について解説します。
理学療法士として働く際の参考にしてください。
目次
理学療法士の退職金制度
理学療法士は多くの場合、医療・福祉業界で働いています。
この業界の退職金給付率は75.5%であり、全産業の74.9%とほぼ同等の値になっています。
退職金制度としては、以下の3つが代表的です。
- 退職一時金制度
- 確定給付企業年金制度
- 確定拠出年金制度(企業型DC)
各退職金制度の概要を表で説明します。
退職金制度 | 制度の概要 |
退職一時金制度 | 退職時に一時金として退職金を支給する制度 |
確定給付企業年金制度 | あらかじめ定められた年金額を一定期間にわたって支給する制度 |
確定拠出年金制度(企業型DC) | 従業員が自ら運用し、その運用実績に基づいて年金額が決まる制度 |
医療・福祉業界では、退職一時金制度のみ利用している企業が86.9%と、他の産業に比べ最も多くなっています。
退職年金制度のみや退職一時金制度と退職年金制度を併用している企業は、少ない状況です。

理学療法士の退職金の支給率
退職金の主な計算方法は、基本給の額によって変動する基本給連動型か、勤務年数に応じた退職金の額があらかじめ定められている定額型の2パターンがあります。
産業別の退職金制度の有無のデータによると、医療・福祉の退職金制度導入率は75.5%です。
理学療法士だけのデータはありませんが、これに近い数値と考えられます。
具体的な計算方法の一例として、基本給連動型の場合は以下のような計算式が用いられます。
退職金 = 基本給 × 支給率
支給率は企業によって異なりますが、一般的には勤続年数が長くなるほど高くなる傾向にあります。
理学療法士の退職金の相場はいくら?
それでは、理学療法士の退職金の相場について、勤続年数別に見ていきましょう。
東京都産業労働局の中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)より、医療・福祉業界におけるモデル退職金を紹介します。
モデル退職金とは、学校を卒業してすぐ入社した人が、普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準を指します。
勤続3年の場合
勤続3年の場合、医療・福祉業界のモデル退職金は150,000円となっています。
一方、全産業のモデル退職金は238,000円です。
医療・福祉業界と全産業を比較すると、医療・福祉業界が88,000円少ない結果となっています。
勤続5年の場合
勤続5年の場合、医療・福祉業界におけるモデル退職金は263,000円であり、全産業のモデル退職金は470,000円です。
医療・福祉業界と全産業を比較すると、医療・福祉業界が207,000円も少なくなっています。
勤続年数3年と比較して、退職金額は増加しているものの、全産業との差が広がっている点が特徴的です。
勤続10年の場合
勤続10年の場合、医療・福祉業界におけるモデル退職金は651,000円、全産業のモデル退職金は1,121,000円となっています。
医療福祉と全産業を比較すると、医療福祉が470,000円少ない状況です。
3年、5年、10年と勤続年数が長くなるのにともない、医療・福祉業界でも退職金は増加しています。
しかし、勤続年数を重ねるごとに全産業との退職金額の差が広がっており、医療・福祉業界では、勤続年数による退職金額の上がり幅が小さいことがわかります。
理学療法士の退職金制度についての注意点
理学療法士として小規模のクリニックや介護事業などで働く場合、退職金制度がない場合があります。
令和5年度の就労条件総合調査概況においても、1,000人以上の企業(医療・福祉以外の産業も含む)の90.1%が退職金制度を採用している一方、30〜99人以下の企業では70.1%に止まっています。
短い在籍期間での退職では退職金の支払いが行われないこともあるため、事前に就業先の規定を確認することが重要です。
退職金制度があっても、規定期限内に払われない場合などは、退職先や労働基準監督署に相談しましょう。
また、退職金にも税金がかかるため、全額そのまま受け取れるわけではありません。
一時金、年金どちらの方法でも税金が引かれる点に注意が必要です。
理学療法士の退職金相場を理解して職場選択の参考にしよう
本記事では、理学療法士の退職金制度と勤続年数別の相場について解説しました。
医療・福祉業界の退職金制度導入率は高いものの、全産業と比較すると退職金額の水準は低い傾向にあります。
勤続年数が長くなるほど、全産業との金額差が広がっていくのが特徴です。
理学療法士として働く際は、退職金制度の有無や支給条件を事前に確認することが大切です。
退職金は職場選択の重要な判断材料の一つといえるでしょう。
本記事の情報を参考に、自身のキャリアプランに合った職場を選択してください。