
臨床心理士は心理系主要資格の一つですが、学校に通わず独学で取得できるのでしょうか。
臨床心理士の資格試験は受験できる人が限られているので、この点を説明します。
また、臨床心理士以外の心理系資格で、独学で取得可能なものと独学では取得できないものも紹介します。
目次
臨床心理士の資格は独学で取得できる?
臨床心理士になるには資格試験の合格が大前提です。
しかし、試験を受けるための条件があるので、まずは受験資格がどのようなものであるかをよく理解しておきましょう。
臨床心理士の資格は独学で取得できない
臨床心理士の資格を独学だけでは取得できません。
資格試験を受験するには、日本臨床心理士資格認定協会が定める大学院を修了していなければならないためです。
受験資格は以下のように定められています。
<主な受験資格>
●指定大学院(1種・2種)を修了し、所定の条件を充足している者
●臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
●諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後の日本国内における心理臨床経験2年以上を有する者
●医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験2年以上を有する者 など
引用元:日本臨床心理士資格認定協会
夜間コースを設置している大学院や、通信制の大学院もあります。
子育て中の方や社会人など、日中に学校に通う時間がない方は、こうした大学院に通うことも選択肢の一つとなるでしょう。
臨床心理士の大学や通信大学については以下の記事をご参照ください。
他の心理系主要資格も独学で取得できない
臨床心理士以外にも心理系の資格があります。
しかし、主要な心理系資格のなかに独学で取得できる資格はありません。
認定心理士や公認心理師、産業カウンセラーの認定・受験条件は以下のとおりです。
<認定心理士>
試験はなく、条件を満たして日本心理学会に認定してもらうことで取得可能です。
認定条件は以下の通りです。
- 大学で心理学関係の科目を履修し、認定に必要な単位を取得する
認定心理士: 日本心理学会
<公認心理師>
受験資格を得ることで国家試験を受けることができ、合格することで取得可能です。
受験資格は次のようなものがあります。
- 大学および大学院で所定科目を修了する
- 大学で所定科目を修了し、一定の施設で2年以上の実務に従事する
- 外国の大学院修了など、上記2点と同等以上の知識・技能を有する
公認心理師: 一般財団法人日本心理研修センター:公認心理師 第7回受験の手引
<産業カウンセラー>
日本産業カウンセラー協会が主催する産業カウンセラー試験を受け、合格することで取得可能です。
受験資格は以下のとおりです。
- 産業カウンセラー養成講座を修了する
- 大学院で所定科目を履修し、認定に必要な単位を取得する
産業カウンセラー: 日本産業カウンセラー協会
指定大学院修了後は独学で資格取得できる?
臨床心理士の試験を受けるには、まず受験資格を満たさなければなりません。
指定の大学院を修了すれば受験資格を得られるため、卒業後は自分のタイミングで好きな年に受験できます。
在籍していた大学院が受験をサポートしてくれますが、社会に出て働きながらの受験になるため、基本的に試験勉強は独学になります。
独学で勉強する場合は、過去問や書籍を繰り返し読み込み、問題の傾向を理解して対策を練りましょう。
筆記試験だけでなく、論述試験や面接試験もあるため対策が必要です。
試験対策講座や勉強会に参加するという方法もあります。
試験対策には以下の参考書がおすすめです。
- 『新・臨床心理士になるために』
新・臨床心理士になるために[令和5年版] | (公財)日本臨床心理士資格認定協会監修
試験概要や前年度の問題が載っています。
数年分の過去問題集から対策を練ることが望まれます。
- 『臨床心理士資格試験問題集5』
臨床心理士資格試験問題集 5:平成29年~令和元年 | 日本臨床心理士資格認定協会監修
過去問題集です。
平成29年から令和元年までの筆記試験問題の中から120題が公開され、問題の答えと解説が載っています。
臨床心理士以外に独学で取得できる資格
心理学関係の資格は、臨床心理士だけではありません。
国家資格から民間資格までいろいろあります。
独学で取得可能な心理系資格のなかから、誰でも受験できるものと通信講座で取得できるものを紹介します。
何らかの心理系資格が欲しい方、心理学の知識を証明したい方、日常生活に心理の知識を活かしたい方など、独学で心理学関係の資格を取得したい方はチェックしてください。
受験要件なしの資格
受験条件がなく、誰でも受験できる心理学の資格を3つ紹介します。
メンタル士心理カウンセラー
日本メディカル心理セラピー協会が認定する資格です。
試験では、心理学の知識とストレス原因の症状、その治療方法に関する知識が十分で、カウンセリングをする知識・技能を有しているかが問われます。
年6回行われる試験は在宅で受験でき、7割以上正答すると合格です。
心理学検定
一般社団法人日本心理学諸学会連合が年1回行っている検定試験で、心理学の基礎知識・能力を認定する資格です。
特1級・1級・2級に分かれており、10科目のうち合格した科目数に応じて取得級が認定されます。
科目ごとの合格基準は約6割以上で、各科目の合格実績は5年間有効です。
こころ検定
一般財団法人日本こころ財団が主催する、文部科学省後援の検定試験です。
基礎心理学を中心に心を学問として学び、自分自身や周囲のストレスケア、心のサポートができるようになることを目的としています。
1級から4級まであり、各級の合格基準は正答率7割以上で、1級のみ実技・口述試験があります。
通信講座の資格
次に、通信講座を受講すれば取得できる資格を2つ見ていきましょう。
メンタルケアカウンセラー
心理学の基礎知識やコミュニケーションにおける基礎能力をはかる資格です。
メンタルケア学術学会が主催し、一般財団法人生涯学習開発財団・一般財団法人ヘルスケア産業推進財団が後援する資格です。
指定の講座を修了し、既定の提出課題を修了した上で修了認定テストに合格すると、資格を取得できます。ヒューマンアカデミーの通信講座である、たのまななどで受講できます。
在宅で受験可能です。
チャイルドカウンセラー
一般社団法人日本能力開発推進協会の認定資格です。
不登校や学校内でのさまざまな問題行動等の対応に求められる専門的な心理学知識や心理援助技術を備えているカウンセラーであることを証明する資格です。
同協会が指定する株式会社キャリカレの通信講座を受講し、試験に合格すると、資格を取得できます。
在宅で受験可能です。
臨床心理士は独学で取得できないが、独学で取得可能な資格もある
臨床心理士は、主に日本臨床心理士資格認定協会が定める大学院の修了者を対象とする資格のため、独学で取得できません。
仕事に直結するような主要な心理系資格の多くは、専門的な知識や技術が必要なことから、臨床心理士資格と同様に、大学や大学院で学ぶことが条件のため、独学だけでは取得できないものになっています。
大学院修了などにより、臨床心理士試験の受験条件を満たしている方は、参考書や試験対策講座などを活用し、独学で勉強して資格取得をめざすことになります。
何らかの心理系資格が欲しい方、心理学の知識を証明したい方は、受験資格のないものや通信講座の受講で取得できるものもあります。
独学で心理系資格を取得したい場合は選択肢の一つとして考えると良いでしょう。
なお、臨床心理士の仕事内容や年収の詳細を知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
臨床心理士に将来なりたいと考える方に、向いている人について紹介した記事もあります。