
スポーツの世界で活躍する鍼灸師は、鍼灸師としての知識とトレーナーとしての知識の両方を活かし、選手のフィジカル面・メンタル面のサポートをしています。
鍼灸師とトレーナーの両方のスキルを兼ね備えた人材は、多くのチームや選手から支持され、活躍の場が広がるでしょう。
本記事では、スポーツトレーナーとして働く鍼灸師の仕事内容や、おすすめの資格について詳しく解説します。
鍼灸師やトレーナーとして、スポーツ界で活躍したい方はぜひ参考にしてください。
目次
スポーツトレーナーとして働く鍼灸師とは
スポーツトレーナーとして働く鍼灸師は、東洋医学の知識と技術を活かしながら、アスリートのパフォーマンス向上を促し、怪我の予防や治療などをしています。
スポーツの現場では鍼灸師によるこのような治療のことを、「スポーツ鍼灸」と呼んでいます。
東洋医学である鍼灸は、怪我や内臓などの不調の治療に優れているだけでなく、スポーツ選手のフィジカル面やメンタル面のコンディション調整にも有効です。
選手一人ひとりに合わせた施術を行うことで、パフォーマンスの向上に貢献できます。
スポーツトレーナーとしてスポーツ医学の知識に加えて、身体のさまざまな箇所の施術に対応できる鍼灸師は、貴重な存在です。
一般的なスポーツトレーナーには資格が必要ありませんが、人の体に触れて医療類似行為を行う際は、法律により鍼灸師や柔道整復師などの国家資格を保有している人に限定されています。
実際、国内で活躍しているほぼすべてのスポーツトレーナーは、柔道整復師やはり師・きゅう師の国家資格を保有しています。
このように鍼灸師の資格は、スポーツトレーナーとして活躍するための重要な要素なのです。
スポーツトレーナーとして働く鍼灸師に必要な資格
スポーツトレーナーとして働く鍼灸師になるためには、まず「はり師」と「きゅう師」の資格を取得する必要があります。
はり師は、髪の毛程度の細い鍼を人体に刺すことができる資格です。
一方、きゅう師は艾(もぐさ)を燃やし、熱によって身体を刺激する技術を持つ資格です。
これらの資格を取得するには高校卒業後、専門学校や大学、短期大学ではり・きゅうの技術や知識を3年以上学び、国家試験に合格しなければなりません。
また、視覚障がい者の場合は盲学校や視力障害センターなどで学びます。
視覚障がい者の場合は中学校卒の場合でも、5年間教育を受けることで国家試験を受験可能です。
専門教育を受け、安全かつ効果的な施術を行うことが求められているのです。
スポーツトレーナーとして働く鍼灸師におすすめの資格
鍼灸師の資格に加えて、スポーツ現場でさらに活躍の場を広げるためには、トレーナーの資格取得が有効です。
これらの資格を取得することで、スポーツトレーナーとしての専門性や信頼性を高め、より多角的な方法で選手をサポートできるようになるでしょう。
グループエクササイズフィットネスインストラクター(GFI)
グループエクササイズフィットネスインストラクター(GFI)は内閣府認定の日本フィットネス協会(JAFA)が資格認定を行っています。
現在、フィットネス指導の国家資格は存在しませんが、JAFAが認定する資格を保有することで、インストラクターとしての知識や技術があることの証明となり、社会的信頼を得られるでしょう。
GFI資格は筋力・持久力、柔軟性、心肺系の持久力に特化した指導ができるようになる資格が6種類あり、それぞれインストラクター(上級)、ベーシックインストラクター(中級)に分かれています。
この資格を取得することで、できるようになることは以下のとおりです。
- 運動プログラムを作成する
- 動きを教える
- 動きの見本を示す
GFIには、グループエクササイズの特長を活かしたプログラムを作成することで、参加者が運動効果を感じられるようにする役割があります。
フィットネス指導者としての知識・技術・能力を証明できる資格です。
受験資格は、以下の2パターンがあります。
- 大学や短大などの養成校で所定のカリキュラムを修了し卒業した人
- 指導経験のある方や体育系の学校・学部などで教育を受け、eラーニングや実技学習を受講した人
どちらも18歳以上の人が対象で、試験内容は筆記テストと実技テストの2種類です。
エアロビックダンスエクササイズインストラクター(ADI)
エアロビックダンスエクササイズインストラクター(ADI)は、ダンスと有酸素運動を組み合わせたエアロビックダンスの指導を行うインストラクターの資格です。
前述したGFIのうちの一つで、上級レベルとして位置づけられており、中級にはエアロビックダンスエクササイズベーシックインストラクター(ADBI)の資格があります。
エアロビックインストラクターには、指導力と実演能力が必要なため、この資格を取得するとさまざまなGFIに対応できるようになります。
エアロビックダンスは、音楽を用いて年代問わず楽しめるプログラムです。
全身持久力が高まることで疲れにくくなったり、冷え性やシェイプアップ、ストレス解消などの効果が期待できます。
公共施設やスタジオ、介護施設、学校などの教育の場でも活かせる資格です。
パーソナルトレーナー(PFT)
パーソナルトレーナー(PFT)は、パーソナルトレーナーとしての知識や技術を学ぶだけでなく、クライアント獲得のためのマーケティングや、ビジネスとしての広報活動などについても学習できる資格です。
パーソナルフィットネストレーナーには、健康や体力、メンタル面の改善・向上をサポートする役割があります。
NESTA JAPANが認定するこの資格では、以下の4つをトレーナーとして活躍するための能力としています。
● 人の体に関する幅広い知識
● トレーニング全般に関する偏りのない知識
● 様々なクライアントとのコミュニケーション対応力
● 自分を売り込み顧客を得るためのビジネススキル
引用:PFT認定について | NESTA JAPAN(ネスタジャパン) -全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会-
受験資格は以下のとおりです。
受験資格要件 | |
1 | NESTA JAPAN(あるいは医学映像教育センター)からPFTテキストを購入済みであること |
2 | CPR・AEDの技能を習得・保持していること(定期的にトレーニングを積んでいる) |
3 | 満18歳以上で、高等学校卒業以上の者、高等学校卒業程度認定資格試験合格者、またはNESTAが認定する教育カリキュラム修了者であること |
4 | 日本国籍または、日本で就労可能な在留資格を有する者であること |
上記1~4と、このうち1つ以上に該当する者 | ● 1年以上のパーソナルトレーナー・インストラクターなどの実務経験がある ● 1年以上の運動部指導、フィットネス企業勤務経験がある ● 体育系または、医療系の大学・専門学校を卒業している ● NESTAの認定する養成講座、養成コース(認定校・認定アカデミー含む)を受講済みである |
これらの要件を満たすことで、受験資格が得られます。
この資格を取得することで幅広い知識や技術を身につけ、プロのパーソナルトレーナーとしての信頼を得ることができるようになります。
クラブマネジメントスペシャリスト
NESTA JAPANが認定するクラブマネジメントスペシャリストは、フィットネスジムやパーソナルジムの管理業務(マネジメント)について学ぶことができる資格です。
将来ジムやフィットネスクラブの開業を考えている方に、特に役立つ資格といえるでしょう。
この資格では、以下のことが学べます。
- マーケティングとプロモーション
- マネジメントスキル
- オペレーションのポイント
- 人材管理
資格取得には、8時間×2日間の座学・実技を含む集合研修を修了し、自宅で受験、合格する必要があります。
この資格は、18歳以上の人であれば誰でも受験可能です。
国際規格で海外でも需要が高いため、独立を考えている人のほかに、スポーツトレーナーとして海外でも活躍したい方におすすめです。
健康運動実践指導者
健康運動実践指導者は、「健康づくりを目的とした運動を、安全で効果的に実践指導する能力がある」と認められた人に、健康・体力づくり事業財団が認定する資格です。
主な業務内容は、運動プログラムの作成と指導、生活習慣病にかかる可能性のある”ハイリスク者”への個別指導や健康支援などです。
認定試験の受験資格を得るためには、養成校のカリキュラムを修了するか、9日間の講習会に参加することが必要です。
その後、認定試験を受験し合格することで、健康運動実践指導者の称号を取得できます。
この資格を取ることで、幅広い年齢層の人や、さまざまな健康状態の人々に対して、適切な運動指導を行えます。
スポーツトレーナーとして働く鍼灸師の仕事内容
スポーツトレーナーとして働く鍼灸師は、鍼灸の医学的な知識と、スポーツトレーナーとしての知識や技術の両方を活かしながら選手をサポートしています。
具体的には、運動方法の指導やメンタルケア、テーピングやマッサージ、施術による疲労回復やコンディション調整などさまざまです。
選手一人ひとりの状態を細かく分析し、最適な治療法やトレーニング方法を提案することが求められます。
鍼灸師とスポーツトレーナーの両方の資格を取得しておくと、将来的にスポーツ競技団体やジム、フィットネスクラブなど、さまざまな場所での活躍が期待できます。
ご自身のキャリアの選択肢を広げるためにも、両方の資格取得がおすすめです。
鍼灸師の資格とともにトレーナーとしての資格も取得しておくことがおすすめ
スポーツトレーナーとして働く鍼灸師にとって、トレーナーとしての資格も一緒に取得することは、スポーツの現場で働くうえで大きなメリットがあります。
鍼灸師としての専門知識と技術、トレーナーとしての知識と技術の両方を組み合わせることで、運動指導やコンディション調整方法の幅が増え、幅広く選手一人ひとりに合わせたサポートを提供できるようになるでしょう。
例えば、JAFAのGFI資格やNESTAのPFT資格などを取得することで、トレーニングの指導スキルや、運動指導のスキルを身につけることができます。
スポーツトレーナーの国家資格は存在しないため、これらの資格によって、トレーナーとしての能力と信頼性を客観的に証明できます。
鍼灸師としての専門性を活かしつつ、トレーナーとしての総合的なスキルを磨くことで、スポーツ界で活躍できる人材となるでしょう。
自身のキャリアプランに合わせた、資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。