
保育士は、給料が安いといわれることもある職業です。
東京都福祉保健局の調査では、保育士を辞めた人は「職場の人間関係」に次いで「給料が安い」ことを離職理由に挙げています。
では、保育士の給料はいくらぐらいなのでしょうか?
この記事では保育士の給料がどのくらいか、地域別の給料や手取り額を紹介します。
今後、保育士の給料が上がる可能性についても解説しているため、参考にしてみてください。
目次
保育士の給料の全国平均はどれぐらい?
保育士の給料は地域や役職、施設形態によって異なります。
まずは、全国平均を軸に保育士の給料の実態を見てみましょう。
保育士の給料は月20万円程度が平均
厚生労働省発表の令和4年賃金構造基本統計調査によると、保育士の年間給与の全国平均は以下のとおりです。
全国平均 (男女計) |
①きまって支給する現金給与額(月給) | ②年間賞与・その他特別給与額 | 年収 (①×12+②) |
---|---|---|---|
266,800円 | 712,100円 | 3,913,700円 |
全国で働いている保育士の平均月収は約26.7万円で、賞与を含めた平均年収は約391万円となっています。
令和3年度賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均月収は25.7万円で、賞与を含めた平均年収は382万円です。
1年間で平均年収は増えたものの、社会保険や税金が天引きされることによって、手取り額は20万前後になるでしょう。
きまって支給する現金給与額(月給)は、基本給と各種手当の給与総額であり、社会保険料などが天引きされる前の金額です。
なお、保育士の退職金の相場や受給条件などについて詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。
保育士賃金の推移
厚生労働省が発表している過去のデータを見ると、2011年の保育士の平均年収は324万円でした。
それに対して2021年には382万円となっており、過去10年間で約58万円増加しています。
これは保育士不足による待機児童の増加などから、政府による保育士の処遇改善が推し進められていることが給料増加につながっているためでしょう。
しかし、国税庁が発表している令和3年分民間給与実態統計調査によると日本人の平均年収は443万円ですので、保育士の平均年収は一般的水準より低い傾向です。
ただし、日本人女性の平均年収は302万円であり、保育士の現場は女性が多く活躍することを考慮すると、保育士の給料は女性の平均水準より高いといえます。
【ケース別】保育士の給料
ここからは、以下のケース別に保育士の給料を見ていきましょう。
- 年代による違い
- 地域による違い
- 勤務年数による違い
- 施設形態による違い
年代による違い
まずは、年代による違いを紹介します。
下記の表は厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査より算出した年代別の平均給与です。
年代別 保育士の平均給与(男女計)
年代 | きまって支給する現金給与額(月給) | 年間賞与・その他特別給与額 | 年収 |
---|---|---|---|
20代 | 239,100円 | 579,350円 | 3,448,550円 |
30代 | 264,800円 | 715,300円 | 3,892,900円 |
40代 | 289,700円 | 870,650円 | 4,347,050円 |
50代 | 288,600円 | 755,100円 | 4,218,300円 |
60代 | 271,400円 | 665,050円 | 3,921,850円 |
保育士の平均給与は40代が一番高く、約435万円となっています。
60代以降の年収が下がるのは、定年退職で現役を退いて再雇用やパート・アルバイトで働く人が増えるためでしょう。
また、保育士の全国平均年齢は38.8歳となっています。
地域による違い
次に、都道府県別の保育士の平均年収を紹介します。
下記の表は厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査を参考にした、都道府県別の保育士の平均年収ランキングです。
【都道府県別 保育士の平均年収】
順位 | 都道府県 | 平均年収 | 有効求人倍率 |
---|---|---|---|
1位 | 東京都 | 450.8万円 | 3.66 |
2位 | 京都府 | 445万円 | 2.62 |
3位 | 神奈川県 | 439万円 | 2.17 |
4位 | 石川県 | 431.3万円 | 2.36 |
5位 | 青森県 | 427万円 | 1.57 |
順位 | 都道府県 | 平均年収 | 有効求人倍率 |
---|---|---|---|
43位 | 長崎県 | 320.8万円 | 2.36 |
44位 | 秋田県 | 315.1万円 | 1.29 |
45位 | 長野県 | 314.5万円 | 1.65 |
46位 | 沖縄県 | 308.7万円 | 3.50 |
47位 | 山形県 | 284.2万円 | 1.77 |
保育士の給料は1位の東京都が450.8万円だったのに対し、最下位の山形県は284.2万円と166.6万円の差があり、地域差が大きい傾向です。
東京都や京都府、神奈川県といった大都市の平均年収が高い傾向ですが、石川県や青森県なども高順位に入っています。
有効求人倍率の高い地域が高順位に多く入っていますが、青森県など低いところも入っています。
また、有効求人倍率が3.50倍と高い沖縄が46位に入っていることから、有効求人倍率と給与に関係があるとはいえないでしょう。
保育士確保のために独自の補助金を出している地域がランキング上位に入っている可能性も考えられます。
勤務年数による違い
専門職である保育士は、経験年数によって給料が異なります。
下記の表は厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査を参考にした、勤務年数による平均年収です。
勤続年数 保育士の平均給与(男女計)
年数 | きまって支給する現金給与額(月給) | 年間賞与・その他特別給与額 | 年収 |
---|---|---|---|
0年 | 219,400円 | 46,800円 | 2,679,600円 |
1~4年 | 231,600円 | 567,300円 | 3,346,500円 |
5~9年 | 248,800円 | 655,400円 | 3,641,000円 |
10~14年 | 259,900円 | 730,600円 | 3,849,400円 |
15年以上 | 299,800円 | 986,900円 | 4,584,500円 |
保育士の平均給与と賞与は、勤務年数の増加とともに高くなることがわかりました。
1年目から14年目までは300万円台であり、15年以上で急速に高くなります。
これは役職に就くかどうかも関係している可能性があります。
施設形態による違い
幼稚園やこども園など、保育士が働く他の職場との給料も比較してみましょう。
下記の表は、令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果より、各施設形態の役職に就かない常勤保育士の平均給料をまとめました。
施設別 常勤一般保育士の平均年収
施設形態 | 分類 | 平均年収 |
---|---|---|
保育所 (保育士) |
公立 | 364万円 |
私立 | 362万円 | |
幼稚園 (教諭) |
公立 | 454万円 |
私立 | 345万円 | |
認定こども園 (保育教諭) |
公立 | 345万円 |
私立 | 336万円 | |
私立小規模保育事業 (保育士) |
A型 | 323万円 |
B型 | 324万円 | |
私立小規模保育事業 (家庭的保育者) |
C型 | 350万円 |
※令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果<速報値>【修正版】
公立幼稚園以外の施設は、年収が300万円台と施設形態による給料の差は大きくありません。
ただし、公立と私立では給料の昇給システムが異なります。
認可保育園と認可外の保育施設でも、給与体系は違うでしょう。
また仕事内容も異なるため、上記の平均給料を目安としながら、将来の展望や仕事内容も考慮して就職先を検討したほうが良いでしょう。
2022年から保育士の給料が引き上げられている
各地で待機児童が問題になっているなか、政府は保育士確保のため、新規資格取得者への学資金貸付や、離職後保育士として働いていない潜在保育士の再就職支援などを実施しています。
なかでも注目したいのが、2022年2月より実施されている保育の現場で働いている人の収入引き上げ政策です。
この処遇改善策では、保育士の収入を3%程度(月額9,000円)引き上げるための費用が国費より補助されます。
保育所や幼稚園、認定こども園などで働く職員が対象で、補助額の全額を賃金改善に充てることが補助条件となっており、さらなる給料アップが期待できる可能性があります。
保育士の給料相場を理解したうえで働こう
給料が安いと感じるか、高いと感じるかは人それぞれです。
給与額だけでなく、仕事内容に対して納得できる報酬であるかどうかは、職場環境や個人の価値観により異なるでしょう。
ただし、給料の相場を知っておくことで、働き始めてから給料面での不満を感じにくいかもしれません。
この記事で紹介した保育士の平均給料を目安に、自分が納得して働ける給料なのかを考えてみましょう。
給料面で不満がある人は、転職という選択肢もあります。
かる・けるでは保育士の求人を紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。