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血液ガス分析で何がわかる?検査の目的や評価方法について説明

この記事の監修者
ゆみさと
【資格】
看護師

【プロフィール】
岩手県立大学看護学部を卒業後、血液内科・乳腺外科混合病棟にて勤務し、その後、透析クリニックに転職。
現在、看護師として働きながら、医療関係を中心にライターとしても活動中。

病院などの医療機関で働いていると、血液ガス分析のデータを目にすることもあるでしょう。
血液ガス分析の検査目的やそれぞれの検査項目の意味を理解することで、患者さんの状態をよりよく理解できます。

今回の記事では、血液ガス分析の検査目的や評価方法について解説していきます。

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血液ガス分析の検査目的とは?

血液ガス分析の検査目的とは?

血液ガス分析とは、血液中の酸素や二酸化炭素の量、pHを調べて、呼吸状態や体内の酸とアルカリのバランス(酸塩基平衡)を確認する検査です。
血液ガス分析の適応としては、意識障害・ショック状態などにより体内の酸・塩基バランスを確認する必要があるときや、呼吸不全により酸素化不良や二酸化炭素貯留の有無を確認するときがあります。
臨床の現場では、「血液ガス分析」のことを略して「血ガス」と呼ばれていることもあります。

血液ガス分析で確認する検査項目

血液ガス分析で確認する主な検査項目は、以下のとおりです。

検査項目 正常値・基準値
pH 7.35 ~ 7.45
PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧) 35Torr~45Torr
HCO3−(重炭酸イオン) 22〜26mmol
PaO2(動脈血酸素分圧) 80~100Torr

それぞれの検査項目についてみていきましょう。

pH

pHは、血液中の水素イオンの濃度を表す値です。
1〜14の数値で表され、7.0を中性とします。
血液中のpHの正常値は、7.35~7.45です。

pH値が小さいほど水素イオンが多い酸性に、大きいほど水素イオンが少ないアルカリ性に傾いた状態です。
酸性に傾いた状態がアシデミア(病態:アシドーシス)、アルカリ性に傾いた状態がアルカレミア(病態:アルカローシス)となります。

PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)

PaCO2は、動脈血の中にどれくらい二酸化炭素が含まれているかを示す項目で、肺胞の換気量を把握する指標にもなります。

正常値は、35Torr〜45Torrです。
正常値よりも値が高いと体内に二酸化炭素が溜まっていることがわかり、換気が不足している低換気の状態であると判断できるでしょう。
反対に、正常値よりも値が低いと換気量が通常よりも増加しており、過換気の状態と判断できます。

HCO3−(重炭酸イオン)

HCO3−は、血液中の水素イオンを吸収し、pHを中性に保つ働きをする役割を担っています。
血液中の酸塩基平衡が酸性に傾いているときは、以下の式の右側から左側へ、アルカリ性に傾いているときは、左側から右側へ緩衝作用が起こります。
 CO2 + H2O ⇔ H+ + HCO3−

HCO3−の基準値は、22〜26mmol です。

HCO3−の量は、腎臓の近位尿細管から腎盂に移動する過程で体内のpHによって調節されるため、この値によって腎臓の機能を把握することもできます。

PaO2(動脈血酸素分圧)

PaO2とは、動脈血に含まれる酸素の量を表している値です。
基準値は80〜100Torrであり、PaO2が低いときは、低酸素状態が疑われます。

また、PaO2はSaO2(動脈血酸素飽和度)とも関係のある値であり、酸素解離曲線を用いて、PaO2の値からSaO2の値を予測することも可能です。

血液ガス分析の評価方法

ここからは、血液ガス分析の評価方法を解説します。
臨床の現場で、血液ガス分析の値をどのように考えていけば良いのかわからないと感じている方もいるでしょう。
血液ガス分析結果の見方を、3つのステップに分けてみていきましょう。

ステップ1:pHを確認する

まずはpHの値を確認していきます。
先述したように、pHの値から、酸塩基平衡の異常(アシデミアなのかアルカレミアなのか)を把握できます。

  • pHが7.35以下の病態:アシドーシス
  • pHが7.45以上の病態:アルカローシス

①pHが7.3のとき:
 pHが7.35以下のため、アシドーシスとなる

②pHが7.5のとき:
 pHが7.45以上のため、アルカローシスとなる

ステップ2:呼吸性・代謝性を確認する

次に、PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)・HCO3−(重炭酸イオン)の値を確認し、酸塩基平衡が呼吸性のものなのか・代謝性のものなのかを確認していきます。

具体的には、PaCO2かHCO3−のいずれが基準値から逸脱しているのかを確認し、PaCO2の場合は呼吸性、HCO3−の場合は代謝性と考えていきます。


①pHが7.3、PaCO2が60torr、HCO3−が24mmol/Lのとき:
pHが7.3のためアシドーシスであり、PaCO2が基準値から逸脱、HCO3−は基準値内である。
→呼吸性アシドーシスとなる

②pHが7.25、PaCO2が40torr、HCO3−が20mmol/Lのとき:
pHが7.25のためアシドーシスであり、PaCO2が基準値内、HCO3−は基準値から逸脱している。
→代謝性アシドーシスとなる

③pHが7.5、PaCO2が20torr、HCO3−が24mmol/Lのとき:
pHが7.5のためアルカローシスであり、PaCO2が基準値から逸脱、HCO3−は基準値内である。
→呼吸性アルカローシスとなる

④pHが7.6、PaCO2が40torr、HCO3−が28mmol/Lのとき:
pHが7.6のためアルカローシスであり、PaCO2が基準値内、HCO3−は基準値から逸脱している。
→代謝性アルカローシスとなる

なお、どちらも基準値を逸脱している場合は、ステップ3へ進みましょう。

ステップ3:患者さんの状態を含めて判断する

PaCO2・HCO3−の値がどちらも基準値から外れている場合は、「代償」が起きていると考えましょう。
代償とは、体内のpHバランスを調節する作用です。
代償が起きていると考えられる場合は、患者さんの病態と絡めて考えると良いでしょう。

例えば、pHが7.4、PaCO2が55torr、HCO3−が30mmol/Lのときは、pHの値は正常範囲内であるものの、PaCO2とHCO3−の値はどちらも増加しています。
患者さんの病態が呼吸不全であれば、HCO3−の増加理由は、PaCO2を代償した結果と考えられるでしょう。

なお、アニオンギャップ指数を計算して考える方法もあります。

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血液ガス分析からわかる病態

さて、血液ガス分析の結果に見られる異常な状態は、以下の4つに分類できることがわかりました。

  • 呼吸性アルカローシス
  • 呼吸性アシドーシス
  • 代謝性アルカローシス
  • 代謝性アシドーシス

それぞれの状態についてみていきましょう。

呼吸性アルカローシス

呼吸性アルカローシスとは、過換気などの呼吸状態が要因でCO2が過剰に排出されている状態のことです。

肺炎や呼吸困難をはじめ、過呼吸などの精神的な要因からも起こる可能性があるでしょう。
呼吸性アルカローシスの症状としては、めまい・痺れ・失神・痙攣などがありますが、生命に関わる病態ではないため、呼吸性アルカローシスの原因となっている疾患に対する治療を行います。

呼吸性アシドーシス

呼吸性アシドーシスは、CO2が体内に蓄積してしまった状態です。
COPDなどにより呼吸数や呼吸量の減少が起こり、体内の換気が正常に行えなくなることで起こります 。

主な症状としては頭痛、錯乱、不安、眠気、痙攣、意識レベルの低下などがあるでしょう。
十分な換気や肺機能の改善などが主な治療方法となります。

代謝性アルカローシス

代謝性アルカローシスは、HCO3−が体内に蓄積されることによって起こります。

主な症状としては、嘔吐、頭痛、せん妄、意識障害があるでしょう。
低カリウム血症などの電解質の異常に注意しながら、原因疾患の治療を行うこととなります。

代謝性アシドーシス

代謝性アシドーシスは、HCO3−が少なくなり、pHが酸性に傾いている状態です。

症状がないこともありますが、悪心や嘔吐、倦怠感をはじめ、急性では、低血圧・ショックをともなう心機能障害、昏睡などの症状が出現することがあります。

血液ガス分析の採血方法

血液ガス分析は、静脈ではなく動脈に穿刺して採血を行うため、医師が実施しなければなりません。
穿刺部位としては、座位の場合は橈骨動脈や上腕動脈、仰臥位の場合は大腿動脈を選択するのが一般的です。
血液を採取したら、血液が空気に触れないようシリンジに専用のキャップをつけて転倒混和します。

血液ガス分析において看護師が注意すること

血液ガス分析の採血では、看護師は医師のサポートに回ります。
医師がスムーズに採血を行えるよう物品を準備し、患者さんの体位を整えましょう。

また、穿刺部の止血も重要です。
正しく止血できていないと、皮下血腫ができるリスクがあります。
穿刺後は、圧迫止血しながら皮膚状態を観察し、再出血を起こさないよう注意しましょう。

看護師の仕事内容は、こちらの記事でも紹介しています。
看護師に興味がある方は、参考にしてみてください。

血液ガス分析を理解して患者さんの状態を把握しよう

血液ガス分析は、呼吸状態や体内の酸塩基平衡を把握できる検査です。
それぞれの検査項目の意味を理解してデータを見ることによって、患者さんの状態を把握し、適切なケアの提供につなげられるでしょう。

勤務先や診療科によっては、血液ガス分析の検査結果を見ることが少ない看護師もいるかもしれませんが、この機会に一度確認しておきましょう。

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執筆者について

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