保育士は、保育に関する専門的な知識を持ち、さまざまな場所で活躍しています。
保育士になるためには、保育士試験に合格して国家資格 を取得する必要があります。
これから保育士試験を受ける方にとっては、合格率は何割なのか、何点で合格できるのか、試験の難易度についてなどは気になるポイントでしょう。
この記事では保育士試験の合格率や国家資格取得の難易度について紹介します。
目次
平成21年度から令和3年度における合格率の推移
平成21年度から令和3年度における受験申請者数・合格者数・合格率の推移は次のとおりです。
実施年度 | 受験申請者数 | 合格者数 | 合格率 |
平成21年度 | 41,163人 | 5,204人 | 12.60% |
平成22年度 | 46,820人 | 5,324人 | 11.40% |
平成23年度 | 49,307人 | 6,957人 | 14.10% |
平成24年度 | 52,257人 | 9,726人 | 18.60% |
平成25年度 | 51,055人 | 8,905人 | 17.40% |
平成26年度 | 51,257人 | 9,894人 | 19.30% |
平成27年度 | 57,301人 | 12,962人 | 22.60% |
平成28年度 | 70,710人 | 18,229人 | 25.80% |
平成29年度 | 62,555人 | 13,511人 | 21.60% |
平成30年度 | 68,388人 | 13,500人 | 19.70% |
令和元年度 | 77,076人 | 18,330人 | 23.90% |
令和2年度(※) | 44,914人 | 10,890人 | 24.25% |
令和3年度 | 83,175人 | 16,600人 | 19.96% |
参考:保育士の現状と主な取組・保育士資格関係資料・保育士試験の実施状況(令和3年度)
※令和2年度の1回目試験は新型コロナウイルス感染症の影響により筆記試験が中止となり、実技試験のみの実施
厚生労働省が公開している資料「保育士の現状と主な取組」によると、平成21年度の合格率は12.60%です。
そこから一番高い合格率を記録した平成28年度の25.8%まで、多少の上下はあるものの少しずつ合格率がアップしています。
受験者数の推移を見てみると、平成21年度から令和3年度にかけて約2倍となっており、合格率と受験者数の両方がアップしていることがわかります。
厚生労働省が公開している2022年6月時点の最新の合格率は令和3年のもので19.96%です。
例年と比べると若干低めですが、そこまで大きな差はありません。
このことから、例年20%前後 が筆記試験の合格率の目安になります。
10名の受験者に対して合格者が2名 のみと考えると、保育士試験は難易度が高い といえるでしょう。
保育士試験の前期・後期試験の合格率
平成27年度より、保育士試験は年に2回実施されるようになりました。
そのため、前期試験と後期試験 のそれぞれで合格率が発表されます。
前期と後期、それぞれの合格率をみてみましょう。
前期・後期の合格率
平成27年度から令和3年度までの前期・後期の合格率は次のとおりです。
前期試験 | 後期試験 | |
平成27年度 | 受験申請者数:46,487人 合格者数:10,578 人 合格率:22.75% |
受験申請者数:10,814人 合格者数:2,384人 合格率:22.05% |
平成28年度 | 受験申請者数:35,455人 合格者数:7,817人 合格率:22.05% |
受験申請者数:35,255人 合格者数:10,412人 合格率:29.53% |
平成29年度 | 受験申請者数:29,556人 合格者数:5,594人 合格率:18.93% |
受験申請者数:31,560人 合格者数:7,639人 合格率:24.20% |
平成30年度 | 受験申請者数:33,262人 合格者数:8,394人 合格率:25.24% |
受験申請者数:32,055人 合格者数:4,601人 合格率:14.35% |
令和元年度 | 受験申請者数:36,640人 合格者数:5,169人 合格率:14.11% |
受験申請者数:36,526人 合格者数:12,009人 合格率:32.88% |
令和2年度 (※) |
受験申請者数:1,423人 合格者数:1,072人 合格率:75.33% |
受験申請者数:39,559人 合格者数:9,111人 合格率:23.03% |
令和3年度 | 受験申請者数:38,925人 合格者数:7,276人 合格率:18.69% |
受験申請者数:39,309人 合格者数:8,373人 合格率:21.30% |
参考:保育士の現状と主な取組・保育士資格関係資料・保育士試験の実施状況(令和3年度)
※令和2年度の1回目試験は新型コロナウイルス感染症の影響により筆記試験が中止となり、実技試験のみの実施
前期試験と後期試験の合格率に差が生まれる理由
上述したとおり、前期試験と後期試験の合格率には毎年差がありますが、前期が高い年度もあれば後期が高い年度もあり、どちらかが受かりやすいとは一概にいえません。
しかし、前期の合格率が低かった場合、後期の合格率は少し高くなる傾向がみられました。
たとえば、平成29年度は前期の合格率が18.9%であるのに対して後期は24.2%、令和元年度は前期14.1%に対して後期32.9%になっており、合格率の上昇がみられました。
まだデータも少なく明確な理由はわかりませんが、前期で不合格になった受験者が、対策を練って後期試験に挑み合格することで、合格率を押し上げているなどの状況が考えられます。
保育士試験は難しい?合格率が低い理由とは
なぜ保育士試験の合格率は約20% と低い数値になっているのでしょうか。
推測される4つの原因を紹介します。
科目数が多いため
保育士の国家試験において合格者が少ない理由の一つには、筆記試験の科目数と試験範囲が関係していると考えられます。
- 保育原理
- 教育原理および社会的養護
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
筆記試験は9科目 あるだけでなく、試験範囲も広い ため難しいといわれています。
一度合格点を満たした筆記科目は以後3年間 の試験において再受験が免除されるため、筆記試験のすべての科目で合格するために何回受験するかは人によって異なります。
最終学歴で条件が変わるため
保育士試験の受験資格は、学歴によって条件が異なります。
日本の学校教育法に基づいている4年制大学や短期大学を卒業した場合、保育に関する大学や学部、学科を卒業していなくても受験できます 。
専門学校卒は、学校教育法に基づいた専修学校であり、かつ卒業した課程が修業年限が2年 以上の専門課程であれば受験が可能 です。
高卒は3つ の条件のうちいずれかを満たしている場合、受験できます。
- 1991年3月31日以前に、高校を卒業していること
- 1996年3月31日以前に、高校の保育科を卒業していること
- 2年以上かつ2,880時間以上、児童福祉施設における実務経験があること
中卒は、児童福祉施設で5年以上、かつ7,200時間 以上の実務経験があれば受験できます。
このように、保育に関する専門的な教育を受けていない人でも受験資格があるため、筆記試験や実技試験で合格する基準に達している人が少ない傾向にあることが考えられます。
筆記と実技で問題が大きく異なるため
筆記試験の全科目に合格すると、実技試験を受験できます。
実技試験の内容は、音楽、造形、言語の3分野から2分野 を選択して受験します。
筆記試験とは異なり自分の得意な内容を選択できるため比較的簡単と思われるかもしれませんが、表現力の豊かさや子どもに伝わりやすい工夫がされているかなどの点がみられるた め、きちんとした準備が必要です。
筆記試験とは内容が異なるため、筆記試験の勉強と並行して実技試験の対策もしっかり行なっておくことが大切です。
全科目で6割以上の点数が必要であるため
筆記試験の合格には、9科目すべてで6割以上 得点することが必要です。
いずれか1科目でも6割を下回ると不合格 となり、また次回以降の試験で合格をめざすことになります。
保育士試験の合格率は高くはないが努力次第で合格できる
保育士試験は、筆記試験の9科目 が難しいといわれますが、実技もしっかりと練習しておくことが大切です。
特に独学で勉強する場合は、得意不得意を理解して計画的に勉強することが重要でしょう。
実技試験は実際の試験を想定し、繰り返し練習することで体に覚えさせることができます。
筆記、実技の両方ともしっかりと対策をして、一発合格できるように頑張りましょう。
保育士資格の取得方法について詳しく知りたい方は、以下の記事を読んでみてください。