
掃除は、ヘルパーが訪問介護においてできる利用者への家事支援の一つです。
しかし、厚生労働省からの通知(老計10号)やケアマネジャーが作成するケアプランに記載がある範囲しか掃除できません。
それ以外の範囲は介護保険サービス外となってしまいます。
この記事では、ヘルパーが介護保険サービス内で可能な掃除の範囲や場所、また利用者にサービス外の範囲を頼まれたときはどうするかなどを解説していきます。
目次
ヘルパー(訪問介護員)の仕事で最も依頼が多いのが掃除
厚生労働省の資料によると、令和2年9月における、利用者1人あたりの訪問介護の利用回数は平均20.1回でした。
さらに厚生労働省の「平成27年介護サービス施設・事業所調査」によると、生活援助の提供内容のなかで、実施割合が一番高いのが掃除でした。
生活援助の定義とは、身体介護以外の訪問介護のことで、掃除、洗濯、調理、ゴミ出しなどを指します。
しかし、そのなかでも
- 直接本人の援助に該当しない行為
- 日常生活の援助に該当しない行為
に関しては、生活援助のなかに含まれないと明記されています。
掃除の範囲を決めるうえで、これらの留意事項がとても重要です。
ヘルパーが生活援助の範囲でできる掃除内容
ヘルパーの生活援助には掃除を含むと上記で説明しましたが、利用者宅のあらゆる場所を掃除できるわけではありません。
ここでは、ヘルパーが生活援助の範囲で可能な掃除場所や内容と、何をもとに掃除の範囲が決まるのかを説明していきます。
ヘルパーが可能な掃除の範囲は?
ヘルパーができる掃除は、利用者の生活で最低限必要な範囲のみとされています。
以下は掃除が可能な場所・内容の例です。
- 利用者が使用している部屋
- トイレ
- 浴室
- 洗面所
- 台所
- 卓上
- ゴミ出し
基本的には、ヘルパーができる掃除範囲は利用者の生活スペースに限られており、部屋の掃除方法も利用者のルールに合わせて行う必要があります。
例えば掃除機一つをとっても、ただ掃除機をかけるのではなく、この範囲は掃除機ではなくモップを使う、私物を動かす必要があった場合は利用者に一声かけるなど、配慮をしなければなりません。
もし、掃除をしても良いのかどうか迷った場合は、サービス管理責任者や上司に確認しましょう。
掃除の範囲はケアプランをもとに決まる
ヘルパーができる掃除の範囲は、ケアプランをもとに決まります。
ケアプランとは、ケアマネジャーが作成する、介護保険サービスを受けるために必要な計画書です。
原則として、ヘルパーはケアプラン外のサービスを提供できません。
また、厚生労働省より通知され、ケアプランを作成する際の参考となっている「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」は、2018年に老計10号の改正があり、「利用者と一緒に手助けや声かけをしつつ見守りをしながら行う掃除」が新たに身体介護に加わりました。
そのため「掃除」という項目も、条件次第ではすべて一律に生活援助ではなく、身体介護に区分される可能性があります。
ヘルパーは大掃除や庭の掃除はできない?
これまでは、ヘルパーが対応可能な掃除の範囲を紹介してきましたが、ここからは反対に、ヘルパーが生活援助の範囲内ではしてはいけない掃除場所や内容を解説していきます。
介護保険サービス外とされる掃除の具体例は、以下のとおりです。
- 大掃除
- 家族の共有スペース(例えば同居のご家族が家事を行うことができる場合)
- 窓拭き
- 庭の掃除や手入れ
- 家具の移動や修理
理由としては、「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」内にある、以下のような記述が挙げられます。
- 本人やご家族が家事を行うことが困難な場合に家事援助のサービスが受けられる
- 直接本人の日常生活の援助にならないと判断される行為は生活援助に含まれない
生活援助は、あくまで利用者の生活に必要な範囲の掃除を求められています。
そのため、窓拭きや大掃除などは認められません。
ヘルパーが範囲外の掃除を頼まれたときの対応
ヘルパーが利用者から直接対応できない範囲の掃除を頼まれた場合は、後々クレームやトラブルに発展させないためにも対応方法を知っておく必要があります。
- サービスの適用範囲について、利用者に納得のいく説明をする
ヘルパーがケアプランに基づいて仕事をしていることを、利用者が理解することが大切です。 - 自身の事業所やケアマネジャーに相談をする
ヘルパーの判断で、対応の可否を利用者に伝えることは避けたほうが良いでしょう。
なぜなら、ケアプランの見直しや変更が必要となる可能性があるからです。 - 保険外サービスを提案する
ケアプランに記載がなく、また介護保険内でできない要求の場合は、介護保険外サービスを提案するのも一つです。
ヘルパーができる掃除の範囲を知り、迷ったときは相談しよう
ヘルパーができる介護サービスのなかには、生活援助の項目で掃除が含まれています。
しかし、利用者宅のあらゆる範囲を掃除できるのではなく、利用者の生活のなかで必要最低限の範囲という決まりがあります。
介護サービスの範囲内でできる掃除場所や内容はケアプランに記載されているため、しっかりと確認をすることが大切です。
もし、ヘルパーができる掃除の範囲でわからないことや迷うことがあった場合は、事業所の上司やサービス管理責任者に確認をしましょう。