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接遇スキル向上について

執筆者プロフィール
田中優子さん
田中優子
マナーサロンPourToujoours代表・元日本航空航グランドスタッフ
関西を中心に企業研修、医療接遇研修を開催。
また、各種学校でビジネスマナー・面接対策・検定対策講師として活動中。

接遇の向上と聞くと、一般的に接客業向きと思いがちですが、今は患者さん・利用者さんの気持ちに寄り添えるような対応が看護師、医療・介護スタッフなどに求められています。
今回は、接遇向上のために、施設内でできる取り組みを各項目ごとにまとめましたので、
お伝えしていきます。

接遇向上の取り組みが求められる背景

接遇は、今あらゆる業界に求められていて、医療業界でのニーズも高まっています。
医療現場において、接遇対応を向上させることで、お客さま満足度や、病院評価の向上にも繋がります。接遇マインドがあれば、行動も自ずと良い方向へと変わっていきます。

調剤薬局においても、薬の販売よりも患者さんのお困りごとの解決に注力されている企業も増えてきていて、患者さんとの会話の中で、プラスαの情報を得て、お客さまに寄り添う接遇対応が求められてきています。施設内でこのようなエピソードを共有することで、スタッフ間で、お客さまの役に立ちたいという気持ちが自然と高まり、モチベーションにもつながると言われているのです。

接遇向上の取り組みステップ

接遇向上の取り組みとして、①〜⑨のステップで紹介いたします。今ご自身の事業内では、どの段階か状況かも確認・把握しながら見ていただけたらと思います。

①トップの意識改革を行う

院長、事務長、施設責任者、薬局長などの責任者さまが率先して接遇力向上に取り組むことがとても大切です。接遇力が高いトップの方は『こういう病院・施設・薬局にしたい』という明確なゴールとプランを持っているとともに、『トップ自らが率先して学び、成長し、変化し続ける必要がある』という考え・確信を持っているのです。

②トップの想いと目指しているゴール(接遇力向上)を伝える

ミーティングなど、それ以外の場所でもトップから直接スタッフたちに病院・施設・薬局内で目指すところや自分の心のなかにある患者さんやスタッフの想いを伝え続けるのです。
トップのブレない想いを受け取り続けることで、スタッフの心にもブレない信念が生まれます。
ここまでの工程がしっかり行われるとトップとスタッフの間に強固な人間関係が出来上がってくるので、スタッフたちが接遇教育を積極的に受け入れてくれます。

③接遇力向上プロジェクトチームを作る

接遇力向上のための接遇教育とは病院・施設・薬局を上げた壮大なプロジェクトなので、接遇力向上のプロジェクトチームを作ることを提案いたします。
スタッフの中から現場の指揮を取る人を選ぶ際は、スタッフたちにとって説得力のある人材を選びましょう。重要なのは、トレーナーがひとりで抱え込んでしまう環境にならないように、広い視野を持って接遇教育に取り組めるようにすることです。そして、必ず、トップの口から直接「接遇教育をトレーナーたちに一任する」と伝えることが重要で、
トレーナーたちの立場を明確化しましょう。

④接遇力向上プロジェクトチームの環境作りを行う

トレーナーたちは接遇教育専任ではなく、通常業務との兼務になることが多いはずなので、
そうなると、接遇教育の優先順位がどんどん下がり、いつの間にか立ち消えてしまうことになりかねない可能性があります。そうならないためにもトレーナーたちが接遇教育に集中できるように、トレーナーの不安を取り除くことや、他のスタッフの理解を得る部分を調整します。

⑤トレーナーへの接遇教育の3つのポイント

1) スタッフについて
トレーナーの心構えのなかでも重要なのはトレーナーとスタッフに上下関係はないということです。そして、患者さんの一番近くで接客する全てのスタッフに接遇力を高めてもらうことが自分たちの役割であることをしっかり理解していただきたいです。

2) 接遇スキルについて
接遇を客観視する力を磨き、一つひとつの接遇に対して「何故、このように行動するのか」という理由を明確に伝えられるようになる思考トレーニングを行うことで、トレーナー自身が様々な角度から疑問を持て、かつその理由を答えられるようになり、接遇スキルが向上していきます。

3) 顧客視点について
患者さんと同じ空間にいるのに、ご自身や施設内での視点で凝り固まってしまい見えなくなっていることがたくさんあると思います。顧客視点を身につけることが接遇力を高めるうえで必須のスキルなのです。

⑧スタッフたちへの接遇教育の計画を立てる

全て予想(理想)で良いので目標を設定しておきましょう。
計画を「見える化」しておくことで、途中で行き詰まることが少なくなります。

一人ひとりのスタッフの接遇力を向上させるとともに、高い接遇力を継続していける仕組みを作るわけですから短期間で成し得ることではありません。時間をかけて仕組みを作ることができれば、「利用者さまからもスタッフからも選ばれる施設が出来上がる」という大きな成果を得ることができます。

⑨スタッフたちへの接遇教育の計画を立てる

各事業所の営業スタイルやスタッフ勤務体系や雇用形態によって変わってきますが、伝える内容によって適した場所と方法があります。

◆接遇の考え方
時間を区切って集中して伝える方が良く、営業時間外に全員が集まる場の時間を活用し、病院・施設としての考え方を伝えるとともに、各スタッフの考え方を聴いてみることをお勧めします。

◆接遇の基礎スキルや具体的なお客さま応対の方法
基礎スキルなどの知識は勉強会スタイルで伝える方がよいですが、接客の実践については施設のなかで行い、トレーニングに集中できるように十分な人員配置をお勧めします。

◆顧客視点のトレーニング
可能であれば、勤務時間内に患者さんの服に着替えて、利用者さん目線トレーニングをすることで、接遇向上への改善点が見つかることもありますので、このような機会を設けることもお勧めです。

接遇向上のための病院の取り組み事例

【課題 】
・クレームが多いので何とか改善したい。
・研修を実施しても、なかなか継続しない

【対応内容と手順】
ステップ1 :ヒヤリング・課題の抽出
ステップ2 :スタッフへ接遇意識調査・ヒヤリング
ステップ3 : 接遇覆面調査:患者を装って調査(日時はトップのみにお知らせ)

改善指導プログラムのご提案
→接遇リーダー育成のご提案
ロールプレーイング実践練習 等

ステップ4 : 接遇研修
接遇の基本を身につける基本研修の実施
現場に即した研修の実施
医療の現場に適したさわやかな自己表現

ステップ5 : アフターフォロー
接遇リーダーに対する指導育成
ロールプレイングの技法を用いて、
患者対応等の事例検討をミーティングにて実施する 等

【先方が「効果が高かった」と感じたもの】
ステップ5のアフターフォローで実施した「ロールプレイング」が特に好評でした。
実際にあった事例を元にロールプレイングを作成・実施し、フィードバックを行いました。

まとめ

今回は、接遇力の向上をするために取り組めることをテーマにお伝えしていきました。
接遇力向上の第一歩は「トップの意識改革」です。トップが変わる覚悟を決めた瞬間から接遇力向上の歯車が回り始め、「接遇力でお客さまからもスタッフからも選ばれる場所」に向かって進み出すのです。全ての工程を施設内で行うのが理想ですが、自分たちだけで行うのは厳しい場合や早く接遇力を向上させたい場合、接遇教育の専門家に進め方について相談してみても良いかと思います。

執筆者について

情報かる・けるは、医療・介護従事者として働いている方や、これから目指す方の「知りたい」に応えるメディア。 全国54,000件以上の求人を扱う弊社スタッフが、編集部として情報発信! “いい仕事が見つかる・いい仕事を見つける”ための、有益なコンテンツをお届けします。 https://twitter.com/karu_keru

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