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介護士が不足している原因とは?現状と解決策も解説

この記事の監修者
宮島桃香
【資格】
社会福祉士、精神保健福祉士

【プロフィール】
福祉系大学卒業後、障害者就業・生活支援センターや就労継続支援施設に勤務する。
現在はフリーライターとして、医療福祉や就職に関する記事を執筆している。

介護士の不足は、日本の高齢化社会において深刻な問題となっています。
高齢者人口の増加にともない、介護サービスの需要は年々高まっていますが、その一方で介護の現場では慢性的な人手不足に悩まされているのです。

この記事では、介護士が不足している原因や現状、そして解決策について詳しく解説していきます。
介護業界に携わる方々や、将来介護の仕事を考えている方々にとって、有益な情報となるため、ぜひご覧ください。

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介護福祉士が人手不足である原因

介護福祉士が人手不足である原因

介護福祉士の人手不足は、複数の要因が絡み合って生じています。
少子高齢化や離職率の高さ、採用の難しさなど、さまざまな課題が存在します。
ここでは、介護士が不足している主な原因について、一つずつ詳しく見ていきましょう。

少子高齢化

少子高齢化は、介護士の人手不足に大きな影響を与えています。
2023年度の調査によると、65歳以上の人口は3,623万人となっており、人口に占める高齢化率は29.1%に達しました。
高齢化率が上昇すると、それだけ介護を必要とする方が増えるため、介護サービスの需要も増加します。

一方で、15~64歳の人口は年々減少傾向にあります。
2000年度には8,622万人でしたが、2023年度には7,395万人まで減少しました。
さらに、合計特殊出生率も低下しており、2023年には1.20%と過去最低の値を記録しています。

このように、少子高齢化が進行すると、介護サービスを必要とする高齢者は増える一方で、サービスを提供する労働者の数は減少してしまいます。
結果として、介護現場における人手不足が深刻化していくのです。

離職率が高い

介護士の離職率の高さも、人手不足の原因となっています。
2022年度の調査によると、介護職の離職率は14.4%で、全業種平均の15.0%とさほど変わりません。
しかし、「職員の定着率が低く困っている」と回答した事業所は17.7%に上り、現場の人手不足が解消したとは言い難い状況です。

特に問題なのは、離職者の勤務年数です。
離職者のうち、勤続年数1年未満の者が34.4%、1年以上3年未満の者が25.5%を占めています。
つまり、新しい人材が定着しにくいことが、介護士の人手不足に拍車をかけているのです。

採用が難しい

介護職は離職率が高い一方で、新たな人材の採用も困難を極めています。
介護士の採用が困難な理由として、他の産業と比較して労働条件が良くないことや、同業他社との人材獲得競争が激しいことが挙げられています。

2023年度の調査によると、介護サービス事業所を運営するうえでの課題点は、以下の2点です。

  • 良質な人材の確保が難しい
  • 今の介護報酬では、人材の確保・定着のために十分な賃金を払えない

これらの要因が相まって、新たな人材の確保を難しくしているのです。

給料が低い

介護士が人手不足に陥っている大きな原因の一つとして、給料の低さが挙げられます。
介護労働実態調査によると、2023年の介護職員の平均給与は約271万円でした。
これは、正社員の平均給与額である318万円と比較すると、かなり低い水準だといえます。

実際に、介護職員の退職理由を調査すると、「収入が少なかったため」と答えた方が全体の16.6%を占めています。
低賃金が介護士の離職や人材不足につながっているのが現状です。

職場の人間関係トラブル

職場の人間関係トラブルも、介護士の離職や人手不足の原因の一つです。
2023年度の調査によると、介護関係の仕事を辞めた理由として、「職場の人間関係に問題があったため」と回答した方は34.3%に上ります。
具体的な悩みとしては、「上司の思いやりのない言動・きつい指導・パワハラなどがあった」「上司の管理能力が低い・業務指示が不明確・リーダーシップがなく信頼できなかった」と回答した方が多数を占めました。

さらに、人間関係について相談できる窓口が少ないことも課題となっています。
何か悩みがあったときに相談できる担当者や相談窓口が、「ない」または「わからない」と答えた方の割合は54.2%に達していました。

このように、悩みを相談できる体制が整っていない、または職場に周知されていないことも退職者が出る要因の一つとなっており、結果として人手不足につながっているのです。

評価制度が整っていない

職場の評価制度が整っていないことも、原因の一つです。
評価制度が一定の基準で定まっていないと、個人の能力や仕事内容が正しく評価されず、いくら努力しても給与や賞与に反映されません。
このような状況は、仕事に対する不満やモチベーションの低下につながります。

また、評価基準が整備されていないと、昇格や昇給の基準があいまいとなり、年功序列になりやすくなります。
その結果、主に若い人材から不満が出やすくなり、新しい職員が入っても定着しにくくなるのです。

適切な評価制度の導入は、介護士のモチベーション向上と人材定着につながる重要な取り組みだといえるでしょう。

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介護士の人手不足の現状と今後の見通し

介護士の人手不足の現状と今後の見通し

介護士の人手不足は、日本の高齢化社会において深刻な問題となっています。
ここでは、現在の介護士不足の実態と、今後の見通しについて詳しく見ていきましょう。
数字で見る現状や地域による格差など、具体的なデータをもとに解説していきます。

必要数に対して約8万人不足している

厚生労働省が策定した「第8期介護保険事業計画」に基づく介護職員の必要数は、以下のとおりです。

年度 必要数
2023年度 約223万人
2025年度 約243万人
2040年度 約280万人

これに対して、2022年度の介護職員数は約215.4万人となっています。
2023年度の必要数と比較すると、約8万人もの介護士が不足していることがわかります。

さらに深刻なのは、2025年度までは毎年約5万人の規模で介護職が不足する見込みとなっていることです。
このままでは、これから数年の間に介護士の人手不足がさらに顕著になる可能性が高いといえるでしょう。

地域によって格差がある

介護士の人手不足は、地域によっても大きな格差があります。
2022年度の介護職の有効求人倍率を都道府県別に見てみると、最も高いのは福岡県の13.02倍で、最も低いのは徳島県の1.42倍です。
有効求人倍率が高いほど求職者に対して求人数が多く、人手不足の傾向が強いことを示しています。

地域によって格差があるとはいえ、21都道府県において有効求人倍率が5倍を超えていることからも、全国的に介護士の人手が足りていないことがわかります。
この地域格差は、介護サービスの質や量にも影響を与える可能性があり、今後の課題となるでしょう。

介護士の人手不足の解決策

介護士の人手不足は深刻な問題ですが、さまざまな解決策が考えられています。
ここでは、介護現場の人手不足を改善するための具体的な方策について紹介します。
処遇改善やICT導入、ユニットケアの実施など、効果的な取り組みを詳しく解説していきましょう。

処遇を改善する

介護士の人手不足を解消するには、職員の処遇を改善することが重要です。
介護労働実態調査によると、採用が良好な事業所の特徴として「他事業所に比べて労働条件が良い」「福利厚生が良い」といった点が挙げられています。

労働条件を改善するには、給料を上げることはもちろん、職員一人ひとりの負担を減らすことも必要です。
具体的には、有給休暇の取得促進や残業時間の削減、柔軟な勤務体系の導入などが考えられます。
働きやすい環境を整えることで、人材の確保と定着につながるでしょう。

ICTツールを使って業務を効率化する

業務の一部にICTツールを導入すると、介護士の業務負担も減るため人手不足の改善につながる可能性があります。
すでにパソコンで利用者さんの情報を共有している事業所は約半数ありますが、給与計算やシフト管理、勤怠管理などを一元化したシステムを使っている事業所は、まだまだ少ないのが現状です。

厚生労働省の調査によると、ICTツールを導入した事業所では「情報共有がしやすくなった」「文書作成の時間が短くなった」などの効果が見られています。
ICTツールの活用は、職員の負担を軽減し、働きやすい環境づくりにつながる可能性があるのです。
業務効率化によって生まれた時間は、より質の高い介護サービスの提供に充てることもできるでしょう。

ユニットケアを導入する

ユニットケアとは、利用者さん10人程度を一つのユニットとし、常に同じ介護士がユニットに加わって共同生活しながらケアを行う仕組みです。
ユニットごとに特定の職員を配置するため、職員一人ひとりの負担が軽減されます。

また、ユニットケアでは利用者さん一人ひとりに個室が付き、ほかの利用者さんと介護職員が交流するためのスペースが用意されるのが一般的です。
これにより、利用者さんのプライバシーが守られ、人間関係のトラブルも減るため、介護士の業務負担軽減も期待できます。

実際に、ユニットケアを導入した施設では、介護士が利用者さんの身体的介護を行う時間よりも、余暇活動や交流を行う時間が増えています。
このような取り組みは、介護士の仕事の質を向上させ、やりがいを感じられる環境づくりにつながるでしょう。

資格取得を支援する

職員の資格取得を支援することも、介護士の人材不足を改善する方法の一つです。
資格支援制度を導入すると、未経験者にも「働きながら資格を取れる」とアピールできます。
また、資格を取得すると昇給やキャリアアップにもつながるため、職員にとってもメリットがあるでしょう。

具体的な資格取得支援の方法として、以下が挙げられます。

  • 資格取得にかかるテキストやスクール代の一部または全部を負担する
  • 資格取得のための講座や研修を開催する
  • 資格勉強を考慮したシフト調整を行う

このような支援策を導入することで、職員のスキルアップと定着率の向上が期待できます。
介護の質の向上にもつながり、利用者さんへ質の高いサービスを提供できるようになるでしょう。

外国人労働者を雇用する

介護士の人手不足を改善する方法として、外国人労働者を雇用する方法もあります。
2019年に、国内の人材不足を改善するために「特定技能制度」が設けられました。
介護分野は特に人材不足が深刻なため、在留資格を持つ外国人労働者を雇用し、体力がある若い人材を獲得する必要があります。

利用者さんとの意思疎通が取りにくいといった点から、外国人労働者を受け入れていない事業所もあります。
しかし、労働力の確保や業務の見直しができる点を評価し、外国人労働者を雇用している事業所も少しずつ増えてきています。

外国人労働者の雇用には、言語や文化の違いによる課題もありますが、適切な研修やサポート体制を整えることで、貴重な人材として活躍してもらうことができるでしょう。
また、多様性のある職場環境は、新しい視点や発想をもたらし、介護サービスの質の向上にもつながる可能性があります。

介護士の人手不足の原因を知って対策しよう

介護士の人手不足は、日本の高齢化社会において早急に解決すべき課題となっています。
少子高齢化や離職率の高さ、採用の困難さ、低賃金など、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることがわかりました。
しかし、これらの課題に対しては、処遇改善やICTツールの導入、ユニットケアの実施、資格取得支援、外国人労働者の雇用など、多角的なアプローチによる解決策が考えられます。

介護現場に携わる方々や事業所経営者は、これらの原因と対策を十分に理解し、自分たちの現場に合った改善策を講じていくことが重要です。
また、行政や社会全体も、介護士の重要性を認識し、支援体制を整えていく必要があります。

介護士の人手不足解消はすぐに解決できる課題ではありませんが、着実な取り組みを続けることで、より質の高い介護サービスの提供と、働きやすい職場環境の実現につながっていくはずです。
介護業界全体でこの課題に向き合い、解決に向けて前進していくことが求められています。

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執筆者について

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