飲食店やホテル、学校や病院など、調理に関わるさまざまな場で活躍している調理師。
名称独占資格である調理師は、資格を取らない限り名乗ることが許されません。
免許を取得することで飲食業界において厚い信頼を得られ、転職や開業にも有利になります。
調理師免許を取得するには、2年以上の調理業務経験を積んだうえで調理師試験に合格するか、調理師養成学校を卒業したのちに、各都道府県知事に免許を申請する必要があります。
免許申請にいたるまでにはいくつかのルートがあり、働きながら免許取得をめざすことも可能です。
詳しく解説していきます。
目次
働きながら調理師免許を取得する方法4つ
働きながら調理師免許取得をめざす場合、ルートは以下の4つです。
- 日中働き、調理師専門学校の夜間コースに通う
- 日中働いて2年間以上の実務経験を積み、独学で調理師試験を受ける
- 夜間働き、調理師専門学校の日中コースに通う
- 夜間働いて2年間以上の実務経験を積み、独学で調理師試験を受ける
大きく分けて、調理師養成学校に通う方法と、実務経験を積んで受験資格を獲得したのちに調理師試験を受験する方法があります。
先に挙げた1と3は調理師養成学校に通う方法で、2と4は調理師試験を受験する方法です。
次項で詳しくみていきます。
働きながらめざすことにこだわらない調理師免許の取得方法に関しては、以下リンクをご参照ください。
1. 日中は働きながら専門学校の夜間コースを卒業する
昼間に仕事をしている場合には、調理師専門学校の夜間コースを利用する選択肢があります。
授業開始が18時以降で、約1年半、夜間のみの通学で卒業できます。
短期間で集中的に知識や技術を習得でき、調理師試験を受けなくても卒業と同時に確実に調理師免許を得られるのが大きなメリットです。
また、夜間コースには多様な経歴をもつ人が集まる傾向があるため、年齢や経歴を気にせず学校生活に溶け込みやすいのも特徴です。
しかし、夜間コースを開講している調理師専門学校は全国にそれほど多くなく、県によっては開講がない場合もあります。
自分の居住する地域から通える夜間コースがあるか、例年の募集人員がどの程度なのかしっかり情報収集をしましょう。
2. 日中は働きながら実務経験を積み独学で調理師試験を受ける
養成校に通わない場合は、調理に関わる実務経験を2年以上積んだのち、独学で調理師試験に臨むことになります。
調理師試験に合格すれば調理師免許を取得できます。
調理師試験を受けるためには、飲食店や給食センターなど調理に関わる職場で、週に4回以上かつ1日6時間以上の勤務を2年以上継続することが必要です。
職場から勤務実績の証明書を発行してもらうことで、調理師試験の受験資格を得られます。
調理師試験は、多くの都道府県で1年に1回実施されています。
実技試験はなく、すべてがマークシート方式の選択問題で、合格率は例年6割程度です。
市販されているテキストや通信教育を利用し、独学で合格をめざすことは十分可能ですが、働きながら勉強時間を確保できるかが課題になります。
3. 夜間は働きながら専門学校の日中のコースを卒業する
日中は専門学校に通いながら、夜間にアルバイトをして学費や生活費を稼ぐ方法もあります。
調理師専門学校には、1~3年と修業年数の異なるコースが設けられている場合があります。
修業年数の短いコースを選べば短期間で集中的に学べるため、効率的に調理師の資格を取得することが可能です。
学業とアルバイトの両立はハードですが、学費がおさえられるという大きなメリットもあります。
開講の少ない夜間コースとは異なり、日中に通うコースは地方の調理師学校でも設置が多く、自分の居住する地域や、学校の特色などによる選択肢の幅も広くなります。
アルバイトは、学業との兼ね合いをみて無理せず継続できるものにしておきましょう。
4.夜間は働きながら実務経験を積み独学で調理師試験を受ける
現在は飲食店以外の仕事をしていて、調理師になるという目標を持っている方もいるかもしれません。
そうした方が専門学校夜間コースに通う選択肢をとらない場合、本業がない夜間や休日に飲食店などでアルバイトをして、調理に関わる実務経験を積む方法があります。
そして、独学または通信教育で勉強して調理師試験を受け、調理師免許取得をめざすことになります。
これは本業の収入を維持しつつ、専門学校に通うより費用をおさえられる方法です。
しかし、本業以外で調理業務に関わる時間を週に4回以上かつ1日6時間以上確保し、それを2年以上継続しなければならず、体力的にも無理が生じることを考慮する必要があります。
加えて試験勉強も進めていかなくてはならないため、かなりハードな方法です。
社会人が調理師免許を働きながら取得する場合のポイント
前項で、働きながら調理師免許を取得する4つのルートをご紹介しました。
各ルートの大まかなイメージはつかめても、実務経験や学費、独学での勉強法などに関して、不安を抱く方も多いと思います。
調理師試験の出題内容は、調理師としての仕事に必要となる、実践に即した問題が多いため、働きながら独学で知識を深めて合格をめざすことは十分可能です。
また、多少費用はかかりますが専門学校よりは安く済み、独学より効率的に勉強を進めることのできる通信教育を利用する手もあります。
その他、社会人が働きながら調理師免許を取得する際のポイントを紹介していきます。
今までの経験が実務経験にならないか確認する
調理師試験の受験資格として、週に4回以上かつ1日6時間以上、2年以上勤務した実務経験を証明する必要があります。
調理に関わる職場であれば、雇用形態の縛りはなく、正規職員はもちろんパート・アルバイトでも大丈夫です。
雇用されている法人または施設の代表者に調理業務従事証明書を記入してもらうことで、実務経験が証明されます。
また、調理師試験を受験する時点で調理業務に従事していなくても、過去に飲食店や給食センターなどで働いた経験があり、期間の条件を満たしていれば、実務経験として申請ができます。
調理師を志す以前の経験でも、実務経験として証明できる可能性があるため、確認してみましょう。
実務経験がない場合は専門学校の夜間コースがおすすめ
調理に関わる実務経験がない場合や、これまでの実務経験を合算しても期間が足りない場合には、パート・アルバイトなどの雇用形態で空いた時間に実務経験を積み、条件を満たして調理師試験に臨むことになります。
実務経験がない場合には専門学校の夜間コースを利用するのもおすすめです。
夜間コースは授業開始時間が18時以降と遅いため、昼間働きながらでも通いやすく、実務経験や調理師試験を受験する必要なしに、卒業と同時に調理師資格が取得できます。
学費が不安な場合は教育訓練給付金や奨学金を調べる
調理師専門学校の学費は、日中・夜間コースともに年間100万円を超える場合がほとんどです。
2年制のコースでは、300万円を超える学費が必要となる場合も少なくありません。
経済的に厳しい場合には、学費の補助として利用できる制度がないか調べてみましょう。
調理師資格の取得を目標とする講座は、教育訓練給付制度の対象となっています。
教育訓練給付制度とは、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです。
調理師は専門実践教育訓練として受講費用の最大70%、年間上限56万円の支給が受けられます。
また、学校によって社会人を対象とする給付金や奨学金を設けているところもあります。
教育訓練給付金も奨学金もそれぞれ給付条件が定められているため、自分が対象となるか調べたうえで申請しましょう。
働きながらでも調理師免許は取得できる!自分に合ったルートでめざそう
働きながらでも、調理師免許を取得することは可能です。
学校に通ったり、実務経験を積みながら試験勉強をしたりと、乗り越える壁はいくつかありますが、調理師免許を取得できれば飲食業界での仕事の幅が大きく広がります。
自分に合ったルートを選択できるよう、しっかりと情報収集し、調理師免許の取得をめざしましょう。