これから看護師になる方のなかには、「看護師1年目はつらい時期だ」といったイメージを持っている方もいるかもしれません。
あるいは、看護師として働き始めた方のなかには、初めての業務に戸惑いや混乱を感じている方もいることでしょう。
看護師1年目は、看護師としてこれから働いていくための基本的なスキルを身につける非常に大事な期間です。
今回の記事では、看護師1年目がつらいと感じる理由や乗り越え方、転職のメリット・デメリットを紹介します。
目次
看護師1年目は業務の自立が目標
看護師1年目の目標は、日勤・夜勤ともに業務を一人で行えるようになること、つまり一人前の看護師として自立することです。
新人看護師として働き始めると、業務の自立に向けて教育スケジュールが決められています。
教育スケジュールは各病院の方針によって少しずつ変わっていきますが、ここでは一般的な看護師1年目の主なスケジュールを紹介します。
【看護師1年目のスケジュール】
4月〜5月 | ・入職者オリエンテーションや院内研修開始 先輩看護師のシャドーイング(業務の見学)を行います。 |
6月〜7月 | ・基本的な看護技術の習得時期 他看護師の指導のもと、業務を実施します。 一人で行える業務も少しずつ増えていく時期です。 ・夜勤トレーニングの開始 夜勤業務のシャドーイングが始まります。 |
8月〜9月 | ・受け持ち患者の開始 長期間担当する受け持ち患者を決定します。 担当となった患者さんに対し、積極的に関わり看護を実践します。 |
10月〜11月 | ・日勤業務の自立 先輩看護師のサポートを受けつつも、主体的な業務を実践します。 重症度の高い患者さんや急変対応などのトレーニングを開始します。 |
12月〜1月 | ・夜勤業務の自立 夜勤業務も一人で行うようになります。 |
2月〜3月 | ・1年間の振り返り 看護師2年目に向けた1年間の振り返り研修があります。 ・複雑な業務内容 術後などリスクの高い患者さんや人工呼吸器を装着している患者さんなど、対応が難しい患者さんも受け持つようになります。 |
看護師1年目がつらいと感じる理由
看護師1年目は、初めての業務ばかりであり、右も左もわからない状態です。
「患者さんとの関わりを大切にして、より良い看護を提供したい」と思いながらも、理想と現実のギャップを感じ、「仕事がつらい」と感じてしまうこともあるでしょう。
知識不足を感じる
看護師1年目は、配属された病棟の疾患や薬剤など多くの自己学習が必要です。
知識不足のなか患者さんを受け持ってしまうと、適切な対応方法がわからず困ってしまったり、根拠なく対応してしまったりすることで患者さんに危険がともないます。
病棟によっては、教育内容の一環として課題の提出が求められる場合もあるでしょう。
看護師1年目は普段の業務で精一杯のため、自己学習の時間確保が、体力的・精神的につらいと感じてしまうことがあります。
人間関係に悩まされる
看護師は、多くの人と関わりながら仕事をするため、人間関係に悩まされてしまう人もいます。
病棟の師長さんとの折り合いが悪い、先輩看護師とうまくコミュニケーションが取れないなどの状況に陥ってしまうと、仕事がやりにくいと感じてしまうかもしれません。
人間関係で悩んでいる看護師は一定数おり、そのために退職を決意する人もいます。
職場には、さまざまな価値観や背景を持った人がいるため、それぞれの考えを尊重し、丁寧にコミュニケーションをとっていく必要があるでしょう。
業務が多忙で精神的なプレッシャーを感じる
看護師の仕事は、患者さんの急変や緊急入院などで予定外の業務が加わることが多く、非常に忙しいです。
そのうえ、医師の指示どおりに処置を実施したり、検査の介助に入ったりなど正確に業務を実施することが求められており、精神的なプレッシャーを感じてしまうときもあります。
業務が重なってしまい一人では対応しきれない事態に陥ってしまうこともあるので、業務の優先状況を常に考えつつ、他の看護師の助けをうまく借りられるようになりましょう。
夜勤などの不規則勤務に慣れない
病棟で働いている看護師のシフトは、日勤以外にも準夜や深夜、早出、遅番などさまざまな勤務形態があります。
人によっては、不規則な勤務に体が追いつかず、体力的につらいと感じてしまうこともあるでしょう。
病棟で働き続けるのであれば、以下のような方法を試して、徐々に不規則な勤務形態に体を慣らしていけるようにしましょう。
- 夜勤前でもいつもどおりの生活を送る
- 夜勤中は仮眠をとる
- 日光を浴びる
しかし、体質によってはどうしても夜勤が受け入れられない場合もあるかもしれません。
夜に眠れない、疲れが取れないなどの体調不良を感じた場合は、無理せずに上司に相談しましょう。
看護師1年目の乗り越え方
看護師1年目は「仕事がきつい」と感じることもありますが、どのように乗り越えていけば良いのでしょうか。
看護師1年目の乗り越え方を紹介していきます。
悩みは人に相談する
看護師1年目は、仕事に対する悩みが尽きない時期でもあります。
悩みを抱えている場合は、一人で抱え込まずに人に相談しましょう。
病棟に配属された同期は同じ境遇であることから、悩みを理解して貰いやすく、励まし合うことができます。
また、仲の良い職場の先輩に悩みを相談できれば、より具体的な解決策を示してくれるかもしれません。
職場内で話しにくい悩みであれば、学生時代の友人に話してみるのも良いでしょう。
休息をしっかり取る
看護師1年目は、どうしても仕事が中心の生活になってしまいがちかもしれませんが、仕事のオンオフをはっきりさせて、休息を取れる時間を確保しましょう。
休みの日に自己学習や課題を行うこともあるかもしれません。
しかし、それだけで休みが終わってしまうと、体や心が疲れたまま、仕事をしなければいけなくなり、気付かないうちに疲れが溜まってしまいます。
ご自身のなかで休み時間を確保して、プライベートを充実させリフレッシュできる時間を作りましょう。
わからないことは積極的に質問する
仕事中にわからないことがあるときは、積極的に質問して解決しましょう。
わからないまま仕事をしていると間違ったことを実施してしまい、患者さんに迷惑や危険が及ぶ可能性があります。
看護師1年目であれば、わからないことや知らないことがあって当たり前です。
スキルや知識は徐々についていくものなので、割り切ってわからないことを主張し教えて貰いましょう。
一方で、業務中は先輩看護師も忙しく時間が取れないことも多々あります。
以下のことを意識して、相手への配慮も忘れないようにしましょう。
- わからないことを明確に伝える
- 相談するときは、患者情報とともに自分の考えも伝える
- 相手の業務状況を把握し、話せるタイミングを見計らう
看護師1年目で転職するメリット・デメリット
参照:新卒看護職員の離職率が 10.3%に増加|日本看護協会
日本看護協会によると、2021年度における新卒看護師の離職率は10.3%であり、看護師1年目の転職は決して珍しいわけではありません。
そのため、看護師1年目であっても転職が可能であることを踏まえつつ、以下のような状態に当てはまる場合は、転職を検討しても良いでしょう。
- 「夜眠れない」「食欲がない」など体調不良を感じている
- 病棟に行く際に涙が出てくるなど精神的に不安定である
- 興味がある看護分野が他にある
ここからは、看護師1年目の転職のメリット・デメリットを紹介します。
メリット
看護師1年目で転職するメリットは、以下の2つです。
- 転職先でも新人教育が受けられる
- 自分に合う職場と出会える可能性がある
転職先でも新人教育が受けられる
別の病院での勤務経験があっても、看護師1年目であれば転職先の病院でも新人扱いをしてもらえる可能性が高いです。
現在の習熟度に合わせて新人教育が受けられたり、プリセプター制度(新人教育制度)を導入している病院であれば、教育係となる看護師を付けてもらえるでしょう。
そのため、業務内の不明点を解消しやすい環境に身を置くことができます。
一方で、すべての病院が新人扱いをしてくれるとは限りません。
看護師1年目であれば、今後のスキルの土台となる教育が必要です。
転職先を探す際に、教育制度を事前に把握しておきましょう。
自分に合う職場と出会える可能性がある
転職することによって、ご自身に合う職場を見つけられるかもしれません。
勤務形態は、職場によって2交代制や3交代制などさまざまです。
また、クリニックなどに転職すれば、夜勤もありません。
勤務形態が合わないと感じている方であれば、ご自身の体に合う勤務形態で働ける職場に転職すると良いでしょう。
また、業務の忙しさが合わないと感じているのであれば、病院の機能・役割を把握して転職先を選んでみましょう。
急性期の病院であれば急変対応の機会が多くなり忙しくなりがちですが、慢性期の病院であれば比較的ゆっくりと働くことができます。
今の職場がご自身に合わない理由を明確にして、次の転職先を選ぶようにしましょう。
デメリット
看護師1年目で転職をするデメリットは、以下の2つです。
- 転職先が限られる
- 学び直さないといけないことが多い
転職先が限られる
看護師1年目でも転職することは可能ですが、転職先が限られてしまいます。
看護師1年目は看護師経験が少ないため、即戦力としてみなされないケースが多いです。
即戦力を求めている職場や新人教育を行うことが難しい職場、規模の小さい病院では看護師の経験年数を求めている傾向があり、求人に応募できないことがあります。
看護師として基本的なスキルを上げていくことは、看護師1年目の時期に重要な課題です。
経験者を求めている職場に転職したい場合は、今の病院で数年の看護師経験を積んでからにしましょう。
学び直さないといけないことが多い
転職によって、新しい職場のルールや業務の進め方を一から覚えなくてはいけません。
先述したように看護師1年目は看護師の土台となるスキルを身につけなければならないため、学び直すことが多くなります。
看護師1年目での転職の必要性が高くなければ、看護師として一人前になってから転職したほうが新しい環境で覚えることが少なくなり、転職後の負担が軽くなるでしょう。
看護師1年目を乗り越えて看護師として成長しよう
看護師1年目は、看護師の基本を身につける期間であり、新しく学ぶことが多いため、「体力的にきつい」「仕事がつらい」と感じてしまうかもしれません。
しかし、看護師としてのスキルを高めるほど目の前の患者さんに貢献でき、やりがいを感じられることも多くなります。
ご自身の体調管理を行いつつ、看護師としてスキルアップしていきましょう。