臨床心理士は、臨床心理学をもとにした知識や技術を使用して、人々のこころの問題にアプローチする心の専門家です。
近年、心理的な支援への要望は高まる傾向 にあり、活動分野は医療、福祉、教育、企業、地域コミュニティーなど幅広くなっています。
この記事では、これから臨床心理士になりたい方や臨床心理士の仕事内容を知りたい方に向けて、以下の内容を解説します。
- 臨床心理士について
- 国家資格を取得してから働くまでの流れ
臨床検査士の年収についても触れていますので、ご参照ください。
目次
臨床心理士とは
臨床心理士とは、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の認定をうけた心理専門職 です。
臨床心理学を基礎にした知識や技術を活用し、こころの問題に取り組んでいます 。
おもな活動として以下の5つがあげられます。
- スクールカウンセラー
- 子育て支援
- 高齢者支援
- 犯罪被害者等支援
- 私設臨床心理士
複雑化する現代社会において、心理的課題を抱える方が増えています。
そのため、上記の5つを中心にさまざまな分野から期待されている職種です。
1988年に日本臨床心理士資格認定協会が設立され、認定制度が始まりました。
2022年4月1日現在で39,576名の臨床心理士が認定されています。
協会が指定する、心理学を専攻する大学院修士課程を修了後、資格試験の合格者が資格を得られます 。
臨床心理士ができること
臨床心理士は、教育、医療・保健、福祉、司法・矯正、労働・産業などのさまざまな分野で活動しています。
それぞれの分野について解説します。
分野 | 活動内容 | 主な活動場所 |
教育 | 発達、学業、生活面などでおきる問題に対し、心理的援助を行う。 本人だけでなく、親への面接、教師へのコンサルテーションなども実施。 必要に応じて、他機関との橋渡し役も務める。 |
・学校内の相談室 ・教育センター ・各種教育相談機関 |
医療
保健 |
心の問題が原因で不適応状態になっている方、病気や怪我をした方への心理的援助を行う。 心理テストや心理療法のほかに、デイケアやコンサルテーションなどの活動も実施。 市区町村の保健センターでは小児科医や保健師とともに乳幼児の健康診査・発達相談などにも関わる。 |
・病院、診療所 (精神科、心療内科、小児科など) ・保健所 ・精神保健福祉センター ・リハビリテーションセンター ・市区町村の保健センター |
福祉 | 子供の心身の発達、非行、障害、女性や高齢者の問題など、福祉に関するさまざまな内容を心理的側面から援助。 | ・児童相談所 ・療育施設 ・心身障がい者福祉センター ・障がい者作業所 ・女性相談センター ・老人福祉施設 |
司法
矯正 |
社会内処遇を決定する際の判断材料になるテストや調査、矯正に向けての面接など、心理的側面から援助。 | ・家庭裁判所 ・少年鑑別所 ・刑務所 ・拘置所 ・少年院 ・保健観察所 ・児童自立支援施設 ・警察 |
労働
産業 |
就業するうえで出てくるさまざまな問題を、心理的側面から援助。 解決へ向けて、面談や職場内へのコンサル、職業の適正の相談などを請け負う。 |
・企業内相談室 ・企業内健康管理センター ・安全保健センター ・公立職業安定所 (ハローワーク) ・障がい者職業センター |
臨床心理士の主な仕事内容
臨床心理士の専門的な仕事内容はおもに以下の4つ に分類されます。
1. 臨床心理査定(心理アセスメント)
複数の心理テストや観察・面接を実施し、相談者の特徴や問題点、援助する方法を明らかにし、自己理解や支援に活用します。
2. 臨床心理面接
相談者の特徴に応じて、以下のような臨床心理学的技法を用いて心の支援を行い、問題の克服や悩みの軽減をめざします。
精神分析 | 夢分析 | 遊戯療法 |
行動療法 | 箱庭療法 | 臨床動作法 |
家族療法 | 芸術療法 | 認知療法 |
3. 臨床心理的地域援助
相談者だけを対象とせず、地域住民や学校、職場など、周囲の人々(コミュニティ)へのコンサルテーション活動も行います。
生活環境をより良くするために、心理的情報の提供や提言もします。
4. 調査・研究活動
1〜3で用いる臨床心理学の技術的な手法や知識を確実なものにするため、調査や研究活動を実施します。
臨床心理士の仕事内容や年収を詳しく知りたい方は以下も参考にしてください。
臨床心理士資格を取得し働くまでの流れ
臨床心理士の資格を取得する流れは図のようになります。
臨床心理士の受験資格は、日本臨床心理士資格認定協会が定めた基準のいずれかに該当することが条件となっています。
1. 本協会が認可する第1種指定大学院(修了後の心理臨床経験不要)を修了し、受験資格取得のための所定条件を充足している者(「新1種指定校」という)
2. 本協会が認可する第1種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している者(「旧1種指定校」という)
3. 本協会が認可する第2種指定大学院を修了し、修了後1年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している者(「新2種指定校」という)
4. 本協会が認可する第2種指定大学院を修了し、修了後2年以上の心理臨床経験を含む受験資格取得のための所定条件を充足している者(「旧2種指定校」という)
5. 学校教育法に基づく大学院において、臨床心理学またはそれに準ずる心理臨床に関する分野を専攻する専門職学位課程を修了した者(「専門職大学院」という)
6. 諸外国で上記1. または3. のいずれかと同等以上の教育歴および日本国内における2年以上の心理臨床経験を有する者
7. 医師免許取得者で、取得後2年以上の心理臨床経験を有する者
引用元:日本臨床心理士資格認定協会
臨床心理士の大学一覧などについて知りたい方は以下の記事を参照してください。
臨床心理士は多方面で活躍できる心理系資格
臨床心理士は臨床心理に関する専門知識を活かし、教育、医療・保健、福祉、司法・矯正、労働・産業などさまざまな分野で活躍しています。
代表的なところは、スクールカウンセラーや子育て支援、高齢者支援、犯罪被害者支援などです。
心理的課題を抱える方が増えてきている現代において、さまざまな分野から期待されている職業となっています。
また臨床心理士は、(公財)日本臨床心理士資格認定協会が認定する国家資格です。
臨床心理士の資格について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。