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心不全患者さんの看護計画の立て方|コツから具体例まで徹底解説

この記事の監修者
川俣貴子
東北福祉大学卒業後、看護師として循環器を含む総合病院で働いています。医療系ライターと看護師を励行中です。

心不全は、心臓が十分な血液を体全体に送り出せなくなる深刻な病態です。
患者さんの生活の質を大きく低下させるため、適切な管理が必要となります。
看護師は、心不全患者さんの状態を正確に把握し、個々に合わせた看護計画を立てることが重要です。

本記事では、心不全患者さんの看護計画の立て方について、コツから具体例まで詳しく解説します。
適切な看護計画を立てることで、患者さんの回復を支援し、QOLの維持・向上をめざしましょう。

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心不全増悪患者さんに向けた看護計画の立て方

心不全増悪患者さんに向けた看護計画の立て方

看護計画は、患者さんの状態を正確に把握し、適切なケアを提供するために欠かせません。
ここでは、心不全増悪患者さんに対する、看護計画を立てる際の具体的なステップを解説していきます。
これらのステップを理解し、実践することで、より効果的な看護を提供できるようになるでしょう。

心不全患者さんの既往歴や背景を把握する

看護計画を立てる第一歩は、患者さんの詳細な情報収集です。
心不全に至るまでの経緯や、患者さんの生活背景を理解することが重要です。
既往歴、心不全の原因疾患、生活習慣、職業、服用中の薬剤などの情報を集めましょう。

これらの情報を関連図にまとめると、患者さんの全体像を把握しやすくなります。
関連図を作成することで、心不全に影響を与える要因や、患者さんの生活上の課題が明確になり、より適切な看護計画の立案につなげられるでしょう。

その患者さんの現状を把握する

次に、患者さんの現在の症状や状態を詳しく観察します。
心不全の症状は個人差が大きいため、個々の患者さんに応じた観察が必要です。

緊急入院の場合は、入院時の症状や経緯を確認しましょう。
定期外来からの入院であれば、体重増加、症状の有無など、心不全の増悪兆候を把握します。
ベッドサイドでの問診のほか身体所見の観察、バイタルサインチェックも重要となります。
呼吸状態、浮腫の有無、尿量などを注意深く確認し、現病歴と合わせて患者さんの状態を総合的に理解することが大切です。

心不全の問題点を考える(看護診断)

収集したデータをもとに、患者さんが退院できない理由や問題点を抽出します。
例えば、体重増加が見られる場合、今後下腿浮腫や尿量低下などの心不全症状が悪化する可能性が考えられるでしょう。
このような問題点を具体的に挙げていきます。

関連図を描きながら考えると、問題点の抽出が容易です。
関連図を実際に描くことで、複雑に感じていた患者さんの状態や問題点の関連性が視覚的に理解でき、より適切な看護診断につながります。
複雑な症例の場合は、チームで関連図を作成・検討することで、多角的な視点から問題点を抽出できるでしょう。

問題点を解決するための対策を考える

問題点が明確になったら、それぞれの解決策を考えます。
例えば、倦怠感増悪による活動性の低下が問題点として挙げられる場合、廃用症候群の予防が必要です。
具体的な対策として、定期的な声かけによる日常生活動作の促進などが考えられます。
ほかにも、本人やご家族から情報収集を行い、趣味や嗜好があればできる範囲でそれが行える場を提供することも一つの看護です。

対策は、観察計画(OP)、実施計画(TP)、教育計画(EP)の3点に分けて立案します。
OPではバイタルサインや症状の観察項目を、TPでは具体的なケア内容を、EPでは患者教育の内容を詳細に記載します。
これにより、包括的かつ効果的な看護介入が可能となるのです。

看護計画ができたらリーダーへ報告する

看護計画が完成したら、必ず先輩看護師や指導者に確認してもらいましょう。
経験の浅い看護師が病態の個別性が特にある心不全患者さんに対し、一人で計画を管理するのは難しい場合があるからです。

リーダーに確認してもらうことで、計画が実際の患者さんの状態と乖離していないか、内容が適切かを確認できます。
必要に応じて修正を加え、より質の高い看護計画に仕上げていきます。

最終的に確認された看護計画は、チーム全体で共有しましょう。
これにより、看護問題を各スタッフが把握することができ、一貫性のある看護ケアを提供できます。
それは、患者さんの回復を効果的に支援することにつながります。

心不全の看護計画を立案するときのコツ

心不全患者さんの看護計画を立てる際には、いくつかのコツがあります。
これらのコツを押さえることで、より効果的で実践的な看護計画を立案することが可能です。
ここでは、看護計画立案の際に役立つ重要なポイントをいくつか紹介します。
これらを意識しながら計画を立てることで、患者さんのニーズに合った質の高い看護を提供できるでしょう。

NANDA‐Iを活用する

NANDA-I(北米看護診断協会)の看護診断を活用することは、看護計画立案の大きな助けとなります。
NANDA-Iは13の領域に分類された診断ラベル(診断名)を提供しており、各診断には定義、診断指標、関連因子、危険因子が含まれています。

多数ある病態のなかで、統一性をもった看護を提供することは簡単ではないため、この標準化された診断システムを使用することで、チーム内での共通認識が容易になるのです。
結果として、患者さんに一貫性のある看護ケアを提供することができます。
NANDA-Iを参考にしながら看護問題を特定し、それに基づいて具体的な看護計画を立てていくことで、より体系的なアプローチが可能になるでしょう。

優先順位が高い問題を1とし、2~3つ挙げる

問題点を抽出したあとは、優先順位をつけることが重要です。
生命に関わる重篤な症状や緊急性の高い問題を優先順位1とし、順に2、3と割り振っていきます。

問題点が多すぎると焦点が定まらず、効果的なケアが難しくなる可能性があります。
そのため、優先度の高い2~3つの問題に絞って計画を立てる方法がおすすめです。

この方法により、限られた時間と資源のなかで最も必要な問題点に対し効果的なケアを提供できます。

問題は定期的に見直す

患者さんの状態は常に変化します。
入院時の問題点が、治療の経過とともに改善したり、新たな問題が発生することもあるでしょう。
そのため、看護計画は定期的に見直す必要があります。

急性期の患者さんは2~3日ごと、慢性期の患者さんでは1週間ごとなど、状態に応じて見直しの頻度を設定しましょう。
定期的な見直しにより、患者さんの現状に即した適切なケアを継続して提供することができます。
病棟によっては、受け持ち看護師が出勤している日にちに合わせて看護計画の評価日をあてる場合や、カンファレンスの日程に合わせて看護計画の修正日を設ける場合もあります。

深く悩みすぎずチームに頼る

看護計画の立案に慣れていない場合、完璧を求めすぎて時間がかかってしまうことがあります。
関連図を描いたり、細かい点まで考慮したりすることで、思った以上に時間を要することもあるでしょう。

しかし、一人で正解を導き出そうとするよりも、他のスタッフと情報共有をし、アドバイスを求めることが重要です。
チームで協力して計画を立てることで、多角的な視点が得られ、より質の高い看護計画につながります。

また、経験豊富な先輩看護師からのフィードバックは、自身の成長にもつながります。
悩んだときこそ、チームの力を借りることを忘れずに、効率的に看護計画を立案しましょう。

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心不全の看護計画の具体的な例

ここでは、心不全患者さんの看護計画の具体例を紹介します。
この例を参考に、個々の患者さんの状態に合わせてカスタマイズしていくことが大切です。

看護問題 #1 心不全増悪の危険性がある
看護目標 心不全を増悪させることなく退院できる
観察項目(OP) ・自覚症状の有無(Aさんは呼吸困難をともなって緊急入院したため、呼吸状態に注意)
・採血データ、レントゲン検査の確認
・労作時の呼吸状態の変化、SpO2や脈拍数の変動の有無と程度
援助計画(TP) ・病識についての理解度を指導前に毎回確認する
・必要であれば心不全パンフレットなどを用いて解説する
教育計画(EP) ・慢性心不全についてどのようにとらえているかの確認を行う
・辛いときや苦しいときはいつでも相談して良いことを伝える
・禁煙についてどこまで理解しているかの確認

患者さんの個別性を考慮しながら、心不全増悪のリスクを最小限に抑えることを目的に作成されたのが、この看護計画例です。

観察項目では、心不全の主要な症状や検査データを注意深く監視します。
援助計画では、患者さんの生活習慣改善と身体的負担の軽減を図ります。
教育計画では、患者さん自身が疾患管理に積極的に参加できるよう、教育的観点からの支援策を考えましょう。

心不全の看護計画をマスターして適切な看護を提供しよう

心不全の看護計画立案は、患者さんの病態を改善させ、生活の質を向上させるうえで非常に重要です。
適切な看護計画を立てるには、患者さんの背景や現状を十分に把握し、問題点を明確にすることが欠かせません。
NANDA-Iの活用や優先順位の設定、定期的な見直しなど、いくつかのコツを押さえることで、より効果的な看護計画を立案できます。
また、チームでの協力や情報共有を大切にし、患者さんの変化に柔軟に対応することも重要です。

これらの知識とスキルを身につけ、実践することで、心不全患者さんに対してより質の高い看護を提供できるでしょう。
看護計画は患者さんの回復と自己管理能力の向上を支援する重要なツールです。
継続的な学習と経験を重ね、心不全看護のエキスパートをめざしましょう。

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執筆者について

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