小児看護において、成長発達の途中である子どもに対するアセスメントは非常に重要です。
小児は成人と異なる成長スピードを持っているため、それに合わせたアセスメントが求められます。
本記事では、小児看護で必要なアセスメントの内容や必要な能力、具体的な情報収集の方法やアセスメント力を高めるためのポイントについて詳しく解説します。
目次
小児看護のアセスメントの内容

小児看護のアセスメントの主な内容は、以下のとおりです。
- 生物学的発達の理解
- 疾患の把握
- 個別性の理解・認知
- 文化的背景の確認
- ご家族や友人など社会背景の把握
それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
生物学的発達の理解
小児は成長発達の途中にあるため、年齢や発達段階によって、脈拍数や呼吸回数といった身体機能の正常値が異なります。
また生物学的発達の面でも、2歳頃から話し始める二語文や、思春期に始まる身体的変化(第二次性徴)など、多くの発達段階があることを把握しておきましょう。
小児看護においては、その子どもが今どの発達段階にあるのか、正常な値や成長過程であるのかといった生物学的発達を理解することが重要です。
疾患の把握
小児看護においても、成人と同様に疾患の理解は必要不可欠です。
疾患を理解することで、どのような症状が出現したら危険なのか、どのような対処法があるのかを瞬時に判断し、対応することができます。
特に小児看護では、子どもが症状を自覚して言葉で表現するのが難しいことが多いため、少しの変化に気付くことができる高い感度と客観的な視点に基づくアセスメントが大切です。
また疾患への十分な理解は、患児やご家族から病気についての質問があった際にも、不安感を与えない説明と応対につながります。
個別性の理解・認知
子どもやそのご家族によって「あまり話したくないが、側にはいてほしい」や「たくさん話を聞いてほしい」など、必要とされるコミュニケーションのとり方が違います。
そのため相手の表情や態度、話などからどのようにしてほしいかを認知し、個別性を理解することが必要です。
相手が病院や看護師のことをどう感じているかを考えるうえで、観察力や気持ちを汲み取る力が欠かせません。
小児看護で難しい点ですが、個別性を理解して行動することで、相手からの信用度も変わるでしょう。
文化的背景の確認
国際結婚などにより、日本以外の小児患者を見る可能性があります。
他国の慣習や宗教的問題から、治療や生活様式に対する考え方が異なっている場合もあるでしょう。
そのような小児看護をするときは、子どもやご家族にどのような文化的背景があるのか、事前に情報収集を行っておくことが重要です。
ご家族や友人など社会背景の把握
小児看護では、子どもを観察するだけでなく、子どもを取り巻く環境や、人間関係から社会背景の情報収集をすることも重要です。
家庭環境や友人関係などによって、子どもごとに社会的背景とその影響は違います。
仲が親しいからこそ見える姿や、実は悩んでいることがありその子だけには話しているなど、その子の背景や性格を知っておくこともアセスメントには必要です。
年齢や疾患などの知識だけでは理解が難しい部分であるため、相手の心を汲み取る力が必要といえるでしょう。
小児看護で求められるアセスメント力
小児看護で求められるアセスメント力として、主に以下3つがあります。
- 迅速かつ正確な情報収集力・観察力
- 状態変化を見逃さないフィジカルアセスメント力
- ご家族も含めたケアやコミュニケーションに関する適切な判断力
それぞれの能力について詳しく解説します。
実際に小児看護で実践するための参考にしてください。
迅速かつ正確な情報収集力・観察力
小児は成人とは大きく違い、発達段階によって呼吸数や血圧、体温などの正常値が変動します。
また、小児は自身の症状を明確に言語化するのが難しいです。
そのため小児看護では、客観的に判断する情報収集能力や、発達段階を踏まえた観察力が求められます。
特に小児は成人と比べ、症状の進行が早い傾向にあるため、迅速な判断と対応も欠かせません。
状態変化を見逃さないフィジカルアセスメント力
先述のとおり、小児は症状の進行が早いため、状態変化を見逃さないフィジカルアセスメント力が必要です。
活気や顔色はもちろん、呼吸の仕方、脈拍や体温などバイタルサインの値の変動や、CRT(Capillary Refilling Time=毛細血管再充満時間)など、全身状態を含めたフィジカルアセスメントを心がけましょう。
ご家族も含めたケアやコミュニケーションに関する適切な判断力
小児を含めた未成年の患者さんの場合、保護者であるご家族に対してもケアが求められます。
小児の病状を改善させるためには、保護者の協力も必要です。
しかし、子どもの病状が重い場合や、緊急性の高い状況の場合には、保護者も不安や苦痛を感じてしまうでしょう。
その際には、落ち着いてもらえるような説明や親身な相談など、ご家族への精神的ケアも欠かせません。
必要な情報提供や適切な意思決定のサポートをしながら、精神的な面で患者さんとご家族に対してサポートすることも一つのアセスメント力です。
小児看護に必要な情報収集のやり方

小児看護に必要な情報収集のやり方は、主に以下4つです。
- 患児と直接話す
- 患児のご家族や介護者から話を聞く
- 医師やチームメイトなどの援助者から話を聞く
- 採血・レントゲンなどの検査データから収集する
それぞれの情報収集の方法について、以下で詳しく解説します。
患児と直接話す
小児看護では、どうしてもご家族と話しがちになり、患児自身と話す機会を設けなくなる傾向にあります。
しかし、患児自身が病状をどうとらえているのかや、不安や悩みを聞くこと、必要な情報をわかる範囲で提供すること、声をかけてあげることがとても重要です。
ただし、ご家族の意向とは違う形でコミュニケーションをとることがないよう、倫理的な配慮を忘れてはいけません。
例えば、ご家族が病気のことを患児に伝えたくないと考えている場合には、無暗に患児本人に病気のことを話さないよう注意しましょう。
話して良いのか悩んだ場合は、自己判断をせずにチームメンバーや主治医へ相談してから動くようにします。
患児のご家族や介護者から話を聞く
小児に対する看護は家族看護も含めているため、患児が寝ている時間や面会後など、ご家族や介護者から情報収集を行うことも重要です。
子どもは神妙な空気や雰囲気を感じ取りやすいため、部屋の前で聞こえるような声で話すことがないよう、倫理的に配慮する必要があります。
医師やチームメイトなどの援助者から話を聞く
病院の場合、医師のほか多職種、同じチームの看護師などから話を聞くのも一つの手です。
自分が勤務していない時間に、ほかの看護師が見た情報や、医師が感じるご家族の理解状況など、他の視点から多角的に情報を集めることができます。
情報共有のために多職種カンファレンスなどを行う施設もあるでしょう。
採血・レントゲンなどの検査データから収集する
採血やレントゲン検査、CT検査などの検査結果を把握し、そこから何が今の問題点なのかを考えることも重要です。
検査データを見る際は、「心不全で最近頻拍だが、エコー検査はどうなっているだろう」といった、看護の視点を持って情報収集しましょう。
闇雲にデータを収集すればいいのではなく、なぜそのデータが必要なのか、そのデータから何を読み取るのが重要なのかを考えることが大切です。
小児看護におけるアセスメントのポイント
小児看護におけるアセスメントのポイントには、患児の不安やストレスを受け流さず否定しない、遊びを用いてコミュニケーションをとる、PALSを受講するなどがあります。
それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。
患児の不安やストレスを受け流さず否定しない
発達段階にもよりますが、患児は成人のように言葉で何が辛いのか正確に伝えることは難しい場合が多くあります。
症状の変化は読み取りづらいですが、とにかく泣いたり、非活動性になったりする行動の変化を受け流さないようにしましょう。
「どうして泣いているのか」「なぜ元気がないのか」というように、その原因を考えることが重要です。
遊びを用いてコミュニケーションをとる
遊びは看護師の仕事らしくないと思う方もいるかもしれませんが、遊びは子どもにとって大きな意味があります。
それぞれの子どもに合った遊びの提供は、看護師に信頼感を抱いてくれるなどの効果的な作用を受けるために必要です。
また、障害や疾患の疑いを遊びを通して発見する可能性もあります。
ただの遊びではなく、発達段階に合わせた成長をしているのか、なにかいつもと違う点はないかなど考えながら関わることが重要です。
PALSを受講する
PALSとは小児二次救命処置のことです。
小児の急変時に対応できる力を養うPALSコースなどを受講することで、より専門的な知識を身につけることができます。
PALSは費用が高く「本当に必要か?」と考える人もいると思いますが、小児看護に関わる看護師にとって、小児の急変が起きた時にはきちんと対応できなくてはいけません。
そのため、「小児看護は苦手だ」と感じる人ほど一度PALSを受講し、必要な知識と技術を取得することはとても重要です。
ほかにも認定看護師や専門看護師が気になる場合は、下記のURLを参照してください。

小児看護向上の秘訣をおさえて、アセスメント力をあげよう
小児看護におけるアセスメントは、生物学的発達の理解、疾患の把握、認知・個別性の理解、文化的背景の確認、ご家族や友人など社会背景の把握など多岐にわたります。
また、迅速かつ正確な情報収集力・観察力、状態変化を見逃さないフィジカルアセスメント力、ご家族も含めたケアや関わりの適切な判断力など、高度なアセスメント力が求められます。
情報収集のためには、患児と直接話す、患児のご家族や介護者から話を聞く、医師・援助者から話を聞く、採血・レントゲンなどの検査データから収集するといった方法が必要です。
患児がうまく表現できなくても、本人の不安やストレスを受け流さず、コミュニケーションをとることで、小児看護におけるアセスメント力を高めることができるでしょう。
