医療事務は、病院や診療所、調剤薬局など、さまざまな場所で活躍できる職種です。
患者さんの対応から診療報酬の請求まで、幅広い業務を担当するケースも多く、円滑に仕事を進めるには知識とスキルを身につけなければなりません。
医療事務に求められる人材を理解したうえで、仕事に役立つ資格取得をめざすなどスキルアップを図りましょう。
本記事では、医療事務に必要な知識・スキルや仕事に役立つ資格、求められる人材像を解説します。
医療事務をめざしている方や転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
医療事務に必要な知識・スキル
医療事務は、病院をはじめとした医療施設を支える重要な職種です。
来院した患者さんの受付や会計、レセプト業務、病院によってはクラーク業務まで担当する場合もあり、一般的な事務職とは異なる知識・スキルが求められます。
ここからは、医療事務に必要な知識・スキルを具体的に見てみましょう。
医療保険制度に関する知識
医療事務にとって、医療保険制度に関する知識は欠かせません。
医療事務が主に携わる会計業務には、医療保険制度が大きく関わるためです。
日本の医療保険制度は、大きく3つに分類されます。
- 企業や団体に雇われている人が加入する「被用者保険」
- 個人事業主や非正規雇用者などが加入する「国民健康保険」
- 75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」
さらに、患者さんの年齢や収入によって窓口での負担額は違っており、診療報酬の仕組みを含む医療保険制度への理解は必要不可欠です。
制度の知識がなければ、会計業務を適切に行えないだけでなく、患者さんから支払金額の説明を求められたときにも対応できません。
医療事務の仕事を開始する前に、医療保険制度への理解を深めておくとともに、法改正や制度変更など最新の情報を把握できるよう、つねにアンテナを張っておきましょう。
診療や薬剤に関する知識
診療や薬剤に関する知識は、レセプト業務を正確かつ効率的に行ううえで必要になります。
レセプト業務とは、医療機関が健康保険の保険者に診療報酬を請求する作業を指し、病院や診療所が報酬を得るための重要な工程です。
レセプト業務は、レセコン(レセプトコンピュータ)を用いて行います。
レセコンに診療情報を入力する際、医療事務はカルテを確認しますが、診療や薬剤に関する知識があれば、どのような治療・処方がされているのか正確に判断できるでしょう。
カルテの記載漏れや誤記があった場合にも、ミスに気付きやすく、適切な診療報酬の請求につながります。
医療事務の業務品質を向上させるには、専門的な医療知識を積極的に学ぶ姿勢も大切です。
正確な事務処理能力
医療事務には、正確な事務処理スキルも求められます。
医療事務が行う会計業務は、病院の報酬や患者さんの支払いに直接影響すると同時に、患者さんを窓口で待たせないためにも、正確性と迅速さを両立しなければなりません。
実際のカルテの見方や就業先で使用しているレセコンの操作方法など、入職してからでないと身につけられないスキルもあります。
しかし、一般的な事務職に必要な以下のような能力は、医療事務の仕事にも大いに役立つでしょう。
- 業務に優先順位をつけて取り組む能力
- 業務の全体像を把握してから取り組む姿勢
- 業務効率化のため施策を講じる姿勢(テンプレートやマニュアル、チェックリストの活用)
- 情報を正確に読み取り管理する能力
これらのスキルを身につけることで、医療事務の業務をより円滑に遂行できるでしょう。
医療事務に必要な知識を得るための資格
医療事務は、無資格・未経験の方でも働き始められる仕事です。
しかし、医療事務に求められる役割を理解し、スムーズに業務に取り組むには、次のような資格を取得して必要な知識を学んでおくと良いでしょう。
- 医療事務技能審査試験
- 診療報酬請求事務能力認定試験
これらの資格は、医療事務のキャリアを築き上げるうえで強力な武器となります。
医療事務技能審査試験
医療事務技能審査試験は、医療事務の業務に必要な知識を網羅的に学べる民間資格です。
日本医療教育財団が認定を行っており、試験に合格すると、医療事務のスペシャリストであるメディカルクラークを名乗れるようになります。
1974年にスタートし、現在では総合格者数99万人を突破している歴史ある試験のため、一定の信頼性を見込めるのが特徴です。
受験条件は設けられておらず誰でも挑戦でき、合格率は約60~80%とされています。
医療事務に必要な基礎知識を幅広く学べるため、未経験者や転職を考えている方にもおすすめの資格です。
診療報酬請求事務能力認定試験
診療報酬請求事務能力認定試験は、公益財団法人日本医療保険事務協会によって運営されている民間試験です。
診療報酬請求事務の能力向上に特化しており、より専門的な知識が問われます。
医療事務技能審査試験と同様に誰でも受験できますが、合格率は約30%と低く、難易度は比較的高めです。
受験前には、十分な勉強時間を確保して対策をとる必要があるでしょう。
診療報酬請求事務能力認定試験の合格をめざすメリットは、大きく以下の3つです。
- 診療報酬請求の専門知識が身につく
- より高度な医療事務業務に対応できる
- キャリアアップの可能性が広がる
医療事務としてある程度の経験を積み、さらなるスキルアップを目標としている方に適した試験といえます。
医療事務に求められる人材
医療事務には、ここまで紹介したような実務スキルに加え、次のような能力も求められます。
- コミュニケーションスキル
- 臨機応変な対応
- 基本的なパソコンスキル
- スケジュール管理能力
医療事務に求められる人材像を理解して、自分自身に必要な能力を磨いていきましょう。
コミュニケーションスキルがある
医療事務には、相手に応じて柔軟に対応できるコミュニケーションスキルが求められます。
例えば、医師や看護師と話す際は、相手の業務を妨げないための配慮をしつつ、端的にわかりやすく情報を伝えなければなりません。
一方で、患者さんと話す際は、安心感を与えられるようしっかりと耳を傾け、相手の理解力に合わせた伝え方を心がけましょう。
このように、状況や相手に合わせて適切なコミュニケーションをとる技術は、医療事務が身につけておきたいスキルの一つです。
医療事務のコミュニケーション能力を向上させるためのポイントは、以下の記事で詳しく解説しています。
臨機応変な対応ができる
医療事務は、淡々と事務作業を行うことだけが仕事ではなく、患者さんや医療職などさまざまな人と接する場面も多いため、ときには臨機応変な対応力が求められます。
例えば、次のような状況では医療事務が判断力・対応力を発揮する必要があるでしょう。
- 目の前にいる患者さんの体調が急変したとき
- 患者さんからクレームを受けたとき
- 予約外で緊急の患者さんが来院したとき
- システムトラブルが発生したとき
イレギュラーな事態が起きても、焦らず冷静に状況を判断して適切な対応をとれる人材は、周囲からも信頼されます。
基本的なパソコンスキルがある
医療事務は、レセコンの入力をはじめ、多くの作業でパソコンを使用します。
このため、以下に挙げるような基本のパソコンスキルは必須です。
- タイピングスキル
- ExcelやWordなど基本的なソフトの操作スキル
- 電子カルテシステムの操作スキル
- インターネットを使った情報検索スキル
医療事務の仕事は、必ずしも高度なパソコンスキルを求められるわけではなく、それ以上に正確さとスピードが重要になります。
入力速度と正確性をあわせ持っていると、より効率的に業務に取り組めるでしょう。
日頃からパソコンに触れ、タイピング練習やOfficeソフトの操作に慣れておくことをおすすめします。
スケジュール管理能力がある
医療事務には、担当している仕事を期限内に終わらせるスケジュール管理能力も必要です。
業務が立て込んでしまったときには、締切日など先の予定も先読みしながら優先順位をつけてタスクを整理し、漏れのないよう対応しなければなりません。
スケジュール管理能力を高めるには、次のポイントを意識してみてください。
- ToDoリストを作成してタスクをリストアップ
- タスクの優先順位をつける
- タスクごとにかかる時間の見積もりと余裕を持った計画
- こまめなスケジュールの見直し・調整
これらのポイントを習慣化することで、期限を守りながら複数のタスクを効率的にこなし、なおかつ安定した業務品質を保てるでしょう。
必要な知識を身につけて医療事務として活躍しよう
医療事務は、患者さんと医療スタッフの橋渡し役であるとともに、医療機関の運営を支える重要な存在です。
職務を円滑に遂行するには、医療保険制度や診療・薬剤に関する知識、正確な事務処理能力が欠かせません。
また、医療の現場をサポートする立場として、コミュニケーションスキル、臨機応変な対応力、パソコンスキル、スケジュール管理能力なども備えている必要があります。
これらの知識やスキルは、日々の業務経験を通じて磨いていくことも可能ですが、医療事務に役立つ資格を取得すれば、より体系的に理解を深められるでしょう。
医療事務のスキルアップ・キャリアアップにつながる資格には、医療事務技能審査試験や診療報酬請求事務能力認定試験があります。
向上心を持って積極的に学習の機会を作りながら、患者さんと医療機関の双方に貢献できる医療事務をめざしてみてください。