
厚生労働省が運営する国立病院は、平成16年4月に独立行政法人に移行し、非公務員化されました。
現在の独立行政法人では、医師をはじめ医療事務に就く人も公務員にはあたりません。
しかし、医療事務の仕事は専門性があって、なくてはならない存在です。
本記事では、医療事務に公務員採用枠があるか、地方公務員として働く病院事務職や、医療事務の安定性などを解説します。
医療事務として公務員で働けるか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
医療事務は公務員なのか?公務員として働けるのか
医療事務は日本の医療を支えるためになくてはならない存在ですが、公務員としての採用枠がありません。
しかし、医療事務と公務員のイメージが結びついているのには、みなし公務員という考え方があるからでしょう。
医療事務の公務員採用枠の有無や、公的病院での勤務を詳しく解説します。
医療事務に公務員としての採用枠はない
医療事務は公共性が高く、なくてはならない職業ですが、公務員としての採用枠は基本的にはないでしょう。
そもそも病院は経営母体が異なり、厚生労働省の管轄下にある独立行政法人や、私立病院の母体となる医療法人があります。
厚生労働省の管轄下にある独立行政法人は、全国に143の病院を経営していますが、その職員は公務員ではなく、みなし公務員の規定が適応される仕組みです。
独立行政法人運営病院で働く医師も、みなし公務員として働いています。
医療事務の国家資格もない
そもそも医療事務になるための国家資格はなく、法的な制限もないため、未経験や無資格でも医療事務として働けます。
ただし、就職においては医療事務の知識を持たない未経験者より、即戦力として働ける人が優遇されるでしょう。
医療事務の専門スキルを有しているかどうかを証明するのが、民間資格です。
国家資格はないものの、次のような民間資格を取得している人は、採用担当者の目に留まりやすい可能性があります。
- 医療事務技能審査試験
- 医療事務認定実務者試験
- 医療事務管理士技能認定試験
- 診療報酬請求事務能力認定試験
資格を取得していると、会計業務やレセプト作成、接遇マナーが身についていると評価される傾向があります。
医療事務の採用はみなし公務員(準公務員)にあたるが公務員ではない
医療事務は公的病院でも公務員採用ではなく、みなし公務員(準公務員)が一般的だとお伝えしました。
みなし公務員とは、公共性が高い業務を遂行する職業で、国営から民営に運営が切り替わった職種において、公務員の代わりに業務に従事する人のイメージです。
例えば、日本郵便、日本銀行、日本年金機構、国立大学法人、通信事業者、電力・ガス会社、オリンピック・パラリンピックの組織委員会の職員などがみなし公務員にあたります。
公務員採用試験の合格も必要なく、一般的な就職活動で入職可能です。
みなし公務員は守秘義務や副業・接待禁止などの規定が厳しい側面がありますが、待遇では一般の公務員と同等とされているケースが多くあります。
医療事務でも、公的病院に勤務するみなし公務員の立場であれば、安定した給料や休みをもらえるでしょう。
地方公務員が病院で事務職として働くケースはある
医療事務には公務員採用はないのが基本ですが、病院事務職として地方公務員が働くケースがあります。
地方公務員のため、公務員試験で高い倍率を通過する必要があるでしょう。
一般の医療事務との違いや、求人の例を詳しく解説します。
医療事務ではない病院事務職とは
病院事務職とは、医療事務としての受付業務やレセプト作成に加えて、人事、経理、総務などの病院運営に関わる事務を行う仕事です。
医療機関の事務には大きく分けて診察窓口と病院経営管理の2つがあり、規模が大きい病院では仕事量も増えるため分業する必要があります。
多くの病院では、医療事務を委託業者や派遣スタッフに任せて、病院事務は公務員として採用する仕組みです。
病院事務の職員は、公務員採用試験に合格したあとに、病院への配属を指定されての勤務となります。
病院事務の公務員試験の受験資格に、病院での勤務経験が求められる自治体もあります。
公務員対象の病院事務職の求人事例
公務員対象の病院事務職の求人は、行政職員として募集されます。
次の行政職員(病院事務職)求人は、横浜市立の病院で勤務するケースです。
受験資格や試験の流れなど、通常の医療事務と異なる部分を見てみましょう。
募集職種 | 医療局病院経営本部 病院総合事務 |
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採用予定人員 | 若干名 |
受験資格 | 下記のいずれかに該当する人 ①平成5年4月2日から平成16年4月1日までに出生した人 ②昭和38年4月2日から平成5年4月1日までに出生した人で、病院等における職務経験を平成28年6月1日から令和5年5月31日までの間に5年以上有している人 |
試験・ 合格発表日程 |
①第一次試験(論文):令和5年8月5日 ②第二次試験(個別面接):令和5年9月5日、6日、7日のいずれか一日を指定 ③第三次試験(個別面接):令和5年10月上旬(予定) ④最終合格発表:令和5年10月中旬(予定) |
参考:横浜市立2病院等で働く行政職員(病院総合事務)を募集します。(最終合格発表です。) 横浜市
病院事務職は通常の医療事務のように随時募集されるのではなく、一斉に募集や試験が行われるケースが多いため、スケジュールに注意が必要です。
医療事務は公務員ではないが安定して働ける
医療事務は公務員ではありませんが、医療の提供を支える重要な仕事であり、公的な病院に就職すると安定して働けるメリットがあります。
高齢化社会にある現代では、医療機関の受診が活発化しており、今後も需要はなくならないでしょう。
また、医療事務の資格があれば、全国の病院や診療所で職を得やすいため、手に職をつけて働きたい人にはぴったりです。
医療事務として働くには公務員試験受験も国家資格も不要
公的病院に勤務する医療事務は公務員ではなく、公共性が高い仕事を遂行する民間人で、みなし公務員ともいわれています。
国家資格や公務員試験は不要ですが、専門スキルを証明するためにも、民間資格を取得するのが一般的です。
資格があれば、全国の医療機関で安定して働けるでしょう。
また、公的病院だけではなく私立病院の求人も含めて、勤務地や給料などの条件で絞ると、自身に合った職場を見つけられる可能性が高くなります。
医療事務の仕事に興味がある方は、かる・けるで探してみましょう。