保母さんから保育士に名称が変わった現在でも、「保育士は女性の仕事」と思っている人は少なくないかもしれません。
実際、現在でも保育士のほとんどが女性です。
では、なぜ男性の保育士が少ないのでしょうか?
この記事では、保育士業界の現状から男性の保育士がまだまだ少ない理由を明らかにします。
また、男性が保育士になるメリットや将来性、注意点も解説しているので、参考にしてください。
目次
保育士に男性は少ない
結論からいえば、男性の保育士は少ないのが実情です。
厚生労働省が発表したデータによると、令和2年の時点で男性保育士は全体の5%程度にとどまります。
【男女別の保育士数】
男性 | 女性 | 合計 | |
令和2年 | 82,330 | 1,583,219 | 1,665,549 |
また、厚生労働省の別の調査で、男性保育士の離職率は女性と比較して高いことがわかっています。
保育士の平均勤続年数は女性が7.9年なのに対して、男性は6.2年です。
平均年齢も女性が37歳、男性が31.9歳となっているので、男性のほうが若いうちに離職している事実がうかがえます。
保育士に男性が少ない理由は?
近年では男性の保育士もそれほど珍しい存在ではなくなってきています。
しかし、女性保育士と比較するとまだまだ少ないのが現状です。
ここでは、男性保育士が少ない理由を解説します。
女性の仕事であるというイメージが強い
保育士は過去に保母さんと呼ばれていたこともあり、まだまだ女性がやる仕事と思われることが多い職業です。
女性が多い職場に抵抗を感じる人も一定数いると考えられます。
女性ばかりの職場に一人で入っていっても居心地が悪いのではないかと、一歩踏み出せない男性も少なくないでしょう。
以前は看護婦と呼ばれ、保育士と同様に女性の仕事のイメージが強かった看護師と比べてみると、状況がよりはっきりします。
看護師の場合は、男性の割合が低いとはいえ保育士ほどではありません。
また、看護師を女性の仕事だと考える人も減っていると思われます。
このことから、男性保育士が少ない理由には、仕事に対する性別のイメージ以外の要因もあると考えるのが適当でしょう。
給料に対する不安がある
男性保育士が少ない理由として、給料に対する不安があげられます。
保育士の年収は一般的に低いといわれます。
実際の男性保育士の平均給与は32.4万円、年収にして389.2万円です。
金融庁が発表している「令和3年民間給与実態統計調査」によると、日本の男性の平均年収は545万円です。
両者を比較すると、男性保育士の年収は平均より150万円以上低いことがわかります。
このような給与水準では、保育士になりたいと思う男性が少なくても仕方がないでしょう。
また、将来の結婚や子育てにかかる経済的な負担に不安を覚え、より収入の多い仕事に転職してしまう男性保育士がかなりの数に上っているであろうことは、先述の平均勤続年数データからも想像できます。
保育士全体の給料や年収に関しては、別の記事でも解説しているので参考にしてください。
男性保育士の将来性は?
現在、男性保育士の年収は男性全体の平均年収よりも低いことは事実ですが、将来性も低いわけではありません。
保育士の年収は平成25年時点で310万円だったのが、年々増加し、令和元年には364万円に達しています。
保育士は社会インフラ上必要不可欠な存在です。
今後は社会での重要性に見合った、他の職業と比べても遜色のない年収を稼げるようになる可能性は十分あります。
男性が保育士になるメリット
まだまだ女性の活躍が多い保育士ですが、男性だからこそ活躍できる場面も多いもの。
周りから頼りにされるのはやりがいにつながり、それは保育士として働くうえで大きなメリットにもなります。
男性保育士が活躍できる場面には、例えば以下があります。
男性ならではの保育ができる
男性が保育士になるメリットの一つが、男性ならではの保育ができることです。
例えば、以下のような場面では、男性保育士だからこそ活躍できます。
- 体力を使った遊びができる
- 男児のトイレトレーニングができる
- 大人の男性と触れ合う機会を提供できる
男性は一般的に女性よりも力が強く、鬼ごっこやドッジボールは女性保育士よりもスリリングなものになり、運動好き男児の良い遊び相手になるでしょう。
また、男児のトイレトレーニングは異性の女性保育士がやるよりも、男性保育士がやったほうがスムーズです。
特に遠足などで保育園外部の施設を利用する際は、女性保育士ではトイレの援助ができないケースもあります。
男性保育士がいることで、公園や水族館などの場所でもトイレの支援が行いやすくなります。
さらに、子どもにとってはご家族以外の大人の男性と触れ合う良い機会にもなるでしょう。
小学校では男性教諭もいるため、その事前練習として早めに大人の男性に慣れることができます。
力仕事や防犯の面で頼られる
保育園は女性ばかりの職場であるため、力仕事が必要な際に頼りにされます。
特に、運動会や行事の準備では入場門を立てるなど力仕事が必要なので、活躍できる場も大いにあるでしょう。
また、防犯の面においても男性保育士がいるだけで、大きな効果が期待できます。
男性保育士は、園児や職員の安心・安全を守れる存在として重宝されるでしょう。
男性保護者からの相談に乗れる
男性が保育士になるメリットとして、同性の親からの相談に乗れることもあげられます。
現在は男性も育児に参加するのが当たり前の時代です。
育児をしていくなかで、ときには父親として異性の保育士には相談しにくいことも出てくるでしょう。
そのような場合に、男性保育士は心強い存在です。
特にシングルファーザーの人にとっては、男性がいると相談しやすく感謝されるでしょう。
男性が保育士になる際の注意点
男性が保育士になる際には、男性ならではの注意点もあります。
ここでは、男性が保育士になる際の注意点を紹介します。
女児への対応に配慮が必要
男性が保育士になる際は、女児への対応に配慮が必要です。
女児の保護者のなかには、わが子を守りたいとの親心から男性保育士を警戒する人もいます。
男性保育士の数は増加傾向にあるとはいえ、まだまだ保育士は女性の仕事だと思っている人が多いことに変わりはありません。
男性保育士を偏見の目で見る人もいるという現実は、心に刻んでおかねばならないでしょう。
保護者や女児と良好な関係を築くためには、誠実な対応を心がけ、丁寧にコミュニケーションを深めていく必要があります。
男性保育士の受け入れ態勢が整っていない場合も
保育園によっては男性保育士を受け入れる態勢が整っていないこともあります。
例えば、男性用の更衣室やトイレがないケースも珍しくありません。
ただ、男性保育士は今後も徐々に増えていくことが予想されます。
男性保育士の数が増えれば、施設の設備も整えられていくでしょう。
保育士に男性の需要はある!夢を諦めずに挑戦しよう
男性保育士は男性ならではの保育ができたり、防犯上も頼もしかったりするため一定の需要があります。
現行の給与水準に不安はあるものの、保育士全体の給料増加に向けた取り組みも積極的に行われています。
今後は、より男性にとっても働きやすい環境が整えられていくと期待して良いでしょう。
男性でも「保育士になりたい!」と思った場合は、ぜひ諦めないで挑戦してみてください。