
認定看護師の制度更改が発表され、看護の現場は今まさに過渡期を迎えています。
旧制度での認定看護師資格を取得済みの方や、これから認定看護師資格を取得しようと考えている方にとって、新制度では現行のものと何が大きく変わるのか気になるところでしょう。
本記事では、認定看護師の旧制度廃止にともなう必要な手続きや、新制度での資格取得方法など、認定看護師制度の改正にまつわる詳細を解説します。
ぜひ、今後の働き方の参考材料としてみてください。
目次
認定看護師の旧制度がなくなるのは2026年
これまでの認定看護師制度は2026年に廃止され、新制度へと改正されます。
まずは制度改正における基本知識として、以下3点を解説します。
- 認定看護師の旧制度がなくなり新制度へ移行
- 認定看護師の旧制度がなくなるのはなぜか
- 新制度で期待される認定看護師スキル
認定看護師の旧制度がなくなり新制度へ移行|A課程からB課程へ
参照:認定看護師 | 看護職の皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会
認定看護師制度の改正によって、既存の認定看護師制度であるA課程は2026年度に現行教育が終了し、2029年度に認定審査が終了することが、日本看護協会より発表されました。
新制度のB課程による教育は2020年度、認定審査は2021年度より実施が始まっています。
B課程では特定行為研修が必須であることが、A課程と大きく異なる点です。
そのため、現在A課程認定看護師資格を取得している方がB課程へと移行する場合は、特定行為研修の受講が義務付けられています。
認定看護師の旧制度がなくなるのはなぜか
認定看護師の旧制度がなくなる理由は、高齢化社会において質の高い医療サービスを提供し続け、地域医療や在宅医療の充実に貢献するためです。
高齢化が急速に進行している日本では、団塊の世代が75歳以上となる2025年以降、医療や介護の需要がさらに増大すると予想されています。
この状況を鑑み、厚生労働省は高齢者が人生の最期まで自分らしい暮らしができるよう、地域包括ケアシステム構築に乗り出しました。
これらの社会状況を踏まえて、認定看護師制度が改正されます。
新制度で期待される認定看護師スキル
新制度で認定看護師に期待されるスキルとして、以下の3点が挙げられます。
- 特定行為を活用した高い臨床推論力、病態判断力
- 後輩の指導育成や看護師に対するコンサルテーションといった「指導」「相談」の役割
- 地域で質の高い医療を提供するために、他職種と協働しチーム医療の要となる役割
これまで以上に高度な技能が求められると同時に、所属する部署や病院のみならず他職種とも連携を密に行うことが大切です。
認定看護師の旧制度がなくなるにあたって必要な更新・移行
認定看護師の旧制度がなくなることで、新制度への更新が必要なのか、また更新の方法はどうすれば良いのかが気になる方もいるでしょう。
A課程認定看護師の資格の継続有無とあわせて、B課程認定看護師への移行手順を紹介します。
A課程認定看護師は新制度版へ移行可能
現在A課程認定看護師の資格を所持している場合、特定行為研修を受講し必要な手続きを行うことでB課程認定看護師への移行が可能です。
特定行為研修の受講にあたり、指定研修機関や特定行為区分は自由に選択できます。
自分の学びたい区分を学びやすい機関で受講しましょう。
研修受講後は、日本看護協会へ移行を申請します。
特定行為研修以外に追加履修などを受ける必要はありません。
手続きの完了次第、新制度の認定看護師資格へと移行されます。
旧制度のA課程認定看護師資格をそのまま更新することも可能
A課程認定看護師資格の更新審査に合格することで、新制度へと移行せずにそのままA課程認定看護師資格を継続することも可能です。
旧制度の認定看護師教育は2026年度に、認定審査は2029年度に終了します。
しかし、更新審査は今後も継続されるため、2029年度までに認定審査に合格しておけば、その後もA課程認定看護師資格を更新できます。
新制度のB課程認定看護師へ移行・更新しなかったらどうなるか
B課程認定看護師資格への移行またはA課程認定看護師資格の更新をしないまま、有効期限が満了すると、認定看護師資格が失効します。
そのため、新制度版への移行もしくは資格の更新を行いましょう。
なお、A課程の認定資格を失効してしまった場合、再認定審査の受験により資格を再取得できます。
ただし、審査申請時に下記2点を満たす必要があるので注意しましょう。
1.過去に認定看護師として認定された者であること。
※2021年4月以降に初めてA課程認定看護師名簿に登録する認定看護師、及びB課程認定看護師名簿については、適用しないものとする。
2.過去5年間に以下の看護実践及び自己研鑚の実績があること。
1)看護実践時間:2,000時間以上
2)自己研鑽実績: 50点以上(以下の参考資料参照)
出典:認定看護師 | 看護職の皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会
新制度B課程で認定看護師資格を取得する方法
新制度下で認定看護師資格を取得する流れを紹介します。
資格取得にあたり、前提として以下の2つの条件を満たすことが必須です。
- 日本の看護師免許を所有していること
- 看護師免許取得後の実務研修が通算5年以上あり、そのうち3年以上は認定看護分野での研修であること
上記2つの条件に当てはまる場合、特定行為研修を行っている認定看護師教育機関へ入学し、カリキュラムを受講します。
その後、認定審査を受けて審査に合格すると、認定証の交付とB課程認定看護師名簿への登録がされ、晴れて認定看護師となれます。
資格の継続を希望する場合は、5年ごとに更新を行いましょう。
B課程認定看護師で変更された看護分野
新制度では、社会や医療のニーズに応じるため、従来の認定看護分野を一新し、分野の統合および名称の変更が行われます。
新しい分野名は表のとおりです。
新制度の分野名 | 旧制度の分野名 | |
---|---|---|
分野統合 | クリティカルケア | 救急看護 |
集中ケア | ||
緩和ケア | 緩和ケア | |
がん性疼痛看護 | ||
分野名変更 | がん薬物療法看護 | がん化学療法看護 |
在宅ケア | 訪問看護 | |
生殖看護 | 不妊症看護 | |
腎不全看護 | 透析看護 | |
摂食嚥下障害看護 | 摂食・嚥下障害看護 | |
小児プライマリケア | 小児救急看護 | |
脳卒中看護 | 脳卒中リハビリテーション看護 | |
呼吸器疾患看護 | 慢性呼吸器疾患看護 | |
心不全看護 | 慢性心不全看護 |
なお、以下の8分野は、旧制度から変更がありません。
- 皮膚・排泄ケア
- 感染管理
- 糖尿病看護
- 新生児集中ケア
- 手術看護
- 乳がん看護
- 認知症看護
- がん放射線療法看護
B課程認定看護師で求められる特定行為
特定行為とは、診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合に、実践的な理解力や思考力、判断力に加え、高度で専門的な知識や技能が必要とされるものです。
B課程認定看護師に求められる特定行為は全部で38項目あります。
下表にて、その一部を紹介します。
特定行為 | 内容 |
---|---|
呼吸器関連 | 人工呼吸器の調整、鎮静薬の投与量調整 |
栄養および水分管理に関わる薬剤投与関連 | 脱水症状に対する輸液による補正 |
透析管理 | 急性血液浄化療法における血液透析器または血液透析濾(ろ)過装置の操作および管理 |
認定看護師の旧制度はなくなるが新制度ではより深く看護に携われる
認定看護師の旧制度は廃止されますが、新制度へ移行することで、特定行為を生かしてより深く看護に携われます。
現在A課程認定看護師として働いている方は、更新して継続するか、特定行為研修を受けてB課程認定看護師へ移行するか検討してみてください。
また、今後新たに認定看護師資格を取得したい方は、認定看護師教育機関での課程を修了し審査に合格すると、B課程認定看護師になれます。
制度改正を機に今後のキャリアプランを考え、より自身の活躍の場を広げていきましょう。