
メンタルヘルスケアの重要性が高まるなか、従業員の健康管理に取り組む企業も増えてきました。
そこで大きな役割を果たしているのが、地域保健の専門家である保健師です。
保健師は、直接的な医療行為を提供する仕事ではないものの、精神疾患のみならず身体的な悩みまで、包括的な支援策を提案できるという特徴があります。
また、健康課題の早期発見とともに、発生の予防にもアプローチできるのが強みです。
本記事では、メンタルヘルス対策に携わる保健師の役割や具体的な仕事内容、主な就職先を解説します。
目次
メンタルヘルス対策に関わる保健師の役割
保健師は、厚生労働大臣による免許の認定を受け、保健サービスに従事する専門職です。
保健師は地域住民の保健サービスだけでなく、企業や学校で社員、生徒の心身の健康管理を行う役割があります。
特に企業の場合、メンタルヘルスの不調を事前に把握し、改善に向けて働きかけたり、不調を感じている方の相談相手になったりして、問題の根本的解決にアプローチするのが特徴です。
社員が自分らしく健康的な生活を送ることができるよう、医療や保健に関する専門知識を活かしてアドバイスを提供する場面もあるでしょう。
保健師は、メンタルヘルス対策における予防から支援まで幅広い役割を担っています。
メンタルヘルス対策に関わる保健師の仕事内容
メンタルヘルス対策に携わる保健師の主な仕事は、大きく以下の3つです。
- ストレスチェックの実施
- メンタルヘルス関連の相談
- メンタルヘルスに関する情報提供
これらの業務を通じて、保健師は企業や学校のメンタルヘルス向上に貢献しています。
ストレスチェックの実施
2015年12月から、従業員数が常時50人を超える職場ではストレスチェックが義務化されました。
保健師は、「職業性簡易ストレス調査票」などを用いてストレスチェックを実施し、結果に基づいて対象者の健康状態を把握します。
ただ調査結果を確認するだけでなく、対象者自身にストレスを自覚してもらい、セルフケアができるよう促すことも保健師の重要な仕事です。
ストレスチェックは、労働者の健康課題を早期に発見するとともに、職場全体のメンタルヘルス向上につながる取り組みといえます。
メンタルヘルス関連の相談
保健師は、ストレスを感じている人やストレスチェックの結果によって支援が必要と判断された人を対象に、相談対応を行います。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる職場は、専用の相談窓口を設置しているケースも多く、その場合は保健師や衛生管理者が選任担当者となるのが一般的です。
相談者の話に耳を傾け、リスクを評価したうえで適切なアドバイスや支援を提供することで、メンタルヘルスの改善・維持に貢献します。
ストレスの発生要因によっては、専門医や外部の支援機関との連携も必要になるでしょう。
メンタルヘルスに関する情報提供
保健師は、職員や地域住民を対象に、メンタルヘルスに関する勉強会・セミナーを企画、開催することもあります。
ストレスのセルフケア方法など、メンタルヘルス対策につながる知識を広めることが主な目的です。
勉強会・セミナーの参加者が、不調を感じた際に適切な対応ができるよう、実践的な情報提供を心がける必要があります。
また、より多くの人に関心を持ってもらうためにも、柔軟な企画力と効果的な情報発信が求められるでしょう。
メンタルヘルス対策に関わる保健師の就職先
メンタルヘルス対策に携わる保健師の代表的な就職先は、一般企業や学校です。
ここからは、メンタルヘルス対策に取り組む保健師の働き方を就職先ごとに見てみましょう。
一般企業
一般企業に勤める保健師は「産業保健師」と呼ばれ、従業員の健康状態を把握し、早期のフォローアップによって職場の生産性を維持する役割を果たしています。
職場内でのハラスメント防止や労働環境の改善、ストレスチェックの実施・結果通知などが主な業務内容です。
ストレスを感じている従業員のための相談窓口を担当するほか、メンタルヘルス不調により休職した従業員の職場復帰を支援します。
これらの取り組みを通じて、社内の従業員が心身ともに健康的に働ける環境づくりをサポートします。
学校
教育機関で働く保健師は「学校保健師」と呼ばれ、生徒や教職員のメンタルヘルス対策に携わります。
学校生活や家庭環境に悩みを抱え、精神的なサポートを必要としている生徒の身近な相談相手となり、適切な支援につなげるのが学校保健師の役割です。
生徒はもちろんのこと、就職先の学校に在籍する教職員も支援の対象となります。
教育を取り巻く環境の変化により、教職員は質・量ともにより高水準の業務を求められるようになりました。
業務の困難さと対人関係のストレスから、精神疾患を発症し休職を必要とする教職員は増加しており、教職員の復職支援を含め、教育現場におけるメンタルヘルス対策の重要性は増しています。
また、学校保健師はメンタルヘルス対策だけでなく、体調不良やケガの対応、定期健診の計画と実施に関する仕事も行います。
生徒や教職員が安心して過ごせる環境を提供することも、学校保健師の役割といえるでしょう。
保健師としてメンタルヘルス対策に関わろう
心の悩みが複雑化する現代社会において、メンタルヘルス対策に携わる保健師は今後ますます重要な役割を果たすと考えられます。
保健師は、ストレスチェックの実施や相談対応、情報提供などを通じて、個人・組織のメンタルヘルス向上に貢献できる地域保健の専門家です。
その専門性を活かし、一般企業や学校をはじめとしたさまざまな場所で活躍できるでしょう。
就職先によって保健師に求められる役割には違いがあるほか、支援対象者の個々の状況に応じた柔軟な対応力も求められます。
自分のキャリアプランに合わせた知識・技術を磨き、メンタルヘルス向上に貢献できる保健師をめざしてみてください。