
歯科技工士は巷で、離職率が高いといわれています。
しかし、実際には「どのくらいの歯科技工士がその職を離れているのか」といった正確な統計は出ていません。
それにも関わらず、歯科技工士の離職率が高いといわれる原因はどこにあるのでしょうか。
この記事では歯科技工士の離職率の現状や、離職率が高いといわれる理由について解説します。
目次
歯科技工士の離職率
歯科技工士の離職率は高いといわれることがありますが、実際に離職率を調べた統計があるわけではありません。
なお、厚生労働省が現職の歯科技工士に対して「現在の職場を辞めたいと思っているか」という調査を行った結果、「思わない」と答えた人が58.6%、「やや思う」が23.7%、「思わない」が17.1%というデータがでました。
この結果から、歯科技工士の離職意向が高いわけではないということがわかります。
一方で、歯科技工士の免許を取得した人の就業率が低いという事実もあります。
厚生労働省が発表している資料によると、令和2年の歯科技工士の国家試験合格者数は823人です。
しかし、令和2年度の歯科技工士数は34,826人で、2年前よりも358人増に留まっています。
この内容からわかるとおり、歯科技工士の免許を取得しても半数近くの人が歯科技工士として就業していない、というのが現状です。
歯科技工士の離職率に関する統計がないのにも関わらず、「歯科技工士の離職率が高い」という話が広まってしまうのは、こうした就業率の低さが影響しているのかもしれません。
歯科技工士の離職率が高いといわれる3つの理由
ここでは、歯科技工士の離職率が高いといわれる主な理由を3つご紹介します。
労働時間が長い
歯科技工士の離職率が高いといわれる理由の一つとして、労働時間が長いことが挙げられます。
以下は、歯科技工士の労働時間が長くなる要因です。
- 手作業が多い
- 制作物が作り直しになることがある
- 人手不足
歯科技工士の作業は、一つひとつ手作業で行うことが多く時間がかかるため、長時間労働になってしまうことが要因として挙げられます。
せっかく作った詰め物などが患者さんの歯型に合わず、作り直しになってしまうこともあります。
また、歯科技工士のなり手が少なく人手不足になることで、長時間労働になるといった悪循環も原因の一つです。
一人が抱える仕事量が増えると、キャパオーバーによって精神的に負担がかかってしまうこともあるでしょう。
ときには深夜を越えて仕事をする日があるなど、長時間労働によって体調を崩しかねません。
給料が低い傾向にある
長時間労働の割に給料が低いことも、離職率が高いといわれる原因と考えられています。
歯科技工士の給料が低い理由として、以下のことが挙げられます。
- 歯科技工所間のダンピング競争
- 歯科医院からの値下げ要請
歯科技工士が勤める歯科技工所は、歯科医院から仕事の依頼がないと成り立ちません。
そのため、他の歯科技工所よりも安い金額で仕事を請け負うことがあり、結果的に歯科技工士の低賃金につながっている可能性があります。
スキルを身につけるには努力が必要
大手の歯科技工所では、歯科技工士が担う作業を分担し、研磨担当は研磨のみ、配列担当は配列のみを行うことがあります。
このような場合では、自分が担当している部分の作業しか習得できません。
よって、いつまで経っても、一人で入れ歯を仕上げられないといったことが起こります。
こういった場合は、スキルアップのために研修会への参加など、業務外での努力が必要といえるでしょう。
歯科技工士の労働環境は改善点が多いのが現状
歯科技工士の離職率に関する正確な統計はありません。
しかし、労働時間が長く給料が低いなどの要因から、免許取得後に全ての人が歯科技工士の職に就くわけではなく、なり手の減少により人手不足となっている現状があります。
また、就業歯科技工士の数は、20代~30代前半の若い世代が少なく、定年退職後の65歳以上が最も多いため、今後はより歯科技工士の数が減少することが予想されています。
日本歯科技工士会など関係団体が業務や労働環境の改善に向けて検討をしているため、歯科技工士の労働環境が良くなることを期待しましょう。