
医療事務と看護師はいずれも医療機関で活躍できる仕事ですが、必要な資格や仕事内容といった点で違いがあります。
医療事務から看護師になることをめざす場合、人によっては新たに専門学校へ通う必要があるかもしれません。
キャリアチェンジやキャリアアップを検討しているのであれば、両者の違いを理解したうえで、自分のめざす働き方を実現するべく今後の計画を立てましょう。
この記事では、医療事務と看護師の違い、医療事務から看護師をめざす方法を解説します。
医療事務と看護師のどちらの働き方が自分に合うのか迷っている方は、参考にしてみてください。
目次
医療事務と看護師の違い
医療事務と看護師の大きな違いは、必要な資格・仕事内容・立場の3つにあります。
資格なしの未経験からでも働き始められる医療事務に対し、看護師は国家資格が必須となる点に注意しましょう。
資格の違い
医療事務と看護師は、資格に違いがあります。
看護師として働くには国家資格が必要ですが、医療事務に必須の資格はありません。
医療事務は未経験や資格なしの状態からでも働けるのに対し、看護師は大学または3年以上の教育を受けたうえで、看護師国家試験に合格することが必須です。
なお、医療事務には「医療事務技能審査試験」をはじめとして、「診療情報請求事務能力認定試験」「診療情報管理士」など、働くうえで役立つ民間の資格もあります。
資格がなくても働くことはできますが、医療事務として就職・転職の選択肢を広げたい、給与アップを狙いたいといった場合には、民間資格の取得を検討すると良いでしょう。
医療事務に役立つ資格を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
仕事内容の違い
医療事務と看護師は、仕事内容にも違いがあります。
医療事務は、診療報酬請求や医療費の計算など報酬に関する業務が主であるのに対し、看護師は、医師の診察に基づき治療や診療の補助を行うことが仕事です。
また、医療事務は院内の受付に立つ場合があるため、優しい笑顔で患者さんに対応できるコミュニケーションスキルも必要となります。
一方の看護師は、医師のサポートはもちろんのこと、スタッフとのコミュニケーションを円滑にしつつ、患者さんの心のケアを行うことも大切な仕事です。
立場の違い
医療事務と看護師では、院内での立場が異なります。
医療事務は、受付で働く病院の顔ではあるものの経営に関わることはなく、ミーティングなどでも看護師よりは意見が採用されにくい場合があるでしょう。
とはいえ、医療事務の立場が弱いかというとそうではなく、来院した患者さんがまず受付で会話をする相手であり、病院の印象に大きく影響を与えうる存在です。
一方の看護師は、患者さんの血圧を測定したり処置しやすいように診療の補助をしたりするなど、直接患者さんと接する機会が多く、より身近な存在といえます。
医療事務から看護師をめざすには
医療事務から看護師になるには、厚生労働大臣の認定を受けている看護学校を卒業し、看護師国家試験に合格しなければなりません。
働きながら看護学校に通う場合、定時制のある学校であれば無理なく通いやすいでしょう。
働きながら看護学校に通う
医療事務から看護師をめざすには、まず働きながら看護学校に通う必要があります。
最終学歴が高等学校の場合、国から認定された看護学校であれば、4年制大学・3年制の短期大学・専門学校のいずれでも問題ありません。
なかには定時制の看護学校もあるため、午前中は仕事をして午後から学校に行くという通い方も可能です。
2年制の看護学科・コースも存在しますが、そのルートで取得できる資格は正看護師ではなく准看護師である点に注意しましょう。
国家試験を受験する
看護学校を卒業すると、看護師国家試験の受験資格が得られます(卒業見込み可)。
大学・専門学校にて必要な教育を3年以上受けたうえで、看護師の国家試験に合格して免許を取得しなければなりません。
すでに准看護師の資格を持っている方は、所定の実務経験年数を満たしたうえで看護学校に2~3年通うことで受験資格を得られます。
なお、日本看護協会は今後、准看護師を廃止し正看護師に一本化する方針を固めているため、これから看護学校に通う方はどのルートで看護師をめざすか十分に検討しましょう。
医療事務と看護師はどちらが良いか
医療事務と看護師には資格と仕事内容、院内での立場という点で違いがありますが、一概にどちらのほうが良いと断言することはできません。
職場に求める条件や重要視したいもの、実現したいキャリアプランなどをふまえて、自分に適した働き方を選ぶことが大切です。
医療事務が良いとされる要素
医療事務の利点として、資格を必要としないことが挙げられます。
また、シフトの融通が利きやすいこと、職場の選択肢が豊富であることなども医療事務の大きな魅力です。
未経験無資格でOK
医療事務は、未経験・無資格の状態からでも始められます。
医療業界のなかでも、比較的始めやすい仕事といえるでしょう。
基本的なパソコンスキルさえあれば応募できる場合もあり、働きながらレセプト業務のスキルや医療保険制度についての専門知識を習得可能です。
仕事をするなかでスキルを磨いていけるため、新しいことを学ぶのが好きな方にも向いています。
シフトの融通が利きやすい
シフトの融通が利きやすいことも、医療事務のメリットの一つです。
医療事務の仕事は、正社員だけでなく派遣社員や契約社員、パート・アルバイトなどさまざまな雇用形態での募集があります。
パート・アルバイトであれば週に数日だけ、午前中だけなど、自分に合った自由な働き方でシフトを組んでもらうことも可能です。
家事や子育てに忙しい人にとっても、プライベートと仕事を両立しやすいでしょう。
全国に職場がある
医療事務は、全国に職場がある点も魅力です。
医療事務の勤め先となる病院やクリニックなどの医療機関は全国にあるため、職場探しにはあまり困らないといえます。
たとえ引越しなどで居住地が変わっても、付近の医療機関で医療事務の仕事を続けることが可能です。
勤め先によって業務内容に細かな違いはあっても、会計業務やレセプト業務など共通する点も多いため、それまでの職場で身につけた知識やスキルを活かしながら働けます。
看護師が良いとされる要素
看護師として働く利点に、患者さんと接する機会が多いぶん、感謝の言葉を直接伝えてもらえることが挙げられます。
また、キャリアアップの選択肢が多く、専門知識を有していることから復職などがしやすい点もメリットです。
患者さんから直接感謝される機会が多い
看護師は、患者さんやそのご家族から感謝の言葉を直接聞ける機会が多くあるでしょう。
看護師は患者さんにとって身近な存在であるだけでなく、健康や命を守るための業務にも携わることになります。
そのぶん感謝の言葉にも重みがあり、人の役に立っていると実感できるため、やりがいを感じながら働けるでしょう。
また、患者さんの回復やできることが増えていく様子を近くでサポートできることも、看護師として働く喜びにつながります。
キャリアアップの幅がある
看護師は、より専門性を深めたスペシャリストや幅広い分野で活躍するジェネラリスト、チームを管理する管理職など幅広いキャリアプランが選択肢になります。
専門看護師や認定看護師、認定看護管理者などの資格を取得することで、キャリアアップによりつながりやすくなるでしょう。
キャリアアップにより昇給が期待できるほか、仕事の裁量が増して大きなやりがいを得られたり、出産・子育てなどで一度退職しても再就職に有利になったりします。
より専門的な知識が求められるため需要が高い
看護師は医療事務と比較すると専門的な知識が求められるため、医療業界において需要が高い傾向にあります。
看護師は国家試験に合格して得られる免許であり、無資格の状態では働けません。
働ける人材が限られることから、病院などの医療機関では看護師が不足している状態です。
したがって、結婚や出産などでいったん看護師の仕事を辞めても、その専門性を活かして復職がしやすいでしょう。
医療事務と看護師の違いやめざす方法を知ってチャレンジしよう
未経験・無資格の状態でも働ける医療事務に対し、看護師は国家資格が必要です。
看護師のほうが高い専門性を有することから、仕事内容や院内での立場にも違いがあります。
ただし、医療事務と看護師のどちらのほうが良い・悪いということではなく、違いを理解したうえで自分の生活スタイルや仕事に求める条件などに合う働き方を選ぶことが大切です。
すでに医療事務として従事している方は、働きながら看護師をめざす選択肢もあります。
基本的には看護学校に3年以上通うことになるため、看護師試験合格をめざして社会人学生にチャレンジしてみるのも良いでしょう。