管理栄養士として病院で働きたいけれど、どのような役割を担うのか気になる方もいるでしょう。
管理栄養士の仕事内容は、勤務する職場によって異なります。
病院で働きたいなら、まずは仕事内容を把握しておきましょう。
この記事では、管理栄養士が病院で働く際に求められる役割と仕事内容、仕事で得られるメリットについて解説します。
病院で働きたいと考えている管理栄養士の方は必見です。
目次
管理栄養士が病院で求められる役割とは?
【健康増進法】
第二十一条 特定給食施設であって特別の栄養管理が必要なものとして厚生労働省令で定めるところにより都道府県知事が指定するものの設置者は、当該特定給食施設に管理栄養士を置かなければならない。
前項に規定する特定給食施設以外の特定給食施設の設置者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定給食施設に栄養士又は管理栄養士を置くように努めなければならない。
都道府県知事は、特定給食施設の設置者に対し、前条第一項又は第三項の規定による栄養管理の実施を確保するため必要があると認めるときは、当該栄養管理の実施に関し必要な指導及び助言をすることができる。
引用元:健康増進法
【健康増進法施行規則】
第五条 法第二十条第一項の厚生労働省令で定める施設は、継続的に一回百食以上又は一日二百五十食以上の食事を供給する施設とする。
前号に掲げる特定給食施設以外の管理栄養士による特別な栄養管理を必要とする特定給食施設であって、継続的に一回五百食以上又は一日千五百食以上の食事を供給するもの
引用元:健康増進法施行規則
【医療法施行規則 】
第十九条 法第二十一条第一項第一号の規定による病院に置くべき医師及び歯科医師の員数の標準は、次のとおりとする。
四 栄養士 病床数百以上の病院にあつては、一第二十二条の二 法第二十二条の二第一号の規定による特定機能病院に置くべき医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の員数は、次に定めるところによる。
五 管理栄養士 一以上
引用元:医療法施行規則
管理栄養士に求められる役割は、栄養管理が必要な患者さんに、適切な栄養を摂取できる食事を提供することです。
一定規模以上の病院、特定機能病院、特定給食施設には、栄養士・管理栄養士の設置が法律で義務付けられています。
健康増進法によって定められている特定給食施設とは、特定の人あるいは多人数に、特別な栄養管理が必要な食事を提供する給食施設をいいます。
特定給食施設に該当する病院には、管理栄養士の設置が必須です。
また医療法では、病院に配置しなければならない栄養士の人数が定められています。
病床数100以上の病院の場合は栄養士を1人、通常の病院よりも高度な栄養管理が必要な特定機能病院の場合は管理栄養士を1人以上配置しなければなりません。
病院で働く管理栄養士の仕事内容
病院での管理栄養士の仕事は大きく給食部門と臨床部門に分かれます。
給食部門
管理栄養士が病院の給食部門で行う主な仕事は、下表のような内容です。
献立作成 | 患者さんに合わせた栄養バランスの整った献立を作成。病院によっては献立作成の業務がない場合もある。 |
給食調理 | 決められた献立をもとに、調理師と一緒に作成する。 |
食材の発注・業者選定 | 予算の範囲内で使用する食材を選び、食材を頼む業者の選定も行う。 |
アンケートの実施や給食委員会運営 | 患者さんに食事アンケートを実施し、病院スタッフに周知して話し合う給食委員会の運営を行う。 |
帳票類の作成・管理 | 仕入れた食材の種類や金額を記載した帳簿や伝票の作成・管理を行う。 |
では、給食部門の仕事内容を、詳しくみていきましょう。
献立作成
入院患者さんに提供する食事の献立作成は、管理栄養士の重要な仕事です。
病状によって必要な栄養素が異なるため、一人ひとりに合わせた対応が求められます。
献立作成の有無は病院によって異なり、直営か委託か、委託の場合は委託する範囲によって、管理栄養士の仕事内容は変わります。
直営給食の病院では、献立作成から調理までをすべて病院内で行います。
委託給食には全面委託と部分委託があり、全面委託の場合は献立作成から調理までを委託業者が行い、部分委託の場合は、一部の調理のみ病院内で行い、献立作成業務はありません。
給食調理
管理栄養士は、病院に在籍する調理師とともに、患者さんに提供する食事の調理も行います。
病院の給食施設では、調理する食事の種類や数が毎日異なります。
患者さんの病状に合わせた内容の食事を提供する必要があり、入退院にともなって患者さんの数も変動するからです。
食材の発注・業者選定
食材の発注や業者選定も管理栄養士の仕事です。
予算は決まっているため、献立を作成する時点で使用する食材について考慮しておかなければなりません。
食材の仕入れ費用は業者によって異なるため、なるべく安く品質の高い食材を納品してくれる業者を選ぶことも重要です。
アンケートの実施や給食委員会の運営
管理栄養士は給食アンケートを実施し、患者さんから毎日食べている食事の満足度や意見などを聞きます。
集計したアンケート結果は、給食委員会で話し合われます。
給食委員会とは、患者さんの満足度やサービス向上・適正化を目的に行われる会議です。
管理栄養士が運営し、会議には医師や看護師、給食を委託している場合は委託業者も参加します。
会議は月に一回程度のペースで行っている病院が多いようです。
翌月に行事があるときは、行事食の内容打ち合わせが行われます。
中心メンバーとして会議をとりまとめ、スムーズに進行するのも管理栄養士の仕事です。
帳票類の作成・管理
食材発注などに関する帳票類の作成や管理も、管理栄養士の仕事です。
臨床部門
臨床部門は、入院患者さんの栄養管理や指導を行う部門です。
調理業務のある給食部門とは異なり、病気を抱える患者さん一人ひとりに合わせた栄養管理計画書などを作成します。
栄養管理 | 入院患者さんの栄養状態を管理する業務 |
栄養管理計画書の作成 | 患者さん一人ひとりの栄養状態を評価し、管理する書類の作成 |
栄養サポートチーム(NST)としての業務 | 患者さんに最適な方法で栄養を摂取してもらうことを目的としたNSTでの業務 |
栄養指導 | 入院患者さんに対する、最適な栄養素を含む食事内容の提案や、食生活の相談業務 |
生活習慣病教室の実施 | 生活習慣に不安を抱える人を対象とした教室の実施 |
では、臨床部門の仕事内容を詳しくみていきましょう。
栄養管理
栄養管理は、検査結果から患者さんの栄養状態を評価し、問題点やリスクなどの課題を見出し、対策を実行するものです。
患者さんごとに栄養管理計画書を作成するので、患者数の多い病院では大変な仕事です。
しかし、さまざまな病気を抱える患者さんの計画書を作れるため、管理栄養士としてスキルアップできます。
栄養管理計画書の作成
栄養管理計画書は、入院患者さんの栄養状態を評価・記録し、計画的に栄養管理を実行するために作成するものです。
<栄養管理計画書の主な記載内容>
- 入院時の栄養状態に関するリスク
- 栄養状態の評価と課題
- 栄養管理計画(目標、栄養補給に関する事項、栄養食事相談に関する事項など)
患者さんのデータや課題を、詳細かつ誰が見てもわかるように記載することで、医療チーム、栄養サポートチーム内での情報共有にも役立ちます。
栄養サポートチーム(NST)としての業務
病院に栄養サポートチーム(NST)がある場合には、チームの一員として栄養管理の業務にあたります。
NSTとは、医師・看護師・管理栄養士・臨床検査技師・薬剤師などで構成されるチームです。
管理栄養士は、患者さんに対して最適に栄養を摂取してもらう方法を提案・実践する役割を担います。
例えば、手術前後や病状によって食事を経口摂取できない患者さんに、どうやって必要な栄養を摂取してもらうかを考え、実践するといったものです。
その他、病気の合併症を予防するために必要な栄養管理方法の提案なども行います。
栄養指導
患者さん一人ひとりに最適な食事内容を提案したり、相談に応じたりするのも重要な仕事です。
食事内容が制限されている方や食生活に不安がある方の話を聞き、不安を解消するための食事内容の提案やアドバイスを行います。
ただ食事内容を提案するのでなく、栄養の専門家としてその理由までわかりやすく説明してあげれば、患者さんもより安心できるでしょう。
適切な栄養指導は病状の改善だけでなく、メンタルケアにもつながります。
生活習慣病教室の実施
管理栄養士は、がん・心臓病・脳卒中・糖尿病などの生活習慣病の不安を抱える人に向けた生活習慣病教室なども実施します。
自分で実践してもらえるよう、予防のために改善すべき食生活のポイントなどを、具体的にわかりやすく伝える工夫が必要です。
管理栄養士が病院で働くメリット
病院で働く管理栄養士は、患者さん一人ひとりの病状に合わせて栄養管理・指導を行うため、高度な知識や技術が求められます。
業務内容も多岐にわたり、仕事量も多い大変な仕事です。
しかし、メリットも多くあります。
ここでは、管理栄養士が病院で働くメリットを3つ紹介しましょう。
給料が比較的高い
病院で働く管理栄養士の平均年収は約440万円と、比較的高めの傾向があります。
老人保健施設が約430万円、食品メーカーが約420万円なので、それらと比べると僅かではありますが高めです。
年収は病院の規模や勤続年数によって変わります。
規模が大きい病院ほど業務が高度であったり、担当する患者数や仕事量が多かったりするため、給料にも反映されやすいのでしょう。
管理栄養士としてスキルアップできる
病院では高度な知識や技術を要求される業務が多く、給食部門、臨床部門どちらで働くにしても、管理栄養士としてスキルアップしやすい環境といえます。
病院の規模は大きいほど多くの患者さんに対応するため、経験を積みやすいです。
スキルアップを重視するなら、規模の大きな病院に就職したほうが良いでしょう。
やりがいを感じられる
患者さんは、食事をしたくてもできない、食生活に不安がある、食事をしたくないなどさまざまな悩みを抱えています。
食と栄養の専門家として医療チームの一員となり、そのような方たちをサポートし、症状の改善や不安の解消に貢献できるのが、病院管理栄養士の魅力です。
患者さんが食事を楽しめるようになったり、退院していく姿を見たりすれば、やりがいや喜びもひとしおです。
高度な知識や技術が求められる現場であり、自分のスキルを最大限に活かせることにやりがいを感じる方もいるでしょう。
管理栄養士として病院で活躍しよう
病院での勤務は高度な知識と技術を要求され、大変な面もあります。
しかし、給与が高い、スキルアップしやすい、やりがいを感じられるといったメリットも多い職場です。
管理栄養士として自分のスキルを存分に発揮して働きたい方は、病院での勤務を検討してみてください。