総合トップ 情報かる・ける職種・資格について正看護師/准看護師プリセプター制度とは?メリット・デメリットから指導内容まで網羅的に紹介
情報 かる・ける

プリセプター制度とは?メリット・デメリットから指導内容まで網羅的に紹介

この記事の監修者
ゆみさと
【資格】
看護師

【プロフィール】
岩手県立大学看護学部を卒業後、血液内科・乳腺外科混合病棟にて勤務し、その後、透析クリニックに転職。
現在、看護師として働きながら、医療関係を中心にライターとしても活動中。

プリセプター制度は、新人看護師の教育を効果的に行うための制度です。
本記事では、プリセプター制度の概要やメリット・デメリット、指導内容や役割、プリセプターが意識すべきポイントなどを網羅的に解説します。

プリセプターを任されている方や、これから新人看護師の指導に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

正看護師/准看護師の求人を探す

プリセプター制度とは

プリセプター制度とは

プリセプター制度とは、一定期間で新人看護師に対し、特定の先輩看護師が指導役としてマンツーマンで指導する方式のことです。
一般的には、看護師経験3~4年以上の看護師がプリセプター(指導役)として任命され、約1年間プリセプティ(新人看護師)を指導します。

プリセプター制度の目的

プリセプター制度の目的は、新人看護師が看護学校で学んだ内容を実践できる能力を身につけさせ、一人前の看護師への成長をサポートすることです。
新人看護師は、理想と現実のギャップからリアリティショックを感じ、離職につながりやすい傾向にあります。

そのため、プリセプター制度は、新人看護師の悩みや不安を解消し、自信をもって看護師として成長するうえで重要です。

プリセプター制度に類似する3つの組織体制

プリセプター制度の他にも、新人看護師を教育するための組織体制があります。

以下の表に代表的な教育体制をまとめました。

制度名 制度内容
プリセプターシップ プリセプター一人が新人看護師一人を担当し、マンツーマンで看護技術、対人関係、サービス提供など全般を指導する制度。
チューターシップ(エルダー制) 決められたエルダー(リーダークラスの看護職員)が一人の新人看護師を担当し、仕事や学習の仕方、精神面で支援を行う方式。
一緒に日々の業務をするわけではないが、プリセプターのサポートも行う。
メンターシップ キャリア支援を目的とした制度。
メンターが新人看護師の相談相手となり、助言や指導で精神的なサポートを行う方式。
看護技術の指導は行わず、支援者としての役割がある。
チーム支援型 チームで新人看護師を指導する制度。
チームとして複数人のスタッフで教育に関わることで、病棟全体で新人看護師を育てる。

プリセプターに求められること

プリセプターには、以下の5つの能力が求められます。

● 新人看護職員に教育的に関わる能力
● 新人看護職員と適切な関係性を築くコミュニケーション能力
● 新人看護職員の置かれている状況を把握し、一緒に問題を解決する能力
● 新人看護職員研修の個々のプログラムを立案できる能力
● 新人看護職員の臨床実践能力を評価する能力

(引用:新人看護職員研修ガイドライン Ⅲ. 実地指導者の育成 | 厚生労働省

看護師としての知識や経験はもちろん、新人教育を円滑に行うためのコミュニケーション能力や新人看護師の理解力に合わせて適切な教育プランを実施するなど柔軟に対応できる能力も欠かせません。

プリセプター制度のメリット・デメリット

プリセプターを任された人は、プリセプター制度特有のメリット・デメリットを理解しておくことが大切です。

以下では、プリセプター制度のメリットとデメリットについて解説します。
それらを参考にして、実際の指導に活かしましょう。

プリセプター制度のメリット

プリセプター制度のメリットは主に以下の3つです。

  • 新人看護師が疑問を解消しやすい
  • 一貫した指導ができる
  • 指導者自身の看護師としての能力向上にもつながる

新人看護師が疑問を解消しやすい

まず、プリセプター制度があることで、新人看護師が疑問を解消しやすいことがメリットです。
新人看護師は、業務内で疑問や不安を感じる機会が多くありますが、先輩看護師が業務で忙しそうにしていると、なかなか声をかけられず、精神的に不安を感じてしまうことがあります。
プリセプター制度であれば、固定の指導者がいるため、わからないことを気軽に質問でき、疑問を解消しやすい環境を整えられるでしょう。

また、マンツーマンでの指導のため、プリセプターと密なコミュニケーションが取れ、信頼関係の構築につながりやすいです。

一貫した指導ができる

新人看護師ごとに固定のプリセプターが教育を担当することで、一貫した指導ができることもメリットです。
日によって指導係が変わってしまうと、新人教育の進み具合がわからなかったり、指導係によって指導方針が変わったりするでしょう。
加えて、人によって業務の進め方が異なるケースもあるため、同じ業務であっても複数の看護師から異なる指導を受けてしまうかもしれません。
そうなると、指導側と新人看護師側の双方に混乱を招いてしまうでしょう。

プリセプターとして指導係に任命することで、指導内容や方針のズレが少なくなります。

指導者自身の看護師としての能力向上にもつながる

プリセプターとして新人看護師の教育に入ることで、指導者となる看護師の能力向上にもつなげることができます。
新人看護師への指導は自身の看護師としての知識を再確認できるため、プリセプターにとっても良い学びの機会です。

指導を通じて、普段の業務を意識的に振り返り、指導内容に根拠を持つことで、自身の看護実践能力の向上につながるでしょう。

デメリット

前述のメリットがある一方で、プリセプター制度には以下のようなデメリットもあります。

  • 業務負担が大きくなる
  • プリセプターと新人看護師との相性が合わない場合がある

これらのリスクを考慮して、円滑な導入と効果的な指導に活かしていきましょう。

業務負担が大きくなる

プリセプター制度では、通常業務に加えて新人看護師の指導が入るため、プリセプター側の業務が必然的に増えてしまいます。
具体的には、指導計画の作成や評価、受け持ち人数の増加です。

看護師としての成長スピードは、人によって異なります。
そのため担当の新人看護師の成長に合わせて、プリセプターも随時サポート内容を更新しなければなりません

また、新人看護師が患者さんを受け持つことで、自身の受け持ち患者さんに加えて新人看護師の受け持ち患者さんもみていく必要があります。
そのため、朝に新人看護師の受け持ち患者さん分も含めて情報収集し、確認していかなければならないでしょう。

このように、プリセプターであることによる業務負担が大きくなると予想されます。

プリセプターと新人看護師との相性が合わない場合がある

相性の良し悪しは人それぞれであるため、プリセプターと新人看護師との相性が合わない可能性があります。
相性が合わず信頼関係が築けないと、お互いにとって精神的な負担になってしまいかねません。
プリセプターは、「新人看護師が何に悩んでいるのかわからない」と感じたり、反対に新人看護師は「なんとなく相談しにくい」などと感じてしまうでしょう。
教育担当者が交代になったり、新人看護師の早期退職につながったりした場合に、プリセプターが責任を感じてしまいやすいです。

プリセプター制度の指導内容

プリセプター制度では主に、以下の4つに関しての指導を行います。

  • 業務内容
  • 看護知識
  • 看護技術
  • 精神的なサポート

それぞれどのような指導内容か、見ていきましょう。

業務内容

日々の業務を新人看護師とともに振り返り、業務内容での疑問点を解消したり、業務の習得状況を確認します。
実践的な看護業務だけでなく、看護記録の作成や病棟内でのルール、他看護師や医師への報告の仕方など、他のスタッフと円滑に連携するための業務も指導が必要です。

また、社会人になりたての新人看護師の場合は、社会人としてのマナーや患者さんとの関わり方、コミュニケーションの取り方など看護師として働くための心構えも教えていかなければいけません。
大多数の患者さんは新人看護師よりも目上の存在だからこそ相手への敬意を払うなど、看護師として患者さんから信頼を得るための姿勢も新人看護師が学ぶべき大切な要素です。

看護知識

プリセプターは、看護に必要な基礎知識の習得もサポートします。
病棟内での業務を通しての確認はもちろんのこと、事前学習の確認やレポートの提出などによって、必要な知識が身についているかチェックすることが重要です。

新人看護師がすでに知っている基礎知識に対しても、用語の定義や法的根拠を補完し、十分な理解をもって実践に活かせるように導きます。

看護技術

採血や点滴投与、静脈注射などの基本的な看護技術を新人看護師が習得するための指導も行います。
技術指導については、職場や病棟ごとに看護技術習得のためのチェックリストが用意されているケースが多いため、チェックリストに則って、新人看護師が看護技術を実践できるよう指導していきます。

まずは、患者さんに実施する前に模擬練習を行い、チェックリストに記載の手順通りにできているか、また手順の根拠を理解しているか確認していきましょう。

手順を理解していると判断できたら、実際に受け持ち患者さんに看護技術を実践してもらいます。
プリセプターは間違いがないよう見守りながら、フィードバックを繰り返し、段階的に技術を習得できるようにしていくと良いでしょう。

精神的なサポート

プリセプターの指導内容には、新人看護師への精神的なサポートも入ります。
前述のように、初めて臨床現場に立つ新人看護師は、理想と現実のギャップによりリアリティショックや業務に対する不安を感じやすいのが現状です。

自身が1年目看護師だった頃のことを思い出しつつアドバイスをしたり、相談に乗ったりすることで、精神面でも新人看護師をサポートしていきましょう。
看護指導だけではなく、雑談などをとおして不安な気持ちをを理解したり、共感することがより良い指導への第一歩となるでしょう。

正看護師/准看護師の求人を探す

プリセプターの1日の流れ

プリセプターの1日の流れ

プリセプターの1日の流れは主に、業務開始時、業務中、業務終了後の3つに分けられます。
各時間帯ごとに、プリセプターが行う業務を解説していきます。

業務開始時:業務内容・スケジュールの確認

プリセプターは、自分の担当患者さんに加えて、新人看護師の担当患者さんのスケジュールや状態についての情報収集も業務開始時に行います。
業務開始前に新人看護師と業務内容や1日のスケジュールを確認し、フォローが必要な場面やケアをするうえでの注意点を事前に共有することが必要です。

お互いに何をすべきか確認・共有することで、1日の流れをイメージします。

業務中:業務の進捗を確認

業務中は、プリセプターが新人看護師の業務の進捗状況を適宜確認していきます。
どの業務が終わっていて、どの業務が終わっていないかを具体的に確認することが重要です。
そして業務にかかる時間を想定して、適宜行動計画をアドバイスしていきます。

また、進捗状況だけではなく、業務のなかでの疑問点や不安なことについても確認し、解決していきましょう。
精神的にも業務的にも、プリセプターのフォローが新人教育において欠かせません。

業務終了後:1日の振り返り

業務終了後は、1日の業務を振り返り、プリセプターと新人看護師でお互いに感じたことや考えたことなどを共有します。
改善点の指導だけでなく、業務中に感じた疑問点や不安の解消も行いましょう。
ここでは、主体的に話せる雰囲気作りや、具体的な点を挙げて褒めることなど、新人看護師が前向きになれるようなコミュニケーションが大切です。

新人看護師の成長を促すためにも、業務終了後の振り返りは欠かせません。

時期ごとのプリセプターの役割

プリセプターの役割は、新人看護師の成長に合わせて変化していきます。
春夏秋冬の4つの時期ごとに、プリセプターの役割について見ていきましょう。

春(4月〜6月):お手本となる

プリセプターの最初の役割は、新人看護師のお手本となることです。
新人看護師の業務はまずシャドーイング(プリセプターに付き添い業務を見学すること)から始まります。

ここでは、看護技術や看護に対する考え方を、新人看護師のお手本となるように指導することが必要です。
実施する業務を見てもらうだけでなく、ケアを実施する根拠や注意点など看護師としてのアセスメントについても一緒に教えることが大切でしょう。

夏(7月〜9月):スケジュール管理を指導する

7月頃から新人看護師は少しずつ一人立ちし始めます。
この時期から、新人看護師の受け持ち患者数も増えてくるため、スケジュール管理の指導が欠かせません。

多重課題に対する優先順位の付け方や、患者さんの状態により追加の業務が発生した際の対応方法や考え方などを教えていきましょう。
新人看護師が自立して行動ができるよう、実践的な指導をしつつ見守っていくことが重要です。

また、一人立ちした新人看護師に対しては、適宜プリセプター側から状況確認をするのではなく、自発的に報告・連絡・相談ができるよう伝え、徐々に指導体制を変えていきましょう。

秋(10月〜12月):必要に応じてフォローする

実施頻度の高い業務は自立的に行える段階に入るため、プリセプターには必要に応じたフォローが求められます。
苦手な業務や頻度の低い業務であればダブルチェックをするなど、実施する業務によって対応方法を変えていきましょう。

この時期は一人立ちし始めても、まだサポートが必要な状態です。

冬(1月〜3月):知識の習得漏れをなくす

1月〜3月は1年間の集大成の時期です。
看護師2年目になるにあたり、知識・技術の習得漏れがないかをプリセプターが確認していく必要があります。

ほとんどの技術は習得できていても、場合によっては未経験の技術が残っている可能性もあるでしょう。
そのため、技術習得のチェックリストを見直し、抜け漏れなく経験ができているか確認をすることが大切です。

プリセプターになった場合に大切なこと

プリセプターになった際に、特に意識しておきたいことは以下の3つです。

  • 他の人と比較しない
  • 新人看護師との信頼関係を構築する
  • 周囲を巻き込んで指導する

各ポイントについて以下で詳しく解説するので、これからプリセプターを任される人はぜひ参考にしてください。

他の人と比較しない

指導する新人看護師によって、それぞれ業務の進み具合や習得のスピードが異なります。
そのためプリセプターは、他の新人看護師と比較しないで指導をすることが大切です。

指導している新人看護師の進捗具合や理解のスピードを客観的に判断し、その人の性格や状況にあったスピードで指導する必要があります。
他人との比較は避けて、新人看護師のモチベーションが下がらないように気をつけましょう。

新人看護師との信頼関係を構築する

新人看護師とは可能な限り対等な立場で接し、信頼関係の構築を大切にしましょう。
新人看護師はすべての業務が初めてであることが多く、緊張しています。
プリセプターは、新人看護師がリラックスできるような声かけや、質問や相談を気軽にできるような雰囲気を作り、信頼関係につなげましょう。

周囲を巻き込んで指導する

周囲の看護師も巻き込んで、一緒に指導することを意識しましょう。
プリセプターを任されたからといって、担当の新人看護師の指導を一人で完璧に行わなければいけないという負担を抱え込む必要はありません。

プリセプター自身のみで解決できないことは、先輩看護師に相談するなど周囲の人の協力を仰ぐことが大切です
プリセプターを経験した先輩看護師に、今困っていることを相談してみたり、新人看護師との勤務が合わない時は、他の看護師に指導を進めてもらうよう頼みましょう。
プリセプター制度上でも、チーム全体で新人看護師を育てるという意識が必要になります。

プリセプターの役割を理解し新人看護師とともに成長しよう

プリセプター制度とは、新人看護師に対し、特定の先輩看護師(プリセプター)がマンツーマンで指導する教育方式のことです。
効果的な新人教育が期待できるだけでなく、プリセプター自身が看護師として成長する機会にもなります。
プリセプター制度は、一貫した指導ができ、新人看護師の疑問を解決しやすい一方、プリセプターの業務負担が増えやすいのも事実です。

プリセプターが効果的に指導を行うためには、確かな看護の知識や技術はもちろん、良好な関係を築けるコミュニケーション能力も欠かせません。
そして、新人看護師の成長段階や性格に合った指導をすることが重要です。
新人看護師との信頼関係を大切にしながら、周囲のスタッフとも協力して、適切な指導や精神的なサポートにあたりましょう。

正看護師/准看護師の求人を探す

執筆者について

情報かる・けるは、医療・介護従事者として働いている方や、これから目指す方の「知りたい」に応えるメディア。 全国80,000件以上の求人を扱う弊社スタッフが、編集部として情報発信! “いい仕事が見つかる・いい仕事を見つける”ための、有益なコンテンツをお届けします。 https://x.com/karu_keru

いいねと思ったらシェア
見つかる・見つける かる・けるとは?

かる・けるは、医療介護の仕事を探せる求人情報サイト。あなたに合った医療介護求人が見つかります。すべてのお仕事情報は、勤務地、年収や月収などの給与、正社員、契約社員、パート・アルバイト、業務委託などの雇用形態、施設のサービス形態といった条件で検索でき、希望に合う求人を簡単に探しやすいのが魅力です。就きたいお仕事が見つかったら、そのまま応募も可能。応募はダイレクトに求人掲載事業者に届くので、スピーディかつスムーズに進みます。医療介護分野での就職はもちろん、転職、復職の際にも活躍するサイトです。