「保育士の離職率はどのくらい?」
「保育士は辞める人が多いんでしょ?」
現役の保育士の方や、これから保育士をめざす方のなかには、こうした疑問を持つ人も少なくないでしょう。
本記事では、厚生労働省から発表されているデータをもとに保育士の離職率を紹介します。
一般労働者全体と医療福祉業界の離職率もあわせて確認し、保育士の離職率と比較してみましょう。
目次
保育士の離職率
保育士の離職率は、実はそれほど高くはありません。
令和2年に厚生労働省から発表された「保育士の現状と主な取組」には、保育士の離職率が9.3%と記されています。
同じく厚生労働省から発表されている、令和3年の雇用動向調査結果の概況では、一般労働者全体の離職率は11.1%、保育士が含まれる医療福祉業界の離職率は13.5%でした。
上記より、保育士単独の離職率は、社会全体、業界全体と比較しても高くないのがわかります。
運営元別の離職率
保育士の離職率をさらに掘り下げて見ていきましょう。
先ほど紹介した「保育士の現状と主な取組」には、運営元別の離職率についても、以下のように記されています。
- 公営:5.9%
- 私営:10.7%
公営と私営で離職率に2倍近く差があることがわかります。
公営の離職率が極めて低く、理由としては以下のものが考えられます。
- 公務員として働ける
- 給与や退職金が良い
- 福利厚生が充実している
- 勤務時間が決まっており残業が少ない
私立よりも待遇がよく残業が少ない点から離職率が低くなっています。
他職種との離職率の比較
保育士の離職率が医療福祉業界でどの程度なのかを見てみましょう。
下図は、同じ業界の職業を4種類ピックアップして比較したものです。
職種 | 離職率 |
保育士 | 9.3% |
看護師 | 10.6% |
薬剤師 | 9% |
理学療法士 | 医療現場:10.2% 介護現場:18.8% |
介護職員 | 14.9% |
医療福祉業界では、介護に従事している理学療法士や介護職員の離職率が高く、病院やクリニックで働く看護師や薬剤師の離職率は保育士と変わりません。
医療福祉業界の各職種と比較しても、保育士の離職率は低いのがわかります。
保育士が離職する理由
保育士の離職率は低い水準ですが、離職する保育士がいないわけではありません。
ここでは、保育士が離職する理由として、以下の4項目を紹介します。
- 職場の人間関係
- 給料が安い
- 仕事量が多い
- 労働時間が長い
私立の園で働いている保育士の場合、運営元が経営している園が1つだと異動はありません。
そのため、同じ園でずっと働かなければならないので、関係が悪くなった方とずっと働き続ける必要があります。
保育士は狭い園内で働いているので、顔を合わせる機会も多く、苦手な相手とも仕事上関わる機会が多いです。
職場の人間関係が悪くなると、離職する方は多いでしょう。
令和3年度の賃金構造基本統計調査によると保育士の年収は約382万円で給与所得者全体の平均額443万円よりも低いです。
保育士の年収は毎年上がっていますが、それでもまだ少ないといえます。
仕事量は多く、拘束時間も長いことも、離職の原因になります。
保育士は子どもたちの保育以外にも、季節行事を考えたり制作物の準備をしたり、記録などの事務作業を行わなければいけないため、仕事量が多くなりがちです。
就業時間に関しては2021年に全国保育協議会会員の実態調査が行われ、正規職員として働く保育士の6割以上が、週40時間~50時間未満の労働をしていることがわかりました。
このように、閉鎖空間で低賃金、仕事量の多さなどが、保育士が離職する原因として挙げられます。
保育士の離職率は他の職種の平均よりも低い
保育士の離職率は9.3%で、一般労働者全体と医療福祉業界の平均値よりも低い水準です。
さらに、同業界の他職種と比較しても理学療法士や介護職員、看護師よりも低いため、業界内でも低い離職率といえます。