
歯科技工士は、歯科医院で扱われる入れ歯やブリッジ、矯正装置などを作製する重要な役割を担っています。
年収は歯科医療従事者のなかでも高めですが、歯科医師や歯科衛生士と比べるとどうなのでしょうか。
また、年齢や地域、性別によって年収はどのように変化するのでしょうか。
さらに気になるのが、独立開業した場合の年収です。
1,000万円以上稼ぐことは可能なのでしょうか。
この記事では、歯科技工士をめざす人や現役の歯科技工士にとって、気になる年収事情について詳しく解説します。
歯科技工士としての将来像を描くうえで参考にしてみてください。

目次
歯科技工士全体の平均年収は464.9万円
歯科技工士は、歯科医師の指示に基づいて、入れ歯やブリッジなどの歯科補綴物を作製する専門職です。
令和5年賃金構造基本統計調査によると、歯科技工士全体の平均年収は464.9万円で、全給与所得者の平均年収460万円とほとんど同じです。
ただし、この数字は歯科技工士全体の年収であり、年齢や住む地域によっても基準は変わってきます。
同じく歯に関連する医療職と比較すると、以下のとおりです。
職種 | 平均年収 |
歯科技工士 | 464.9万円 |
歯科医師 | 924.3万円 |
歯科衛生士 | 404.3万円 |
歯科助手 | 317万円 |
出典:歯科技工士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

歯科技工士の平均年収を月収に換算すると34万円
賃金構造基本統計調査によると歯科技工士の令和4年における平均月収は、男女計で34万円、男性は37万円、女性は28.7万円です。
ただし調査対象は「10人以上の企業」であり、自営業は含まれていません。
平均月収 | |
男女計 | 34万円 |
男性 | 37万円 |
女性 | 28.7万円 |
出典:賃金構造基本統計調査1 一般_職種(小分類)DB | 統計表・グラフ表示
【年齢別】歯科技工士の平均年収
歯科技工士の年収は年齢によって大きく異なります。
職業情報提供サイト(日本版O-NET)のデータによると、年齢ごとの年収分布は以下のとおりです。
引用:歯科技工士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
国税庁の民間給与実態統計調査による、源泉徴収義務のある給与所得者の平均年収との比較も紹介しているので参考にしてください。
初任給
歯科技工士の初任給は、何年制の学校を卒業したかによって異なります。
令和4年度歯科技工士基準賃金表で基準とされている初任給は、以下のとおりです。
初任給 | |
2年制卒 | 18万6,500円 |
3年制卒 | 19万7,100円 |
4年制卒 | 20万7,500円 |
ただし、上記は基本の賃金モデルであり、実際はもう少し少ない場合もあります。
上記を単純に12ヵ月分で換算すると、1年目の収入は220〜250万円となり、そこに賞与や残業代、住宅手当などの福利厚生費が含まれる計算になります。
20代
20代の歯科技工士と給与所得者の平均年収の比較は、以下のとおりです。
歯科技工士の平均年収 | 給与所得者の平均年収 | |
20〜24歳 | 294.69万円 | 267万円 |
25〜29歳 | 349.69万円 | 394万円 |
引用:歯科技工士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
民間給与実態統計調査
30代
30代の歯科技工士と全国の平均年収の比較は、以下のとおりです。
30代では、歯科技工士の年収は給与所得者の平均よりも低い傾向にあります。
歯科技工士の平均年収 | 給与所得者の平均年収 | |
30〜34歳 | 400.9万円 | 431万円 |
35〜39歳 | 428.07万円 | 466万円 |
引用:歯科技工士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
民間給与実態統計調査
40代
40代の歯科技工士と給与所得者の平均年収の比較は、以下のとおりです。
40代では、歯科技工士の年収は給与所得者の平均に近づいてきますが、まだ下回っている状況です。
歯科技工士の平均年収 | 給与所得者の平均年収 | |
40〜44歳 | 482.09万円 | 501万円 |
45〜49歳 | 501.33万円 | 521万円 |
引用:歯科技工士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
民間給与実態統計調査
50代
50代の歯科技工士と給与所得者の平均年収の比較は、以下のとおりです。
50代になると、歯科技工士の年収は給与所得者の平均との差が広がる傾向にあります。
ただし、50代後半では差が縮まっています。
歯科技工士の平均年収 | 給与所得者の平均年収 | |
50〜54歳 | 498.02万円 | 540万円 |
55〜59歳 | 525.41万円 | 545万円 |
引用:歯科技工士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
民間給与実態統計調査
60代以上
60代以上の歯科技工士と給与所得者の平均年収の比較は、以下のとおりです。
60代以降は、歯科技工士の年収が給与所得者の平均を上回る傾向にあります。
特に65〜69歳では300万円近く上回っていますが、70歳以上では差が縮まっています。
歯科技工士の平均年収 | 給与所得者の平均年収 | |
60〜64歳 | 490.26万円 | 445万円 |
65〜69歳 | 655.45万円 | 354万円 |
70歳以上 | 349.08万円 | 293万円 |
引用:歯科技工士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
民間給与実態統計調査
【地域別】歯科技工士の平均年収
歯科技工士の平均年収は、働く地域によっても異なります。
都市部に近いエリアは全国平均よりも高くなりやすい傾向にありますが、データ上では都市部以外のエリアに高低の傾向はあまり見られません。
例えば島根県は年収が極端に高くなっていますが、就業者数も1番少ないため、一部の高収入な歯科技工士の影響を受けているなどの可能性も考えられます。
以下では各都道府県の平均年収と就業者数、平均年齢をまとめました。
リストにない都道府県はデータがありません。
都道府県 | 平均年収(万円) | 就業者数 | 平均年齢(歳) |
全国 | 464.9 | 39,320 | 44.8 |
北海道 | 562.4 | 1,720 | 52.5 |
岩手県 | 341.3 | 470 | 31.1 |
宮城県 | 419 | 820 | 52.2 |
山形県 | 435.4 | 390 | 42.2 |
福島県 | 371.1 | 790 | 34 |
茨城県 | 520.3 | 690 | 40.5 |
栃木県 | 562.3 | 820 | 54.5 |
群馬県 | 633.3 | 840 | 51.5 |
埼玉県 | 378.8 | 2,300 | 57.5 |
千葉県 | 586.6 | 1,400 | 59.8 |
東京都 | 496.3 | 2,730 | 42.7 |
神奈川県 | 539.9 | 2,550 | 40.5 |
新潟県 | 429.3 | 880 | 48.2 |
富山県 | 440.8 | 220 | 44.5 |
石川県 | 262 | 590 | 59.5 |
福井県 | 480.7 | 310 | 43.4 |
長野県 | 448.6 | 860 | 40.5 |
静岡県 | 618.1 | 1,010 | 29.5 |
愛知県 | 417.9 | 2,040 | 49.8 |
三重県 | 468.3 | 590 | 37.5 |
滋賀県 | 375.6 | 440 | 32.8 |
京都府 | 417.2 | 560 | 28.5 |
大阪府 | 408 | 3,080 | 29.5 |
兵庫県 | 520.2 | 1,470 | 57.3 |
和歌山県 | 467.9 | 380 | 36.4 |
島根県 | 732.7 | 120 | 48.5 |
広島県 | 418.9 | 890 | 41.2 |
山口県 | 509.9 | 550 | 45.5 |
徳島県 | 383.5 | 340 | 38.6 |
香川県 | 418.3 | 530 | 36.6 |
愛媛県 | 520.4 | 560 | 33.5 |
高知県 | 418.5 | 180 | 29.5 |
福岡県 | 362.8 | 1,760 | 31.5 |
佐賀県 | 371 | 230 | 42.5 |
熊本県 | 482.4 | 770 | 50 |
鹿児島県 | 407.5 | 750 | 40.2 |
沖縄県 | 217.2 | 300 | 66.5 |
出典:歯科技工士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
【男女別】歯科技工士の平均年収
歯科技工士の男女別平均年収は男性で502.4万円、女性で400.6万円と、性別による年収の差が100万円以上あります。
なお、全給与所得者における男性の平均年収は569万円、女性は316万円です。
日本は女性の低所得や男女間賃金格差が課題となっていますが、女性歯科技工士の収入は全体と比較すると高い傾向にあります。
しかし、男女間の年収差は、平均よりも歯科技工士のほうが大きいのが現状です。
歯科技工士の給料についてよくある疑問
ここまで、歯科技工士の平均年収についてさまざまな角度から見てきました。
最後に、よくある疑問にお答えします。
歯科技工士の平均年収を時給に換算すると?
賃金構造基本統計調査の令和4年の月の平均労働時間から換算した時給の目安は、男女計で1,897円、男性は2,033円、女性は1,642円です。
ただし調査対象は「10人以上の企業」のため、自営業は含まれません。
パート・アルバイトで働きたいときの目安となりますが、データは正社員も含まれるため、実際はこれよりも低い可能性はあります。
平均労働時間/月 | 時給目安 | |
男女計 | 179時間 | 1,897円 |
男性 | 182時間 | 2,033円 |
女性 | 175時間 | 1,642円 |
歯科技工士で年収1,000万円は可能?
「2024歯科技工士実態調査報告書」によると、自営の歯科衛生士422人中10.3%(約43人)、勤務者だと776人中1.4%(約11人)が年収1,000万円以上であると回答しています。
自営業者のほうが年収が高い傾向にあります。
このことから、歯科技工士で年収1,000万円をめざすなら、開業・独立したほうが確率は高いといえるでしょう。
ただし、後述するように独立・開業しても1,000万円に届かない人のほうが多数派であることも覚えておく必要があります。
歯科技工士が独立・開業した場合の年収は?
上記のデータのうち、「自営者」422人のデータをまとめたのが以下の表です。
年収 | 割合 | 人数換算(422人中) |
200万円未満 | 15.6 | 約66人 |
200〜300万円未満 | 14.7 | 約62人 |
300〜400万円未満 | 9.7 | 約41人 |
400〜500万円未満 | 11.4 | 約48人 |
500〜600万円未満 | 9.9 | 約42人 |
600〜700万円未満 | 6.6 | 約28人 |
700〜800万円未満 | 4.3 | 約18人 |
800〜900万円未満 | 4.7 | 約20人 |
900〜1,000万円未満 | 3.3 | 約14人 |
1,000万円以上 | 10.3 | 約44人 |
無回答 | 9.2 | 約39人 |
独立・開業すれば必ず高収入になるわけではなく、むしろ300万円未満の層が3割を占めていることがわかります。
一方で、1,000万円以上の高収入層も1割程度存在しているのが特徴です。
歯科技工士の給料を把握して、しっかりと将来を見据えよう
歯科技工士の平均年収は464.9万円で、給与所得者の平均とほぼ同等でした。
年齢別では60代以降で全国平均を上回る一方、男女別では女性の年収が低い傾向にあります。
地域別では、都市部の年収が高い傾向にありました。
自営の歯科技工士になれば年収1,000万円以上になることもありますが、300万円未満の人も多数派です。
給料面だけでなく、やりがいなども含めて総合的に判断することが大切です。